4タイプ別「上司を味方にする」トーク術

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新しいプロジェクトを立ち上げたい――。そう考えても、ときに上司が「壁」として立ちはだかる。上司の心を動かし、味方に変えるにはどうすればいいのだろうか。今回、上司を「劇場型」「個性派」「朝三暮四」「サンドイッチ」の4タイプに分類。実際に「壁」を乗り越えたヒットメーカーの話をもとに、攻略法を探った――。

■軸は「キャリア志向」と「権限委譲」

キャリア教育を専門とし、上司と部下の人間関係についての著書もある大学教授・小松俊明さんが、上司のタイプを4つに分類してくれた。

「キャリア志向と権限委譲を軸にして4タイプに分類してみました。この2つの指標は典型的なもので、自分の上司を理解しようとするとき、まず大事になってきます。おそらく現実的に女性が上司とのコミュニケーションで苦労するのは、ここの理解ではないでしょうか。この傾向を読み間違えると、上司とうまくいかず、男性のライバルにも差をつけられてしまいがちです」

自分の上司を観察し、どのタイプか見極める。そして、その上司に合わせて対応を変えていくのが、部下としてのサバイバル術になる。

「例えば、ふだんは話のわかる上司なのに、リスクを取る戦略や新しく何かをやる段になると、途端にロジカルでなくなる人がいます。それはキャリア志向が高いがゆえに、失敗したくないから。キャリア志向というのは、要するに“出世欲”です。課長以上のポジションにいる多くの人は、出世したいと考えているもの。定年間近などの事情で、出世を望まない人もいますが、自分の上司がどのぐらいキャリア志向が高いのかを見極めるのは大事です」

権限委譲という指標も、上司を理解する際に有効なキーワード。

「権限委譲というのは、どれだけ仕事を任せてくれるかということ。たとえ仕事ができても、『これは自分でやったほうが早い』と考え、部下に仕事を回さない上司もいる。それは権限委譲が少ないタイプです。逆に、権限委譲が多い上司は、人の使い方がうまく、部下のポテンシャルを引き出してくれます。ただ、うまく使われて切られてしまうこともありますね」

具体的に、それぞれの上司への対処法を考えてみよう。

■タイプ1:常に相手を打ち負かそうとする劇場型上司

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4つ以上あてはまったらこのタイプ


▢理屈っぽくプライドが高い。常に相手を打ち負かそうとし、敵対的な関係をつくることが多い
▢自分と同じ志、意欲、能力を相手に求める
▢古い体質や非合理的なことを嫌うため、そうした相手を仮想敵化する手法をとりがち
▢上昇志向が強く、何でも自分が率先して行う
▢大胆な発想と戦略的な手法で実行力があるが、人の感情に訴えたり、信頼を勝ち得たりするのは苦手
▢自分の能力に自信があり、相応の努力をしているという自負もあるため、上からものを見る傾向がある

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▼上司の思考を先読みして役立つ情報で決断をサポート

キャリア志向が高く、権限委譲も多い。小松さんによれば、そんな上司は早く出世しがちだという。

「このタイプは、会社の利益と自分の利益をうまく合わせることができる。だから、上の人からも信頼されます。改革型なので、赤字になった部署や組織を回復させるのもうまい。ただ、理屈は正しくても、物事を決めるときには犠牲を伴うので、敵をつくりやすいとも言えます」

政治家なら、知事などによくいるタイプ。その改革路線に部下としてついていくにはどうすればいい?

「上司のやることに乗るしかないですね。そして、進捗状況を常に報告すること。上司が今、進めていることについて、役立つ情報提供をするのも有効です。例えば、事実ベースのデータを簡潔に書類1枚にまとめるなどすると、喜んでもらえると思いますよ」(小松さん)

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▼味方にするトーク
昨日おっしゃっていた前年度のデータを1枚にまとめました

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■タイプ2:人に干渉せず、心の赴くままに動く個性派上司

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4つ以上あてはまったらこのタイプ


▢人と違うこと、ユニークであることに価値を置き、あまのじゃくな性格だと自覚している
▢自分が好きなことや興味のあることだけに目が向くあまり、周りが見えなくなることも
▢リーダーシップを発揮しなければいけないとわかっていても、自分だけが目立つのはあまり好きではない
▢人を引っ張ることは得意ではないが、相手の求めていることを調べて期待に応えることができる
▢あまり他人に干渉しないため、冷たい印象を与えることがある
▢付き合い残業はせず、自分の仕事が終わればさっさと帰る

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▼上司の興味をうまく引いて自分の企画に巻き込む!

あまり出世欲が感じられず、仕事も部下に任せっぱなし。定年間際のベテラン社員に多いタイプの上司。その下では能力が発揮できない!?

