立憲民主党の初鹿明博氏

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 民進党が分裂するかたちで結成された立憲民主党。代表に就任した枝野幸男氏が広く参加を呼びかけるなかで、いち早く創立メンバーに加わったのが民進党を離党した初鹿明博氏だ。

 激戦が予想される東京16区で当選を目指す初鹿氏は、「自民党の対抗軸になり、政権交代が可能な立憲民主党に育てなくてはならない」と決意を新たにする。

 9月28日に行われた民進党の両院議員総会で、前原誠司代表は何を話したのか。希望の党の公認をめぐる「踏み絵問題」の是非、立憲民主党の目指す姿や今後の政策はどのようなものか。初鹿氏に聞いた。

●「一夜にして裏切られた」

――民進党を離党し、枝野代表の呼びかけにいち早く応えるかたちで立憲民主党の創立メンバーになりました。その思いについて、お聞かせください。

初鹿明博氏(以下、初鹿) 当時の民主党と維新の党が合併して、民進党が誕生しました。それ以降、野党第一党として活動し、「自民党の対抗軸にならなければいけない」という思いで活動してきました。2016年3月の結党以来、みんなで綱領、基本理念、政策を練り上げてまいりました。

 しかし、今年9月28日に前原代表が両院議員総会の席上で民進党は希望の党に合流することを表明。全会一致で採択し、事実上の「解党」となりました。

 前原代表からは「民進党の議員みんなで参加し、政策も丸ごと持っていき、名を捨てて実を取り、安倍政権を打倒するために候補者も一本化する」との説明があったため、「それならば、みんなで参加しよう」という思いがあり、私も賛同しました。

 このとき一瞬、「安倍政権に対抗し得る政党ができる」との期待を持ちました。当然、その場にいた多くの議員が「民進党全員で行くのだから、民進党の綱領、基本理念、政策も希望の党に反映できるのだろう」と思ったことでしょう。しかし、それが一夜にして裏切られたのです。

――翌日には、いわゆる「排除リスト」の存在がささやかれました。また、希望の党には安全保障や憲法改正などについて“反民進党”的な政策が並び、それらに同調することが公認の条件とされました。いわゆる“踏み絵”です。

初鹿 先に民進党を離党した細野豪志氏と長島昭久氏は、いずれも安全保障関連法については「こんな憲法違反の疑いが強い法律は認められない」という立場でした。自民党を離党した若狭勝氏も、採決を棄権しています。

 希望の党の小池百合子代表の持論はともかくとして、構成員のみなさんは「安全保障関連法は憲法違反、あるいはその疑いが強い」との考えでしたが、それがたった1日で賛成に転じるとは、夢にも思いませんでした。

 希望の党は「これらの“踏み絵”を踏まなければ公認しない」と言い出し、いわゆる「排除の論理」を明確にしたわけですが、これには驚いたというよりあきれました。希望の党の考えには、とても賛同できない。それが、私が希望の党に参加しなかった理由です。

●「本当に政権交代を狙っているのか」

――希望の党の政策については「自民党よりも右寄り」という声もあり、有権者のなかには「これでは、仮に政権交代をしても意味がない」という見方も出ています。

初鹿 希望の党は、本当に自民党の対抗軸になり得るのか。安倍政権を倒しても、同じような政策の“小池政権”になるだけではないか。自民党と希望の党の政策が同じであるならば、二大政党になっても意味がありません。本当に、希望の党は自民党に対抗する政党なのでしょうか。

 しかも、希望の党からは「今回の選挙では、自民党より議席が上回ることがない。次の次を狙う」「参議院議員の数が少ないから、自民党と連携しよう」「首班指名は石破茂氏をかつごう」などといった話が聞こえます。本当に政権交代をするつもりがあるのか、あるいは最初から政権交代を狙っていないのではないか……という疑念を持っています。

 だからこそ今、立憲民主党が必要なのだと思います。我々が立ち上がらなければ、この国は二極化どころか一極化してしまう。そして、今の安倍政権および政策の延長線上で危険な国になってしまう。そんな強い危機感を持っています。

