えひめ国体、高校野球硬式。決勝の大阪桐蔭戦で完投した広陵の山本雅也投手。(写真:共同通信社)

えひめ国体の高校野球(硬式)は10月6日から9日まで4日間で11試合が行われる予定だった。しかし、初日が雨天順延となったために、さらにハードな試合日程になってしまった。1回戦に登場するチームが優勝するためには3日間で4試合も戦わなければならない。3日目(9日)は準決勝・決勝の3試合が組まれた。

夏の甲子園のあとは追い込んだ練習をしていない3年生に過度な連投は課せられない。出場した12校は必然的に、複数の投手を少ないイニングで交代して起用する「プロ野球のオールスター方式」の継投になった。

1人のエース投手の連投は負担ではないのか

春夏の甲子園では、毎年のように投手の連投が話題になる。負担軽減のために投球数の制限を求める声もある。国体はコールドゲーム(5回10点差、7回7点差)が採用されているし、甲子園での戦いとは緊迫感も違う。だが、過密日程における投手起用を考えるうえではいいサンプルになるだろう。

まずは、大阪桐蔭から。1回戦で済美(愛媛)をサヨナラで下した大阪桐蔭(大阪)の西谷浩一監督は試合後にこう語った。「先発の徳山壮磨は半分くらいまでと決めていました。その後はみんなでつないでいこうと。このあとの試合もそういう継投になると思います」。

7日に行われた済美戦では、徳山が5回(82球)、香川麗爾が2回、吉峰丈太郎が2回(23球)を投げた。8日の2回戦・花咲徳栄(埼玉)戦では、先発した2年生の柿木蓮が6回(102球)を投げたあと、吉峰がリリーフに立った3回(41球)を投げた。

3日目の準決勝・津田学園(三重)にはそれまで野手として出場していた2年生の根尾昴が先発登板し、83球で完封(5回コールド勝ち)。そして、広陵との決勝戦にはエースの徳山が中1日で先発マウンドに上がった(6回、116球)。過密日程でも大阪桐蔭が無理なく投手を配置できるのは、豊富な投手陣をそろえているからだ。

広陵を支えるのは2人の実力派左腕

優勝した広陵もまた理想的だった。エースの平元銀次郎は8日の初戦・天理(奈良)戦でリリーフ登板(1回1/3、15球)。9日の準決勝・東海大菅生(東京)で8回(120球)を投げたが、午後から行われた決勝戦では登板することがなかった。エース同様に頼れる投手・山本雅也がいるからだ。天理戦で先発して4回(60球)を投げた山本は東海大菅生戦の登板はなし。決勝戦で再びマウンドに上がり、強打の大阪桐蔭を相手に完投勝ちをおさめた(9回、133球)。これも、力量のある投手が2人もいるからできる芸当だ。

広陵の中井哲之監督は準決勝のあとにこう語っていた。「国体はどうしても日程がきついので、ピッチャーは球数を減らさないと優勝できません。午前中の準決勝で先発した平元は120球も投げましたが、決勝戦でいい場面があれば投げさせます」。

実際には、平元を温存したまま、初めての国体制覇を成し遂げた。大阪桐蔭や広陵のように、信頼できる投手を複数そろえられるチームがどれだけあるのか? 投手に負担をかけずに勝利を積み重ねるのは至難の業だ。 

投手の疲労や負担の程度は、外からではなかなかわからない。体力と気力の両面をしっかり見ながら、ベンチにいる監督が判断することになる。だからこそ、指導者の責任は重い。春のセンバツで3試合475球を投げた福岡大大濠(福岡)のエース・三浦銀二は、監督の判断で準々決勝の登板を回避した。敗戦後に三浦は「投げるつもりで準備していた。投げないで負けるほうが悔しい。どこも痛くないし、投げられる状態だった。本人が投げられると言えば投げてもいいと思う」と語った。

この国体で3日連続の3連投をした投手がいる。東海大菅生(東京)の背番号1を背負う松本健吾だ。7日に行われた三本松(香川)戦に先発(6回、63球)、翌日の盛岡大付(岩手)戦でリリーフ登板(2回、25球)、3日目の準決勝・広陵戦でも2回(42球)を投げている。準決勝で広陵に敗れたあと、松本はこう言った。「中学時代に、3日連続で投げたことはありますが高校では初めてでした。トレーニングや投げ込みが不足しているので厳しいものがありましたが、夏までの自分なら大丈夫だったと思います」。

エースの松本を擁する東海大菅生は、7月の西東京大会決勝で清宮幸太郎のいる早稲田実業を下して甲子園に出場。準決勝で花咲徳栄(埼玉)に敗れたものの、見事にベスト4入り。松本は2回戦の高岡商業(富山)戦に先発して9回完投(133球)、3回戦のマウンドは2年生の戸田懐生に任せ、準々決勝・三本松(香川)戦で8回(89球)、準決勝・花咲徳栄戦で6回(104球)を投げた。

「東海大菅生にはほかにもいいピッチャーがいるので、試合で投げすぎるということはありませんでした。もし、球数制限によって登板の機会が与えられなかったとしたら、つらいでしょうね。ピッチャーならば、自分で試合を決めたい。大事な場面で投げたいと思うもの。背番号1を背負うエースならばなおさらその気持ちは強いはずです」(松本)

もう「エースと心中」という時代ではない。複数の投手がいなければ勝ち上がれないことは甲子園で好成績を残したチームが証明している。分業制がさらに進めば、戦力の豊富な私立強豪校がますます優位になるだろう。そのときに、投手のプライドやエースの矜持はどうなるのか? まだまだ答えは見つかりそうにない。
                          (文中敬称略)