【六川亨の日本サッカー見聞録】U-17W杯で日本はフランスに完敗。見たい試合を探す苦労を痛感

写真拡大

▽個人的な感想ではあるが、これだけ日本のサッカーはあらゆるカテゴリーで活躍しているのだから、W杯という世界大会は公共放送であるNHKに、BSでもいいからライブ中継して欲しいということだ。

▽今シーズンからダ・ゾーンに加入し、ルヴァン杯などを視聴するためスカパー! とも契約した。さらにACLを見るには日テレとの契約視聴が必要だ。そして昨日のインドで開催中のU-17W杯は、フジテレビのオンデマンドと契約しないと見られない。これほどストレスのかかる環境は、利用者にとって負担になるのではないだろうか。

▽こうしたジレンマを解消すべく、U-17W杯の日本対フランス戦は、仕事仲間がネットで調べ、ライブ中継しているサッカー居酒屋を探し出し、昨夜は西武池袋線の中村橋にあるお店で同業者や旧知のサッカー解説者である川勝良一氏や代理人のI氏らとともに観戦した。いつもは現場にいることが多いものの、こうしてテレビ観戦すると、今回と同じ環境にありながら、現地に赴き、あるいはスポーツバーで声援を送るファン・サポーターの熱意を改めて感じる貴重な経験をできた。

▽ただ、試合は日本の完敗だった。期待の久保建英は相手のハードマークに持ち味を消され、平川怜もゲームを作ることができなかった。給水時間があったため、かなり高温多湿の劣悪な試合環境だったことは推測される。

▽フランスとは2015年の国際大会で勝っていたものの、今回は体のぶつけ合い、ハリルホジッチ監督の言うデュエルで圧倒された。「これほどまで体をぶつけてくるのか」という激しさ。元々、身体能力で凌駕しているフランスが本気で挑んで来る。それだけ日本のスキルを消すにはデュエルで勝負するのが効果的と判断したのだろう。

▽それは今回のU-17W杯だけでなく、なでしこジャパンが現在は劣勢を余儀なくされていることにもつながる。日本のスキルを消すにはフィジカルで勝負する――だからこそハリルホジッチ監督はデュエルや体脂肪率にこだわるのだろう。

▽話をフランス戦に戻すと、欧州選手権の得点王であるグイリに2ゴールを奪われた。左サイドからの突破を得意にして、日本は開始直後から何度も決定機を作られた。一瞬にしてトップスピードにギアアップする瞬間的な速さに、日本のDF陣は対応できなかった。シュートの技術もアイデアが抱負で、決まらなかったもののアウトサイドで狙ったり、右足インフロントで巻くようなシュートで右上スミを狙ったりするなど、17歳以下とは思えないクレバーな選手だった。恐らく次代のフランス代表を担う逸材だろう。

▽対する日本は、最終戦がニューカレドニアということもあり、グループ2位通過はほぼ確定だろう。山場となる決勝トーナメントの相手は、現在のところフランスと並んで優勝候補のイングランドが有力だ。そして、ここを突破できれば一気にファイナリスト進出も見えてくる。そのためにも、久保の強気のプレーに期待したい。

▽それにしても、NHKが中継しないのは残念でならない。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。