「Thinkstock」より

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 私は家族問題コンサルタントとして、もう20年以上にわたり、3万7000人以上の人たちから話を聞き、問題点を整理し、ご本人が望む解決に向かうよう心がけてきました。そこには、さまざまなトラブルや悩みがあります。

「夫が私の話を聞いてくれないんです」と訴える妻たちがいます。それが主訴でなくとも、夫婦のトラブルの隙間には、「私の話を聞いてくれない不満」が隠れていることが多いものです。

 彼女らはどうしたいのかといえば、自分の話を聞いてほしい。できれば夫が顔をこちらに向けて聞いてほしい。私の話にうなずいてほしい、合いの手なんかも入れてくれるとうれしい、共感してほしい、でも否定はされたくない。この、「否定されたくない」感情が大きくなり過ぎて、話が冗長になり、結果的に相手に何も伝わらないということが多々見受けられます。

 それは夫婦の会話だけでなく、ご相談を受ける最中にも見受けられます。

「夫が私の話を聞いてくれないんです。いつだって同じなんです。私が話し始めると面倒くさそうな顔をして、ときには眉間にシワを寄せてみたり、わざとらしく大きなため息をつくこともあります。私は話したいと思っているのに、夫はいつも、疲れているとか仕事のことを考えているとか言って、私が話し始める前にいつも遮られてしまうんです。逃げることもあります。私が廊下で話しかけると夫はリビングのソファへ行き、リビングで話しかけるとキッチンへ移動したりします。それでもがんばって話しかけると、しまいには『頼むから黙っていてくれ』と言います」

 ね。わかりますか。

 彼女が「話したい」という内容がなんであるか、この長いセリフのなかからまったく読み取ることができません。「いつだって同じ」というのは、何年前からなのか、頻度はどうかもわかりません。相談を受ける私も、ふと大きなため息をつきたくなる瞬間ですね。

●夫婦の会話を15秒で行う

 会話の基本は5W1Hというのは、誰もが知っています。いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)という6つの要素を伝えることがポイントです。

 それに加えて、夫婦の会話を円滑に進める(話を聞いてもらう)大切なコツが、もうひとつあります。

 それは、15秒間で話すことです。

「そんなに短い時間では何も伝わらない」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。十分に伝えることができます。テレビCMは約15秒単位ですが、視覚と聴覚に訴えるその内容は十分に伝わり、良いCMは印象にも残ります。スマートフォンでは15秒すら長く感じられるため、5〜6秒の動画広告まであるほどなので、6秒でも情報を伝えることができるという証明ですね。

 では、夫婦の会話を15秒で行うとは、どういうことでしょう。前述した長いセリフ、「夫が私の話を聞いてくれないんです。いつだって同じなんです。(中略)それでもがんばって話しかけると、しまいには『頼むから黙っていてくれ』と言います」という内容を語るのに必要な時間は1分前後。

 彼女が夫に話を聞いてもらうために必要なのは、抽象的な長い話ではなく、具体的に15秒で話すことです。いえ、彼女の夫だけでなく、すべての男性がそうだといえるかもしれません。女性が話す言葉を、男性が集中して聞いていられるのは15秒。1分、2分と過ぎるごとに、何も聞かなくなるといっても過言ではありません。

●脳の違い

 その理由のひとつに脳の違いがあります。

 脳は、右脳と左脳を脳梁がつないでいます。そのつないでいる脳梁の太さが男性と女性では異なるとされる。男性は細く、女性は太い。イメージや直感をつかさどる右脳と言語や記憶をつかさどる左脳は、脳梁によって情報交換されていますが、脳梁が太い女性は、一度にたくさんの情報が行き交い、言葉も多く、話の展開も早いし過去の情報を引き出すことも得意です。

 では、脳梁が細いと情報不足となるかといえばそうではなく、ひとつの情報が深く適切に伝わるため、専門性の高いことが得意ともいわれています。

 たとえば、冷蔵庫の中にあるあり物の食材で夕食のメニューをなんとなく組み立てたり、特売商品にあわせてメニュー構成できる妻たちと、まずメニューを決めてから築地まで買い出しに行く夫たち。この違いでもあります。

 もうひとつの理由に、スピード感があります。

 妻の話を聞かない夫たちからの意見としては、「妻が早口すぎて次々と話題が変わっていくので、ついていくことができない」「妻はダラダラと話していて、イライラして頭に入ってこない」。つまり、話すスピードが速くても遅くても伝わらないわけですね。夫が話すスピードに合わせて妻が話せば、夫には聞き取りやすくなります。少し厳しいようですが、相手に話を聞いてほしいのであれば、話す側が工夫や努力をするのは当然ではないかなと思います。

●相手の立場に立って考える

 男性と女性は異なります。骨格や内臓の差異にはじまり、脳もホルモンも異なります。異なる特性を持った人が会話するときには、相手に合わせて、スピードと情報量を加減する必要がありますが、加減できるのは、情報量を多く持ちスピード感あふれる側の人です。それを相手の立場に立って考える思いやりと呼びます。

 3分、5分としゃべり続けても関心をもって聞くことができるのは、恋人同士のうちだけ。相手に対して新鮮な気持ちや関心をもたなくなった夫婦間での会話は、恋人とは異なります。1テーマを15秒で話し、相手の反応を確認してください。そして、数分おいてまた別のテーマを15秒で語ってみてください。その繰り返しを行うことによって、夫は妻の話を聞くことができるようになり、穏やかな夫婦関係となります。
(文=池内ひろ美/家族問題評論家、八洲学園大学教授)