麻生太郎副総理兼財務大臣は9月25日に都内の会合で、口元を歪める独特のポーズで「税金が下った分を内部留保とは、なめちゃいかん」と怒りをぶちまけた。

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 アベノミクス履行の片腕として「大規模な金融緩和」などで為替を円安に導き、「輸出企業を中心に企業業績を改善」し、「企業収益増で雇用拡大や賃金が上昇」の結果として「消費増・景気上昇/脱デフレ」の経済好循環を生み出す。そんなシナリオを牽引してきた準当事者として、思うように事が進まない積った苛立ちがまたも爆発したというわけだ。

 財務省の統計によると5年近い安倍政権下で企業の内部留保は政権立ち上がり当時に比べ毎年20兆円以上積み上がり、2016年度末には約406兆円に達した。だが「そのうち賃上げに回ったのは4兆円程度。内部留保の増加分の4%水準に過ぎない」(麻生氏)。

 厚生労働省の調べでも、16年の賞与・残業代を除く月額賃金は正社員で「前年比0.2%増」。「上昇分は働き盛りの4人家族の場合、ほとんど右から左に教育費として消えて行ってしまうのが現状」と指摘される。パートをはじめ非正社員の場合は前年比3.3%増と正社員との格差は縮小した(10万円強の差に)が、生活防衛意識が和らぐ様相は見られない。

 賃金上昇分は「教育費に消える」ならと、安倍政権は総選挙の公約として「人づくり革命」の名のもと「消費増税分のうち2兆円を保育・教育費無償化に当てる」とした。しかし巷間既にこんな試算も公にされている。「幼児教育無償化が実現された場合、家計という視点から捉えると年間4万円の負担増もありうる」(ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏)。

 どうも麻生氏は、ことの本質を見失っている感が強い。要は国の借金(6月末で1,068兆円)に対する危惧の浅さだ。消費税増額分を幼児教育費無償化負担に振り向けると、借金返済額は従来の公約4兆円から半分以下に減ってしまう。プライマリーバランス目標の先送りだ。現在の借金を現状水準の税収を前提に考えると「今後借金は1円たりともしない」「政策費はゼロに抑える」としても、完済には15年を要する。その負担は誰が背負うのか。時事通信の10月6日付けが財務省幹部の発言として伝えるまでもなく「年金暮らしを数十年送る従来型の人生設計は非現実的になる」。少子化に加え若者層の「消費離れ」が進み、残っているのは借金だけとなった時に麻生氏はどんな言葉を吐くのだろうか。