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自律走行にまつわる業界が急成長を続けるなか、激しいパートナーの争奪戦が起きている。Uberとダイムラー、Lyftとゼネラルモーターズ(GM)、マイクロソフトとボルボなど、大手企業が過去数カ月にわたり提携ゲームを繰り広げてきた。

そのなかでも、インテルの最高経営責任者(CEO)であるブライアン・クルザニッチが明らかにした、グーグルの自律走行車開発プロジェクトであるWaymoとの協力は大きなニュースだった。

完全な自律走行が可能な車の開発レースで先頭に立つ者がいるとすれば、それはWaymoだ。アルファベット傘下の同社はカリフォルニア州マウンテンヴューに本拠を置き、2010年以来、300万マイル(約483万km)以上の公道試験を行ってきた。

さらに、専用のシミュレーションプログラムを使った1日800万マイル(約1287万km)の“試験走行”もこなしている(プロジェクト立ち上げからわずか7年で10億ドル超を費やせば、このようなことが可能になるわけだ)。時期は決まっていないが、将来的な量産に備え、4月からはアリゾナ州フェニックスで実際に人を乗せた実証実験も行っている。

足りない技術は提携で補う

超一流のソフトウェアを使えば、自律走行車の開発は可能かもしれない。だが、利益の出る本格的な自動運転サーヴィス事業の実現には、それだけでは足りない。業界他社と同様に、Waymoも自社の弱点を補ってくれるパートナーを探していた。

Waymoの問題は、大量のクルマを維持管理する方法を知らない(もしくは知ろうともしない)ことだ。このため、フェニックスではレンタカー大手のエイビスレンタカー・システムと契約し、試乗車の給油や清掃を任せた。

さらにサービス運営に必要な各種データもなかったため、Lyftの力を借りる契約を結んだ。Waymoは今回の発表に際し、インテルとは2009年から協力関係にあったことを明らかにしている。

インテルとの関係が密であればあるほど、より大きなギャップを埋めることができ、今回の契約のダイナミズムが増す。クルザニッチによると、昨年12月に公開されたクライスラーのミニヴァン「パシフィカ」をベースにしたWaymoの自律走行車は、車両の周辺環境を理解してリアルタイムで安全な走行判断を下すためにインテルの技術を用いている。

トヨタやボルボ、テスラに製品を供給する競合の半導体メーカーであるNVIDIAを除けば、インテルはWaymoが自らの技術を量産ベースに乗せるために必要とする、高速で「考える」ことのできるチップを大量生産する唯一の企業だ。自律走行車が大量のデータを瞬時に処理できるようにするうえで、こうした最先端の半導体は非常に重要である。

Waymoがインテルの力を借りた理由

標準的な自律走行車はレーダーやカメラなど12個以上のセンサーをもつだけでなく、異常なまでに詳細な地図を使う。また、サイレンなどの音を拾うためのマイクも搭載している。安全に走行するには、これらすべてのデータを統合して理解し(この過程はセンサーフュージョンと呼ばれる)、それに応じて行動する必要がある。しかも、100万分の1秒という速さでだ。

Waymoは部品を内部で開発する傾向がある(Uberに盗用されたと主張するレーザーセンサー技術も自社開発のものだ)。グーグルは昨年、自律走行車向けの半導体チップを開発したことを明らかにしたが、Waymoは予想を裏切り、少なくとも現段階ではインテルの手を借りることを選んだ。

WaymoのCEOであるジョン・クラフチックは声明で、「当社の自律走行車がリアルタイムで安全な判断を下すには、最高の性能をもつチップが必要です」と述べている。「インテルのテクノロジーはシステム内部の高度な情報処理を支えると同時に、量産に対応できるという要望も満たしています」

携帯電話が普及し、クアルコムなど他社がタブレット端末やスマートフォン向けの省電力チップ市場で優位に立ったため、業界でのインテルの影響力は弱まっている。しかし5月には、イスラエルのMobileyeを153億ドルで買収すると発表した。Mobileyeは自動運転技術に取り組むメーカーの大半に、自動ブレーキに必要なセンサー技術を供給している。

そして今回、Waymoとの提携が明らかになった。インテルはゲームに戻ってきただけでなく、ダンスフロアの真ん中で皆の注目を集めて踊っているようなものだ。

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