筆者はファイナンシャルプランナー(FP)としてさまざまな方の相談に乗っていますが、その中には「芸能関係」の方も含まれます。芸能人というと、周りからは羨望の眼差しで見られ、自分の好きなことで生計を立てられる一方、常に「不安定」というイメージが付きまといます。実際にその通りで、歌手、俳優、タレントといずれのジャンルの人でも、一般的な会社員には想像できない「収入の波」があります。

歌手と俳優はビジネスモデルが違う? 

 しかし、同じ不安定でも「誰からお金をもらっているか」という点は異なります。歌手は基本的にお客さん、つまり、自分のファンである「個人」です。コンサートへの来場者やアルバムの購入者が収入の基礎となります。個人から直接収入を得ていることが強みで、固定のファンが必ずいるため、世間的には「終わった」と言われても、過去のヒット曲の印税やコンサートによる収入は意外と底堅いのです。

 一方で、俳優も、舞台中心の方には同様のことが言えますが、テレビや映画中心の方や、テレビだけに活動が限定されるタレントの方は、その収入のほとんどがテレビ局からのギャラと企業のイベント、CM出演料です。テレビ局の裏側にもスポンサー企業がいるため、結局はそれらの企業群が生殺与奪権を握ることになります。企業は一般消費者を意識して起用を決めるため、収入は人気だけでなく「イメージ」という、正体のない幽霊に大きく左右されるのです。

 身も蓋もない言い方ですが、要は「個人から広く薄く集金」か「企業から大きく集金」かの違いで、同じ芸能人でもビジネスモデルが異なるのです。そのため、何かトラブルがあっても、「個人崇拝」の上に立つ歌手は強く、イメージを気にする「企業」の上に立つ俳優やタレントは弱いということになります。以前、タレントのベッキーさんとゲスの極み乙女。の川谷絵音さんの不倫発覚時にも、企業からの収入に依存するベッキーさんの方がダメージが大きかったことからもそれが見て取れます。

 また、個人のファンを裏切っても違約金は発生しませんが、企業には契約条件に高額の違約金が盛り込まれています。「太客」である企業は甘くないということでしょう。

武井咲さんの“賢明な”判断

 ファイナンシャルプランニングの観点からすると、前者の方が後者よりも強いのですが、これは改めて指摘されるまでもなく、本人が一番よく分かっています。さらに、そうした金銭的な悩みとは別に、常に若い才能が出てくる芸能界においては「いつまで活躍できるのか」という不安が付きまとい、実際に落ちていく人も多いため、若い頃から先輩たちを見ていれば、どのような道を歩むべきかがおのずと分かるのかもしれません。

 先日、TAKAHIROさんとの電撃結婚&妊娠で世間を沸かせた武井咲さんは、人気絶頂の中、23歳という若さゆえに、結婚と妊娠は「もったいない」と思われがちかもしれませんが、FP的な目線からすると、意外に賢明な気もします。もちろん、相手の男性を愛しており、その子を宿したから結婚するわけですが、結婚も契約の一種。女性は現実的ですから、好きなら誰でもよいというわけではありません。

 10代から芸能界で活躍する武井さんが、自分と異なるビジネスモデルの「歌手」を生涯の伴侶に選んだことには、しっかりとした“計算”が働いているのではないか。「黒革の手帖」で見せた、20代前半とは思えない妖艶な演技から勝手にそう思ってしまいますが、これも実態のないただの「イメージ」なのです。

(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)