ジャパンオープンではフェルナンデスに次ぐ2位だったネイサン・チェン

 来年2月に開催される平昌五輪。フィギュアスケート男子シングルのメダル争いで、羽生結弦や宇野昌磨ら日本勢のライバルになる新鋭ネイサン・チェン(アメリカ)と前世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)の2人が、ジャパンオープンにそろって顔を見せた。フリーのみで競われた大会結果は、4回転のトーループとサルコウの2本しか跳ばなかったフェルナンデスが、計4本も跳んだチェンを抑えて男子のトップになった。

 ジャンプで大きなミスを出さなかったフェルナンデスは、ブライアン・オーサーコーチが愛弟子のために数年前からアイデアを温め、満を持して作ったという「ラ・マンチャの男」のプログラムを見応えある演技力でまとめた。演技構成点でただひとり90点台の93.14点の高得点をマーク。技術点でもチェンを上回る96.33点を出して気を吐いた。

「オリンピックでやる演目としては、このプログラムはぴったりで素晴らしいと思っています。母国のスペインに関係していますし、ラ・マンチャの男というキャラクターはいろいろな解釈が可能な点も興味深い。そして、これまでの自分のスケートキャリアをいろいろな要素を使って表現できるプログラムになりました」

 フェルナンデスにキャラクターを演じさせたら、男子スケーターの中で右に出るものはいないだけに、五輪用に作った勝負のプログラムは大きな助けになることは間違いない。ジャパンオープンのフェルナンデスは本調子にはほど遠かったが、それでもまずまずの得点評価を出せたことは、五輪に向けても自信となったはずだ。

「いつものようにスケートのシーズンが始まっただけで、そこにプラスアルファ、オリンピックがあるという気持ちです。僕にとって、オリンピックを含めた大会は、ツールだと思っています。試合を通して演技やスケーティングに磨きをかけて、さらに上達させていくための道具なんです。そして、大会ごとにどんどん自分の力を向上させていき、オリンピックのときに100パーセントにして最高の演技、最高のスケートを見せるようにしていきたいと思っています」

 自分よりも若い選手たちが4回転を何種類も、何本も跳んでも、フェルナンデスは演技とのバランスとプログラムの完成度を重視する。今季はフリーで2種類計3本の4回転を組み込んで、ジャンプの質で勝負するつもりのようだ。

 フェルナンデスとは別のアプローチで初めての五輪に挑むのが、「ミスター4回転」と言ってもいい4回転ジャンプの申し子、18歳のチェンだろう。

 シニアデビューを果たした昨季は、グランプリシリーズ(GP)のNHK杯では堂々の銀メダルに輝き、初出場となったGPファイナルではフリーで3種類の4回転をすべて成功させて総合2位となった。そして、四大陸選手権で圧巻の演技を見せて優勝。この大会では、ショートプログラム(SP)で国際スケート連盟(ISU)大会史上3人目となる100点超え。フリーでは4回転ジャンプを5回成功させた。さらにその後の世界選手権のフリーでは計6本の4回転ジャンプに挑んでいる。

 新しいシーズンを迎えるにあたり、徹底的に強化してきたのはやはり4回転ジャンプだった。その証拠に、9月に行なわれたシーズン初戦のUSインターナショナルクラシック2017では、4回転ループを見事に成功させている。これでチェンは、アクセルジャンプを除くルッツ、フリップ、ループ、サルコウ、トーループの5種類の4回転ジャンプ全てを跳んだ最初の選手となった。

 今季のチェンは、これら5種類の4回転を武器に、難易度の高いジャンプ構成を追求して最強のプログラムを作ってくるに違いない。

 シーズン初戦ではSPでプログラム後半に4回転フリップ+2回転トーループを決めてみせ、フリーでは冒頭に4回転ループと4回転ルッツを跳んだ。そして第2戦のジャパンオープン(フリー)では、冒頭の4回転ループから4回転フリップ、4回転ルッツ+2回転トーループ、そしてプログラム後半に4回転トーループを跳んでみせた。

 シーズン序盤の2戦のフリーで、試合本番前に提出するジャンプ構成を比較して見てみよう。

 1戦目は4回転ルッツ+3回転トーループ→4回転ループ→4回転フリップ→4回転トーループ+2回転ループ+3回転フリップ→4回転サルコウという、4回転5種類5本のプランだった。それが2戦目では、4回転ループ→4回転フリップ+3回転トーループ→4回転トーループ+2回転トーループ+2回転ループ→4回転サルコウという、4回転4種類4本のジャンプ構成を組み立てている。

 これらの構成を見る限り、チェンは4回転5種類をどんな組合せにでもできる能力を備えた驚異的なジャンパーであることがわかる。

 シーズン初陣後、チェンは「すぐではないが、たぶん(最強のジャンプ構成を)やる」と語っているように、フリーで5種類5本の4回転に踏み込むつもりだ。5歳からバレエを習っており、身のこなしと表現力も申し分ない。シーズン後半になり、滑り込んできたプログラムでしっかり4回転ジャンプが決まってくれば、五輪連覇を狙う羽生結弦や宇野昌磨らトップ勢と、激しい金メダル争いを繰り広げることになるだろう。

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