がっちりと握手を交わす小林(11番)と、中村(写真右)がキャプテン像を語った。写真:徳原隆元

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[J1リーグ29節]川崎3-2仙台/10月14日/等々力
 
 仙台に2点のリードを許して迎えた82分、右サイドでボールを受けたエウシーニョがカットインから左足を振り抜き、強烈なシュートを決める。すると、家長昭博の退場もあり、等々力に響き渡っていた審判に対するブーイングが、一気に歓声に変わった。
 
「エウソンのゴールで等々力が蘇った時、(次に)決めるのは自分だと強く思っていた」
 
 その時の感情をこう語った小林悠が大仕事をやってのける。84分、右から中央に切り込み、低い弾道のミドルで同点とすると、87分には左サイドでボールを受け、ペナルティエリアの外から逆転弾を突き刺した。
 
「(ゴールの場面は)迷わずに打てた。3点目は相手に当たったが、打つことに意味がある。でも、正直しんどすぎてボールを運べなかったので、打っちゃえ!って(笑)。逆に力が抜けました。相手に当たりましたけど、入ればなんでもいいです」
 
 少しおどけながら2ゴールを振り返る小林。たしかに、本人が言うように思い切ってシュートを打ったことが得点につながった。これでキャリアハイとなる17点目を記録したが、報道陣から「キャプテンに就任した影響はあるか」と聞かれると、ハッキリと鋭く切り返した。
 
「それは最近、気にしていない。もう、キャプテンだからというのは気にせずに、今はFWだからという考えでやれている。FWとして点を取るから、チームを勝たせるキャプテンという発想。前までキャプテンが先にきていたことが、上手くいかない理由でもあった。そこを整理できているので結果につながっている」
 
 あくまでストライカーとして点を取ることが第一。背番号11は自らの役割をそう説くが、キャプテン就任直後のシーズン序盤は葛藤もあったようだ。
 
「シーズン最初の結果が出ない時は、やっぱりキャプテンだからもっと守備しなきゃとか、カバーリングに気を使わなきゃとか、ばっかり考えていた。なかなか自分のゴール数も伸ばせず、チームも勝てなかった。そこをFWとして割り切れた時から、点が取れるようになった」
 
 小林は考え方を変えたことで結果に繋がっていると明かす。その変化が起きたのは、あるインタビューがキッカケだったとも言葉を続けた。
 
「FWでキャプテンをやるって難しい。(FWとしては)パスが来なければ『出せよ!』とキレなければいけない時もある。(キャプテンとしては)チームの勝利、チームのためにやることを一番に考えている。で、ある取材の時にキャプテン像を聞かれて、その難しさを話したら、インタビュアーが『もっと“自分が自分が”っていうキャプテンがいても良いんじゃない』って言われて、そうだなって。そこから一気に考えを変えたことで、結果に繋がっている」
 小林が思い描くキャプテン像が固まりつつある一方で、その姿を昨季までの主将である中村憲剛は次のように見ているようだ。
 
「今日の悠はボールも収まらないし、大丈夫かなって感じだった。でも、点を取ってくれると、それでいいんだなって改めて思う。

 逆に悠のなかでは、これで自分のキャプテン像…。てか、あいつね、自分の中でキャプテンと半分思っていないんじゃないかな。それがまた、良いと思うんですよね。

 FWとしてゴール取って(チームを)引っ張るという方向に今は針が振れている。それで、チームのことを考え出すと、あいつはキャパオーバーになっちゃう。

 そういうのは、俺とか(谷口)彰悟とか、(チョン・)ソンリョンとかがやればいい。悠はとにかく点を取って進んでいく。それにみんながついていく。そういう良い流れができている。また、あいつも今日で成長すると思う。FWは点を取ってなんぼだから」