「キャリア志向が高い人は、フラストレーションがたまるでしょうね。しかし、こんな上司にも意外な実力がある。同期や知り合いに地位の高い人がいて紹介してくれたり、チャンスをくれたりします。または、自分のやりたいことをいったんはサヤに収め、その上司の下でできる最大のことに挑むといい。それも、将来、役立つはずです」(小松さん)

UPQ代表取締役の中澤優子さんには、このタイプの上司に接した経験があるそう。「こういう上司とはつかず離れず。日々、雑談しておくといい。そして、いざというとき、直接訴えかけるより頑張っているところを見せる。すると、無関心なようでいて助けてくれるものです」

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▼味方にするトーク
この案件、面白いですよ。新規プロジェクトにできたらいいですよね

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■タイプ3:仕事も成果も独り占めの朝三暮四上司

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4つ以上あてはまったらこのタイプ


▢センシティブな問題でも本音で語り、人々の不平不満に訴えかけることが得意
▢自分が絶対的に正しいと思いがちで、敵対する意見は徹底的にたたく
▢何事も先手必勝と考える傾向が強く、アプローチは押しが強く強引
▢名より実を取る傾向があり、基本的に損をすること、負けることが嫌いである
▢自分に賛同する者、ついてくる者のことは厚遇し、わかりやすい形で報いる
▢情緒が安定せず、感情的な発言も多く、むやみに敵を増やすことがある

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▼上司の得になる点を示してさりげなくコントロール

次々に新しいビジョンを打ち出すものの、それをどう実現するかが見えない。スタンドプレーに走りがちな困った上司。その対応策は?

「このタイプは、自分の思いどおりにしたいという欲求が強い。物事を上から見がちだし、年功序列重視、男尊女卑的であるかもしれません。でも、戦略家ではあっても実務家ではないので、実務家タイプの部下が合うんです」と小松さん。

「例えば、上司のビジョンを実現するために見積もりを5社から取り、2社ぐらいに絞って提示する。そして、『A社よりB社は社会貢献に熱心で、コンプライアンス上のメリットがある』などと、ひと言加えれば、B社を選ぶでしょうし、その意味では、誘導しやすいとも言えますね」

ただ、権限委譲が少なく、切り捨てられるというリスクには注意!

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▼味方にするトーク
見積もりを取った中で、B社にはこんなメリットがあります

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■タイプ4:上にも下にも良い顔をするサンドイッチ上司

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4つ以上あてはまったらこのタイプ


▢明るくフレンドリーな性格をしているため、アプローチがしやすい
▢コミュニケーション力があり、職場全体の調整役を務めることが多い
▢人から嫌われたくないため、ストレスを感じることでも我慢してしまう
▢悩みを打ち明けることが苦手であり、つい思いをため込んでしまう
▢いざというときのとっさの判断ができず、後悔するような場面が多い
▢自分でやったほうが早い仕事は部下に頼むのではなく、自分で済ませてしまうことが多い

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▼決断の遅さをフォローしてプロジェクトを前に進める

小松さんが「日本の組織に最も多いタイプ」と断言するサンドイッチ上司。出世欲は強くなく、「自分でやったほうが早いから」と、若手に仕事を任せようとしない。

「このタイプは上にも下にも良い顔をするがゆえに、人望はあるけれど、人間関係のストレスをため込みがち。板挟みになって決断が遅れるので、部下は、その決断を後押ししなければなりません」(小松さん)

具体的には、マーケティングなどの情報を集める、社内の横のつながりで根回ししておく方法がある。

中澤さんには裏技がある。「決断できない上司なら、そこを飛ばしてもっと上の人に話を通すのも手。例えば、社長がOKなら、その上司もNOとは言わない。その前に雑談レベルで相談だけしておいて、最終的にその人の成績になるようにすれば、波風は立ちません」

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▼味方にするトーク
話は通しておきました。ぜひやりたいのでお願いします!

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UPQ 代表取締役 中澤優子
2007年にカシオ計算機に入社。営業を経て携帯電話の企画・開発メンバーに。同社を退社後は、東京・秋葉原にカフェをオープン。15年にほぼひとりで家電メーカーUPQを設立。企画2カ月で17種24製品をつくりあげ、注目を集める。特に折りたたみ式モバイル電動バイク「UPQ BIKE me01」は、発売より半年を待たず完売、追加生産に。「上司より自分のほうが得意とするポイントを伸ばし、ひとつずつ実績をつくってきました。すると、次は自分がハンドルを握れるんです」


監修 東京海洋大学教授 小松俊明

商社マンやヘッドハンターを経て、東京海洋大学教授に。専門はグローバル教育とキャリア教育。著書に『35歳からの「転職」成功マニュアル』『デキる上司は定時に帰る』などがある。東南アジア生活が長く、特にシンガポール、マレーシア、タイ事情に詳しい。

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(福田 彩 構成=小田慶子 撮影=強田美央)