世界最大の書籍見本市「フランクフルト・ブックフェア」の会場で、児童書を手に取る来場者(2017年10月11日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】トランスジェンダーのテディベアから恐れを知らない海賊少女まで、児童書作家は今、ジェンダーに関する新たな規範への取り組みを進めている。「少年」や「少女」であることの意味についての議論が高まりをみせているのだ。

 ドイツのフランクフルト(Frankfurt)で年次開催されている世界最大の書籍見本市「フランクフルト・ブックフェア(Frankfurt book fair)」では今年、ステレオタイプに疑問を投げかけ、世界的に議論されているトランスセクシャリティーや性差流動性などについての若年層向けの書籍が並んだ。

 スイス生まれの文学専門家で作家のニコラ・バルドラ(Nicola Bardola)氏は、トランスジェンダーを主人公に据える作品は、とりわけ児童書で根強く残っている「タブー」のひとつを打ち破るものだと説明する。「この傾向を神経質に見つめる人もいます。こういった種類の本は今なお一部の批評家を困らせているのです」

 最近、最も注目を集めた児童書のひとつに「Introducing Tilly」と題された絵本がある。主人公のテディベア、トーマス(Thomas)が「自分はずっと女の子テディで、男の子のテディではないって分かっていた」と友達に語りかける優しいトーンでストーリーが展開する作品で、対象年齢は4歳以上に設定された。トランスジェンダーの親を持つオーストラリア人作家ジェシカ・ウォルトン(Jessica Walton)氏が手掛けた。

 これよりやや年長の読者には、米作家アレックス・ジーノ(Alex Gino)氏の作品「George(ジョージ)」がある。トランスジェンダーの10歳の主人公の少年が、学校の演劇で女の子の役を演じたいと強く決心する物語だ。元気なヒロインが温かく描かれ、高く評価されたこの作品だが、一部では論争の的にもなった。

■米カンザス州のある学区では購入を見送り

 米カンザス(Kansas)州のある学区では先月、「George」が若年層の読者には不適切だとして、区内の学校用には購入しないことを決定した。この決定を受けて、性的マイノリティーを自称するジーノ氏は、すぐさまツイッター(Twitter)で同学区内にある全学校の図書室にこの本を配布するための募金運動を開始。すると開始30分で必要な資金が集まった。

 ジーノ氏はAFPの取材に「トランスジェンダーの人を描いた物語を子どもたちに与えることは、トランスジェンダーの文化を受け入れるための鍵となる。思いやりを持つための適切な年齢などない」と語った。

 先駆的な役割を果たすこうした物語が提示する複雑なテーマは、これまで常に批評家らにとっての心配事となってきたとバルドラ氏は話す。果たしてそれが若年の読者に「適切か」「危険ではないのか」との懸念だ。

 バルドラ氏はこの問題を取り巻く今日の状況について、1980年代に同性愛の主人公が青少年向けの作品に登場し始めた頃の状況と重なると指摘する。そして「こうした本は文学的なクオリティーにおいて判断されるべきで、子どもたち自身に読むどうかを決める機会を与えるのがいい」と付け加えた。

 しかしドイツのある文学批評家は、このアプローチに懐疑的だ。「間違った体で生きることについて、どう感じるかを語りたいのだとしたら、それは幼い読者に多大な内省を要求することになる」とAFPの取材に語った。

 伝統的な男女の役割を覆す物語はずっと以前からあった。バルドラ氏によると、そうした作品はその時代精神により数年ごとにピークを迎えるが、「今はたくさんの良い本がある時」なのだという。
【翻訳編集】AFPBB News