遺伝と環境の複雑な組み合わせが統合失調症に

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幻覚や妄想などの症状で知られる精神疾患「統合失調症」。その原因は未だにわかっていない。

単一の原因は存在しないと考えられ、一般的には環境要因と遺伝要因が組み合わさり、人生における大きなライフイベントなどがきっかけとなって発症するとされている。2017年8月30日にデンマークのコペンハーゲン大学病院の研究者らによって、「遺伝要因による発症リスクは約80%」とする研究結果が発表され、10月になって海外メディアが相次いで報じている。

一卵性双生児と二卵性双生児を比較

統合失調症の発症原因に遺伝と環境がどの程度を占めているのか、という研究はこれまでにも多数行われている。今回の研究を発表したコペンハーゲン大学病院の研究者らは、最新の統計手法とより新しいデータを用いて、正確な数値を推計したいと考えた。

そこで、1870年から現在まで同国で続く双子を対象とした大規模追跡調査「The Danish Twin Registry」から、1969年以降のすべての精神科入院データと1995年以降のすべての精神科外来患者データを収集。一卵性双生児と二卵性双生児の統合失調症発症状況を比較・分析している。

双子は同じ環境で育っているが、一卵性双生児はほぼすべての遺伝子が共通であるのに対し、二卵性は半分。つまり、二卵性よりも一卵性で発症が顕著な場合は遺伝に由来している可能性が高くなるというわけだ。

また双子の一方が統合失調症と診断された場合、その診断結果にもう一方の双子がどの程度影響を受けたのか(診断を聞いて自分も発症するきっかけになっていないか)、発症時期はいつか(両者が近いのか)、発症前後の健康状態はどの程度調査されているか、といった諸条件も細かく収集し、より厳密に遺伝が与えた影響の精査に努めた。

調査の結果、一卵性では双子の一方が統合失調症を発症している場合、もう一方も発症している例は約30%。しかし二卵性では7%にとどまった。ここから統計的に遺伝と環境の影響を算出すると、遺伝は79%、環境は21%との推定値が導き出され、遺伝リスクが高いとの結論を得たという。

この結果を受け、英タブロイド紙「Daily Mail」やオンライン新聞「The Independent」などは10月6日に「統合失調症における遺伝リスクは従来考えられていたよりも大きい」などとセンセーショナルに伝えている。「Daily Mail」などは「生まれる前からリスクは決まっていた」などと、かなり危機感を煽るような表現をしていた。

遺伝と環境の影響は単純ではない

しかし、本当のそうなのだろうか。J-CASTヘルスケアがある心療内科医に取材をしたところ、「驚くほどの高値ではなく、従来よりもやや上がったなという印象」とし、次のように話す。

「従来から遺伝リスクは40〜60%台とされ、遺伝3分の2、環境3分の1というのが有力とされています。こうした推計値は計算方法によって変わるので、79%という数値が飛びぬけて高くなったとは感じません」

またこの医師によると、論文では双子は完全に同じ環境下にあると仮定している、双子の治療状況や服薬している薬品の種類は不明など、推計を明快にするために条件が簡略化されている点も見られ、今回の数値が決定的になるとは思えないと指摘する。

「例えば統合失調症の患者の子どもは遺伝的にも環境的にも強い影響を受けていることになりますが、子どもが発症する確率は約10%と言われます。もし家族に既往歴があるなら、遺伝を心配するより違法薬物やアルコールの過剰摂取を避けるほうが現実的な対応だと思います」