嫉妬などのネガティブな感情や不純な動機も、視点を変えれば試験勉強の推進力になりえます(写真:miya227 / PIXTA)

学生時代だけでなく大人になっても勉強は続く。ただ、学生時代と違い、家庭や仕事を抱え多忙な社会人にとって、資格や英語などの勉強は大きな壁となって立ちはだかる。この連載では「2割の努力で8割の成果」を上げてきた鬼頭政人・資格スクエア代表が、悩めるビジネスパーソンからの勉強に関する相談に鋭く切り込み実践的なアドバイスをしていく。著者への勉強相談はこちらのフォームから!

【勉強相談】
通訳案内士試験を受験する予定です。英語力は、英検準2級(2013年取得)、TOEIC440(2015年取得)、TOEFL ITP493(2015年取得)程度です。通訳案内士になるためにはTOEICのスコアでいえば840以上相当、 センター試験の地・歴・現代社会で相応の点数を取るのと同程度の知識が求められます。今後、 どのように勉強していくのが最適でしょうか?
また、私がなぜ今まで、このスコアしか出せなかったのかを分析いたしました。私はたいへん神経質なのです。日常であったことを深く考えすぎてしまい、 勉強に支障が出ます。劣等感や負のエネルギーが異常に強いのです。そして集中力が続きません。通訳案内士になりたいというのには、 さまざまな理由があります。
1つ目は、 シンプルに、 仕事内容や働き方に魅力を感じたからです。
2つ目は、 職業により社会的な評価に差が出るというのを痛感したからです。通訳案内士というのが地位の高い職業なのかということはさておき、 学問を積まなければできない仕事だというところに魅力を感じます。
3つ目は最近兄妹が医学部に合格して、 自分ももう一度勉強したくなったから。 幼い頃、医師になりたかったということもあり、 この思いを昇華させたいというような意味もあります。
最後に、 とても個人的なことなのですが、 以前とても憧れていた人が弁護士だったから。 嫉妬心も入り交ざっております。不純といえば不純な動機からこの資格取得を目指しているのですが、 迷える子羊の私に厳しくご指南ください。
(30代、男性、公務員)

「社会的地位」に「嫉妬心」。あなたの動機は見事に不純なものばかり。ご質問には、「不純といえば不純」という控えめな表現を使われていますが、とてもとても不純ですよ。それだけでなく、文面からも、なかなかにネガティブな性格が伝わってくるような気がします(笑)。

難関試験に挑むのに「不純な動機」がプラスになる

でも、実は難関試験になるほど、不純な動機、負の動機のほうがプラスに働きます。

「お金が欲しい」「異性にモテたい」「相手を見返してやりたい」――。信じがたいかもしれませんが、こうした欲望がすばらしいモチベーションへとつながるのです。

たとえば通訳案内士であれば「日本と世界の懸け橋になりたい」という目標は、聞こえこそ素晴らしいですが、抽象的で地に足がついていないので、現実にはモチベーションが続きにくいものです。

難関試験になればなるほど、膨大な勉強時間が必要です。そんなときに必要なのは、人間らしく生々しい「ゲスな欲望」なのです。どんなに頭がよくても、勉強が続かなければ合格は不可能。そんな観点から見ると、あなたは立派に不純な動機をお持ちです。試験への第一関門は突破! よかったですね。

迷える子羊のあなたを少々褒めすぎてしまったような気もしますが、ここからが肝心です。あなたの問題点は、その自分の負の部分を言い訳にしているところにあります。

「神経質」「深く考えすぎてしまう」――。普通の人は勉強ができないときに、こんなことを言い訳にはしません。普通は自分に原因を見いだすのではなく、「仕事が忙しい」「学校が忙しい」など、自分の外部から言い訳を探します。

自分の性格を言い訳にしていてはダメ

その点あなたは、自分自身の性格を理由にしています。あなたが実直な考えの持ち主のように思えてきますが、実際には自分自身の性格に甘えているだけです。

結局、自分はこんな性格だから仕方ない、と自分の性格を理由にあきらめるクセがついてしまっているのです。神経質であればケアレスミスも減りますし、深く考えることで理解が進みますので試験勉強にとっては非常に有益です。なのに、逆にそういった性格を盾に、「やらない」ことを正当化しているだけなのです。

ご相談の文面からすると、一度は医者も弁護士も志したが、あきらめた、という経緯があったのかもしれません。でも、あなたのそんな甘ちゃんな考えを続けていては、医者にも弁護士にも、そして通訳案内士にもなれないでしょう。

ネガティブな性格やコンプレックスは、「負けたくない」というシンプルな気持ちに変えるほうがよっぽど試験勉強には有利です。

おそらく、あなたは自分自身の性格を理由に、他人への競争心を包み隠しているはずです。実際に、兄妹の医学部合格により競争心や嫉妬心はあおられているはず。それなのに、「昇華」という美しい言葉で文面を飾っています。試験勉強にきれい事は要りません。あなたは今、「競争心」という感情を殺してしまっている、とてももったいない状態でもあります。

では自分を再度認識した後、実際に勉強をどのように進めていけばいいのでしょうか。今のTOEICスコアを見るかぎり、あなたに欠けているのは単語力です。

単語力がないと、スコアは低迷してしまいます。反対に単語力がつけば、リスニングもリーディングも上がりますので800点台が見えてきます。もうとにかく単語を覚えること、今のレベルではこれに尽きます。

もし集中力が続かないというのであれば、短い時間で勉強する癖をつけることです。30分を1日4回こなせば2時間になります。おそらく今いきなり2時間ぶっ通しの勉強をしても続かないでしょうし、何より集中できず勉強の質も低くなるでしょう。

勉強は量だけでなく、質も大事です。集中力がないのであれば、短い時間を複数回重ねることにより、質の高い勉強を繰り返したほうがよっぽど効率的です。「他人はこうしている」ではなく、自分を基準に考えてください。そして、短い勉強時間に慣れてきたら、徐々に勉強時間を延ばすようにしていってください。習慣は日々の積み重ねからできるものです。急な変化はご法度です。

成功のためにはライバルの選び方も大切だ

また長期間の勉強を続けるためには、ゲスな欲望以外にライバルも必要不可欠です。通常ライバルは「自分よりも少し上」のほうが、自分も引っ張られ有利なことが多いのですが、あなたの場合はか弱い子羊ちゃんなので、自分よりも少し下のライバルを見つけることをおすすめします。


自分より上の相手をライバルとした場合、「どうせ私なんて」と腐っていってしまう可能性が非常に高いです。下の相手だと、「私でもできるんだ」と優越感に浸れ、承認欲求が満たされます。勉強が楽しくなる一因にもなります。ガラスの心臓を持つあなたに向けた特別処方箋ですよ。

このように書くと、「性格が悪い」と思われてしまうかもしれませんが、それでいいのです。勉強にきれい事は必要ありません。もちろん、あなたが相手に面と向かって「あなたは私よりも勉強レベルが下」と宣言してしまえば火種になってしまいますが、心で思っているだけならば個人の自由です。

ライバルは自分の友人でもいいですし、もし周りにいないのであればSNSで見つけたり、図書館や自習室に通い、こっそり自分自身のライバルと認定したりしてもいいです。完璧なる自分1人の密室での勉強は、よっぽどの玄人でなければ続きません。あなたの場合、適切な競争相手を見つけることが合格への大きな鍵となります。

さまよう子羊が、羊を追う狼に脱皮するのを楽しみにしています。頑張ってください。