10月10日のハイチ戦を見ながら、妙な既視感に捕らわれた。同じような試合が、記憶の片隅で立ち上がっていた。

 もう10年以上前になる。05年9月、ジーコ率いる日本代表がホンジュラスとテストマッチを行なった。ドイツW杯出場決定後のキリンチャレンジカップで、今回と同じようにW杯に出場する強豪を呼ぶことは難しく、北中米カリブ海からホンジュラスを招いたのだった。

 ジーコのチームは主力を並べていたが、27分までに2ゴールを献上してしまう。ここから試合はシーソーゲームとなり、高原直泰、柳沢敦、中村俊輔、小笠原満男が得点者に名を連ねた日本が、5対4で勝利を飾ったのだった。

 激しい撃ち合いにスタジアムは沸いたが、選手たちの表情は冴えなかった。

 無理もない。W杯に出場しない国に、4失点もしてしまったのだ。身体能力の高いアタッカーがいたとはいえ、W杯の対戦国とはスケールが違う。そもそも強化につながるとは考えにくい相手と接戦を演じた現実を、選手たちは重く受け止めていた。

 ホンジュラスと同じ北中米カリブ海地区からやってきたハイチも、すでにロシアW杯の出場争いから脱落している。今年3月を最後にチームは編成されておらず、来日した19人のうち15人までが25歳以下、11人が23歳以下、4人が20歳以下だった。年齢からすべてを判断できないが、将来を見据えた編成と言って差し支えないだろう。6日に対戦したニュージーランドのようなモチベーションを、ハイチが抱いていたとは考えにくい。

 そんな相手に、3対3で引き分けたのである。前半17分までに2対0とリードしながら追いつかれ、あろうことか一度は引っ繰り返され、後半アディショナルタイムにどうにか追いついたのだ。これまで出場機会の少ない選手を多く起用したとはいっても、評価を得られるはずはない。

 一人ひとりのプレーを見れば、アピールを読み取ることはできる。ただ、最終予選の主力との比較で、強い印象を残した選手はいない。

 気になるのは香川である。ハイチ戦では後半途中から出場し、4−3−3のインサイドハーフでプレーした。同点弾ゲットで最低限の仕事をしたものの、ニュージーランド戦に続いてインパクトは控え目である。

 9月のオーストラリア戦のようなゲーム展開を想定すると、長谷部誠、山口蛍、井出口陽介の3人は中盤の組み合わせとして理想的だ。4−3−3のシステムに、背番号10のポジションは見つけにくい。

 長谷部、本田、岡崎らの招集を見送る一方で香川がメンバー入りしたのは、どうやって彼を生かすかの答えを探すためだったはずである。しかし、有効な道筋には辿り着けなかった。

 代表でスタメンに名を連ねるのは、所属クラブでしっかりとしたパフォーマンスを出している選手であるべきだ。最終予選で原口元気、大迫勇也、久保裕也らが結果に直結する働きを見せたのも、クラブの好調さを代表に持ち込んだからに他ならない。

 ドルトムントでの香川は、ケガの影響もあってポジション争いに出遅れた。いまはまだ、定位置をつかみ切れていない。

 それでも、ロシアW杯までの長いシーズンのなかで、復調してくることは想定内だ。ブラジルW杯での悔しさを晴らすためにも、来年6月に照準を合わせてくるはずだ。

 香川がトップフォームを取り戻したとき、彼をどうやって生かすのか──戦力の底上げにつながるテストよりも、実は重要なテーマである。