岡山駅の近くにある奉還町商店街は、明治維新で職を失った武士が、政府から受けた資金(奉還金)で商売を始めたことから、この名がついた。

 商店街にある「かもや呉服店」の店先のワゴンには、呉服店とはちょっぴりミスマッチな、洋風のイメージを漂わせる長毛のねこが座っている。店長・高谷一偉さんと母の宏子さんが飼う「ふく」だ。ゴージャスな外見だが、もとは商店街を徘徊する野良ねこだった。

「最初に見かけたのは7年近く前。長毛で洋風だから、最初は飼われていたのが迷子になったのかな、と警察に相談しました。しかし結局、飼い主は見つからず、うちで面倒を見るようになったんです。

 ふくろうみたいな見た目だったから『ふく』って名づけたんですよ。正確な品種はわからないのですが、『メインクーンではないか』とよくいわれます」(一偉さん)

 店には以前「にゃんこ」という黒ねこがいて、看板ねことして人気だった。

「黒い看板ねこなんて珍しかったからか、『厄除けに、財布に写真を入れたい』という人もいたほどです」(宏子さん)

 にゃんこは、ふくがやってくる数年前から病気になり、看板ねこを引退して隠居。ふくが来て2年ほどたったころ、天に召された。

「ふくは最初、用心深かったのですが、慣れるとだんだん甘えてくるようになりました。あるとき『あなたもにゃんこちゃんみたいに招きねこしてくれる?』と冗談まじりに話しかけたら、数日後、にゃんこがいた店先のワゴンに座り始めたんです。びっくりでした」(宏子さん)

 こうして、ふくは2代目を襲名し、店先に座り続けている。取材中も、女の子を連れた母親がふくに気づき、頭をなでなで。そして一偉さんに「そういえば浴衣を探してるんですけど、この子に合うのがあるかしら?」。立派に2代目の役割を果たしているようだ。

(週刊FLASH 2017年7月18日号)