BTSオンヌット駅近くにある平壌アリランレストラン

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 中国を中心としてアジア地域に点在している北朝鮮レストラン(以下、北レス)。「北朝鮮の外貨獲得の前線基地」などと評されることも多いが、先日報じたようにここ最近閉店が加速しつつある。

 そんな中、まだ3店舗が営業している地域がある。それは、タイの首都、バンコクである。

 かつて本サイトでも、昨年2月に『韓国政府による利用自粛要求で話題の「北朝鮮レストラン」、バンコク店に行ってみた』と題した記事で、旗艦店である日本人や和食店も多いプロンポンエリアにある「平壌日の出館レストラン」(記事掲載時の名称は平壌アリランレストラン)に行ったルポを紹介したが、今回はその他の2店、ちょっとマイナーなほうの店舗に行ってみた。

 まず一店舗目は、BTSのかつての東の終着駅オンヌット駅から徒歩12分ほど、ソイ8にある「平壌アリランレストラン」だ。この店は、プロンポンにあった店舗が移転したものなのでマイナー店ではあるが期待できる。

◆ガランとした店内に客は3人

 一般的に、北レスは午後7時半から8時ぐらいからステージショーがある。そのためステージショーに合わせて平日の午後7時半ごろに入店してみた。

 がらんとした店内に客は、日本人男性、発音から台湾人と思われるカップルの3人。迎えてくれたのは、南国のタイにおいては悪目立ちしそうなほど色白な北朝鮮の女性店員が席へ案内してくれた。

 店内は1階に4人座れるテーブルが10卓。1階の半分くらいのスペースがある2階はおそらく個室があると思われるが電気は落ちている。スタッフは、先ほど出迎えてくれた女性店員と厨房で調理をしている40代半ばくらいの北朝鮮人女性の2人しかいなかった。

 メニュー価格は、今のバンコクの物価で考えても高く、平壌冷麺250バーツ(約840円)、スンデ199バーツ(約670円)を注文。「飲み物は?」としつこく聞いてくるので、ハイネケン大瓶180バーツ(約610円)を追加注文した。

 かつては、冷麺なども韓国料理店より美味いと言われたものだが、今回出てきた料理はどうにもパンチがない淡白な味で、もはや韓国料理のほうが数段上という状態であった。

 この閑散とした雰囲気に、なんとなく察してはいたものの女性店員に「ステージショーはないの?」と聞いてみた。すると、案の定「ない」との返答。「バケーションでスタッフがいないから、来月からやる」とのこと。まあ、これは嘘だろうと思われる。何しろ、北レスの女性スタッフは、ボランティアの勤労奉仕で丁稚奉公に近い。休みは、生理休みが月1、2日程度のほぼ無休に近いという労働条件なのだ。

 ただ、4月15日の太陽節(金日成主席の生誕日)など北朝鮮の祝日は休みとなり、そのときに集団で旅行したり、ショッピングをしてることが多いが、記者が行ったときはそうした休みの日程とは重ならないのだ。

「タイの連絡先を教えてくれればショーが始まったら電話で伝えますよ」と、思いの外サービス心のある言葉が来たと思ったが、東京から来てタイに住んでいないからと答えると、あらそうとばかりの醒めた対応に戻ってしまった。

◆店内撮影一切NG!

 さらに、ステージョーがないなら「モランボン楽団」の曲名を伝えて流してくれとリクエストするも即答でないと瞬殺される始末。加えて、冷麺が登場したので写真を撮ろうとすると、撮影は全面NGだと速攻で指導された。記者は個人的に中国その他いろいろな地域の北レスに行ったり、行った人の話も聞いているが、女性スタッフを撮ってはいけないという店はあるが、全面NGなんて北レスはあまり聞いたことがない。

 スマホで撮影した画像は会計時に削除させられたが、デジカメでも撮影できたのでなんとか記事で披露できている。

 会計自体も一悶着あった。入り口にクレジットカードOKとあったので、クレジットカード払いを希望して渡すとカードが認識しないと返されてしまったのだ。別カードや中国の銀連カードも出すも全滅だった。スタッフ不在といいこれも制裁強化の何かしらの影響なのかもしれない。

 ちなみに、もう3店のうち、もう一つのマイナー店と言える「平壌玉流レストラン」は、BTSエカマイ駅から徒歩10分くらいのソイ4と6の間のホテル内にあったはずだがホテル自体が廃業しており閉店していた。後から知ったのだが、同店は6月ごろにホテル廃業とともに閉店し、9月上旬にはBTSアソーク(MRTスクンビット駅)から徒歩5分ほどのソイ25近くへ移転オープンを遂げていたようだ。

◆周辺国に押し寄せる閉店の波

 今回訪れた「平壌アリランレストラン」では、微笑みの国タイにあるにも関わらず、一切微笑みのない対応をされてしまった。

 ただ、旗艦店である 平壌日の出館レストランでは、「AKB48」の「恋するフォーチュンクッキー」や「花*花」の「さよなら大好きな人」などを披露することもあり、ステージショーの時間も最長50分と北レス史上最強の本格的なショーを見ることできる(9月末時点での情報)。

 まだタイには北レスは3店舗残されているが、うち1店舗は上記のような状況だ。しかも、周辺国では北レス閉店ラッシュが始まっている。金正男氏殺害事件で有名になったマレーシアの首都クアラルンプールの「高麗館」は8月ごろまでにひっそり閉店。9月末には、ベトナムの商都ホーチミン市の「平壌柳京レストラン」も閉店している(ベトナムは首都ハノイの2店舗を除き北レスは閉店)。

 バンコクの北レスにも、この閉店の波は押し寄せてくるかもしれない。

<取材・文・撮影/中野鷹(TwitterID=@you_nakano2017)>