これまで、LINEのテクニックを3ヶ月にわたり伝授してきた。

これはいわば、マンツーデートに漕ぎつけるための駆け引き。

この難関を突破したら、次はいよいよデートである。デートに臨む諸君に捧ぐ『デートの答え合わせ』で、男女の駆け引きを学ぼう。




「健太さん、ですよね。お噂はかねがね伺っておりました!」

彼女が入ってくるなり、会議室にパッと花が咲いたようだった。まるで彼女自身がスポットライトかのように、一気に周囲を明るくする。

小柄ながらもパワフルで、気遣いができる女性。それが美佳だった。

僕はメーカーの広報担当で、取引先である広告代理店のアシスタントとして、美佳はやって来た。

かねてから“可愛い子が入った”という噂は耳にしていたが、噂に違わず、美佳は可愛いくノリもいい。仕事抜きにして、単純に女性として魅力的だと思った。

美佳の上司、つまり僕にとってメインの仕事相手とは何度か飲みに行ったことがあったものの、まだ美佳を誘えずにいた。

しかし、そろそろデートに誘いたい。

仕事上、LINEの交換を皆の前でする訳にもいかず、誘うタイミングを失っていたが、会議が終わった後、運良く二人で話す機会があり、そっと美佳に聞いてみた。

「今度、もしよければ食事でも行きませんか?」

一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐにはにかんだ笑顔を向けてきた。

「もちろん、喜んで。」

2人きりで食事に誘い、OKを貰う。これは嫌われてはいないという証だろう。

仕事仲間から大きく一歩前進した気がして、少し浮き足立った。

しかし、やはりデートというのは難しい。食事の後、僕は美佳の行動に悩むことになる。


デートの誘いに乗ってきた。これって脈あり?


Q1:気合の入った“初デート”。1軒目で、どこか悪いところがあった?


勝負の初デートは、神宮前から表参道の骨董通りにリニューアルオープンしたばかりの『トラットリア ブーカ ジュンタ』にした。

神宮前にあった当時から、ここのオーナーシェフであるジュンタさんが作る肉料理と、それに合うパスタが大好きでよく通っていた店である。




しかしリニューアルしてからまだ行けておらず、せっかくなので美佳とのデートにこの店を選んだ。

デートの曜日は、木曜日。

土日でも良かったが、美佳が平日の仕事終わりの方がいいということで、木曜になったのだ。

仕事を早めに切り上げ、意気揚々と店に向かう足取りは軽い。先に着き、馴染みの店員と話していると遅れて美佳がやって来た。

羽織っていたアウターを脱ぐと、タートルネックのノースリーブ。綺麗な二の腕が見えて、凝視しないよう少し俯いてしまった。

「ここに移転したんですね〜、ご飯も楽しみです♪」

喜ぶ美佳の顔を見ながら、思わずこちらも笑顔になる。

社外で美佳と会うのは新鮮だった。普段は話さないプライベートな話をしていくうちに、意外にも出身地が近いことが分かり、盛り上がった。

「美佳ちゃんと、小学校超近いかも!」
「どこかですれ違っていたかもですね〜!」

そんなたわいもない話で盛り上がれることが嬉しくて、気がつけばワインは既に2人で1本空けていた。

「美佳ちゃん、見た目と違ってお酒強いんだね。」

意外だった。華奢な美佳は、勝手にお酒が弱いと思っていたから。しかし思いの外たくさん飲む美佳を見て、その意外性に更に惹かれていく。

もう1本頼もうかどうか迷ったタイミングで、ちょうど知人が店にやって来たので、僕は少し自慢げに美佳を紹介した。

「僕のデート相手、美佳ちゃんです。」

少し恥ずかしそうにうつむきながら知人と話す美佳を、僕は満足気に見つめていた。

品があって愛嬌もある美佳は、どこに連れて行ってもきっと人気者だろう。

「もう1軒、行く?」
「健太さんが、行くならば、もちろんです♡」

今のところ、全てが完璧だ。酒も料理も会話も。

二人の距離も近くなってきた。この良い流れのまま、ごくごく自然に、2軒目へと移動した。


何度デートしても距離が詰められない女。その理由とは...?


Q2:2人きりの食事に来てくれる。これは好意があると捉えて良い?


2軒目は、行きつけの麻布十番にあるバーにした。1軒目で終わらず2軒目も一緒に来てくれたし、期待値は上がる。

もちろん、気遣いは忘れないよう事前に確認した。

「平日なのに、大丈夫?無理しなくてもいいからね。」

明日は仕事があるし、無理して付き合わすのは申し訳ないと思ったのだ。しかし美佳は嫌な顔一つせず、「飲みましょう!」と言ってくれた。

「美佳ちゃんの会社の担当になれてよかったなあー。」

本音だった。このプロジェクトがなければ、美佳と出会っていない。この幸運に、感謝した。

相変わらずニコニコと微笑む美佳と、2軒目でも盛り上がり、気がつけば時計の針は24時を指していた。

「ごめん!こんな遅い時間まで。送って行くね。」

ここでも、紳士的な気遣いを見せなければ。

終電はギリギリある時間だが、夜道は危険である。タクシーで送るのがデートのマナーというものだろう。

僕は心を鬼にして、もう少し一緒にいたい気持ちを抑え、家の近くまで美佳を送り届けてから帰ることにした。

「今日はとっても楽しかったです。」

タクシーを降りようとした瞬間、意を決して美佳を呼び止めた。

「次は、いつ会えるかな?」

すると美佳は太陽のような笑顔で、こう言ってくれた。

「いつでも!またご飯行きましょうね」

そして美佳はタクシーを降り、ぺこりと頭を下げるとそのままマンションのエントランスへと消えていった。

完璧な一夜に、僕はタクシーの中から流れる街並みを見ながら酔いしれた。




しかしその後、何度2人で食事に行っても全く進展しない事態に陥る。

“またご飯行きましょう”の言葉通り、デートに誘えば大概来てくれるし、盛り上がる。

気合を入れて選んでいる、とっておきの店のチョイスも間違っていないはず。

しかし、肝心な話をしようとするとうまく避けられてしまうのだ。

-こんなにデートは盛り上がっているのに、なぜ次に進めないんだ?

向こうも気がないと、何度も2人で食事になんて行かないはず。女性は嫌だったら、断るはずだし、それか誰か友達も誘ったりしてくる。

美佳の場合、たまに同僚を連れてくる以外、その兆候は見当たらない。

そもそも、最初から間違っていたのか?それとも、デート中に何か粗相しているのか??

次に進めない理由、そして次への進め方が分からず、一人で毎回悶々とした気分を抱えている。

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男女で食い違う、“デート”の意味とは!?:デートの答えあわせ【A】

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Vol.1:2軒目のデート開始30分。彼女が「明日朝が早い」と突然帰宅したのは、ナゼ?