すっかり秋めいてきました。朝晩は肌寒さも感じます。
赤や黄に染まった葉が美しい景色を織りなす秋は、まさに黄金の季節。そこで今回はこの季節、きれいな黄色い葉や、ちょっと臭うけど食べるとおいしいその実で日本人にもなじみ深い、イチョウについてご紹介します。
「生きた化石」ともいわれるイチョウは生命力が強く、樹齢が1000年を超えるものもたくさんあります。さまざまな伝説があったり、実は毒性もあったり……。知れば知るほど意外な魅力にあふれているのです。

黄金の秋を彩るイチョウ。いろいろな側面からその魅力をお伝えします


かつて世界を席巻していた「生きた化石」

イチョウは胚珠(種になる部分)が、心皮(めしべを構成する部分)でおおわれていない裸子植物に属します。
中国が原産といわれていますが、かつて中生代から新生代には、世界中に生息していました。氷河期にその大半が絶滅してしまいましたが、世界各地で化石が発見されていて、現在も化石と同じ姿であることから「生きた化石」ともいわれます。
切れ目の入った扇形、独特の形をした葉は、秋にはきれいな黄色に染まります。また、水鳥の足に似ているその形からか「鴨脚樹」とも言われていました。実は、この「鴨脚」の中国語の発音から、日本で「イチョウ」と呼ばれるようになったという説もあります。

発見される化石と同じような姿で今なお残るイチョウは「生きた化石」と呼ばれています


燃え盛る炎の中でも生きのびる、強い生命力

イチョウは生命力が強く、大きく成長しますが、樹皮が厚いため火にも強い特性をもちます。
そうした特性に着目し、大火の多かった江戸時代には、火事による延焼を防ぐため火避地(ひよけち)にも植えられたほど。そういえば、神社やお寺の境内をはじめ、街路樹にイチョウは多く植えられていますが、なぜそうした場所に植えられていたのか……、きちんとした理由があったのですね。ちなみに、東京都千代田区大手町1丁目の通称「震災イチョウ」は、1923年の関東大震災で燃え盛る炎の中でも生き残り、復興のシンボルとなった一本として知られます。
そして、樹齢が数百年という大イチョウも各地にあり、それぞれ独特のいわれや伝説があります。例えば神奈川県鎌倉市にある鶴岡八幡宮の大銀杏は、鎌倉時代に三代将軍の源実朝を暗殺した公卿が隠れていたことから、「隠れ銀杏」とも呼ばれていました。残念ながら2010年3月10日に雪混じりの強風のため倒伏してしまいましたが、樹齢1000年と伝わる名木だったことからニュースにもなりましたね。

樹齢数百年の大イチョウも各地に。それぞれの地域の歴史を伝えます


どう見てもイチョウっぽい東京都のシンボルマーク、実はイチョウではない?

イチョウの葉をかたどったものとして最も有名なのが「東京都の木」でしょう、こちらは1966年に制定された歴史を持ちます。ではなぜ「東京都の木」にイチョウが選択されたのでしょう……。
首都美化対策のひとつとして「都の木」が制定されることとなり、このときに選ばれたのがイチョウだったのですが、当初は、ケヤキ、イチョウ、ソメイヨシノの3種類の木が選定委員会によって候補に選ばれ、その中から葉書での投票で決められたといいます。合計1万6157票(うち有効は1万6104票)中、イチョウは7919票を獲得。2位のケヤキに2800票近い差をつけて、都の木として制定されたのです。
ちなみに都営地下鉄やバスのマークとしてもおなじみの東京都のシンボルマークも、イチョウの葉のようなデザインですよね(画像・駅名左参照)。「東京都の木」がイチョウなので、それを使ったデザインアレンジと思っている方も多いようですが、実は、こちらはアルファベットのT(Tokyoの頭文字)を模したものでイチョウではないそうです。

どう見てもイチョウの葉に見えますがイチョウではないらしい、都のシンボルマーク


食べ過ぎ注意!イチョウの怖い毒性とは?

さて、イチョウの実、ギンナンは、食用にもなります。ちょっと甘くてほろ苦いその味は、独特のおいしさで茶わん蒸しに入れたり、串焼きにしたり……と、お酒のおつまみとしても大人気ですね。
ただ、一度に多く食べすぎてしまうと、おう吐や下痢、呼吸困難、けいれんなどを起こすこともあるそうです。東京都福祉保健局のホームページでは「ビタミンB6欠乏症となり、中毒になると考えられています」と注意も喚起されています。しかしそこで紹介されている事例は、50個も60個も一気に食べた結果。年齢や体質によって差はありますが、食べ過ぎにはくれぐれもご注意くださいね。

食べ過ぎると厄介なことに?意外と知られていない毒性とは?