 今の安倍政権に対して、反発や反感、不満を抱く国民は数多くいます。我々は、そうした人々の受け皿になりたいと思っています。かつての民主党のように政権交代可能な政党として立憲民主党を育て上げ、有権者のみなさんから多くの支持を集めたいという決意です。

――旧民主党も民進党も、時間をかけてマニフェストを作成しました。希望の党の政策については、どんな印象ですか。

初鹿 当初と違い、希望の党の政策も揺れています。民進党と自民党の政策の“おいしいところ”を選んでいる印象です。旧民主党も民進党も、マニフェストを作成する際は全員で議論し、ときにはつかみかからんばかりの激しい議論の末にまとめ上げました。

 原発にしても、毎年政策プランを練り、ブラッシュアップしました。立憲民主党では、その政策をベースにブラッシュアップしていきます。

 一方で希望の党の政策は、時間がないという事情もありますが、少数とりわけ1人の人物の意向が強く反映されています。それが民主国家にふさわしい政党のあり方なのか。きわめて非民主的であり、不可解です。それを候補者選考の“踏み絵”にしたことは、いかがなものかと思います。

●希望の党からは「電話もファックスもなかった」

――希望の党は、外国人に対する地方参政権付与に反対の立場です。比較的優先順位が低いとされる「外国人参政権反対」までもが“踏み絵”にされたことについては、いかがですか。小池代表に近い、国会議員でない人物がこの項目を入れたともいわれていますが。

初鹿 「ダイバーシティ」「多様性」「寛容な改革保守」といいながら、外国人に対する参政権付与まで“踏み絵”にする。これは社会の分断を図る、危険きわまりない発想です。

 もちろん、議員のなかでも賛成派と反対派に分かれていますが、それは当然のことです。自民党も同じです。「自民党だから、外国人の地方参政権には全員反対」ではなく、賛成派もいる。それでも、ひとつの政党として構成されています。

「外国人参政権反対」を“踏み絵”にするということは、そういう政策を称賛する排外主義者のほうを向いているということであり、大きな問題です。

 ちなみに、私は外国人の地方参政権については賛成の立場です。納税している外国人の方々が地方自治に参加されることは、国政ではありませんので、特段問題ではないと考えます。

 ただし、外国人参政権についてはさまざまな議論があっていいと思います。多数の意見を集約してまとめていくのが国会のあり方ですので、議論すべきときに国会で議論すべき問題です。

――初鹿さんのもとにも、それらの“踏み絵”に関する連絡はあったのでしょうか。

初鹿 私のところには、電話もファックスもありませんでした。どうも“排除組”だったようですが、「逆に光栄だな」と思っています。

●選挙区は「日本一公明党が強い地区」

――この選挙では、どのようなことを訴えていきますか。

初鹿 アベノミクスの総括です。アベノミクスは大企業優遇で新自由主義経済優先であり、多くの方々は疲弊しています。「人を人として見ない」、そういう政策が続いてきました。今こそ、アベノミクスを変えなくてはならないのです。

「経済のための経済」ではなく、「人のための経済政策」を打ち出したいと考えています。具体的には、一人ひとりの可処分所得の向上を目指します。社会保障の充実や実質賃金の引き上げを実現していきます。

――消費税増税に対する考え方は。

初鹿 ここで消費税増税を行えば、実質賃金が下がってしまい、消費の低迷につながります。今の経済状況では、絶対にプラスになりません。将来的に国民のみなさまに消費税増税をお願いすることはあっても、今は凍結すべきです。

 一方で、アベノミクスで潤った方々には応分の負担をお願いすることが必要です。大企業の法人税引き上げ、累進課税の強化、金融資産保有者の課税を強化し、すべての人に分配することが肝要です。

――具体的な経済政策については、いかがでしょうか。

初鹿 旧民主党政権時に高等学校の無償化を行いました。高所得者にはより高い累進課税を行っていましたが、無償化の対象として高所得者を外すことはしませんでした。所得チェックも手間がかかるため、「コストをかけるくらいであれば、等しく分配するべき」との考えだったからです。

 恩恵を受けるのは子どもですから、「親の年収によって、子どもが受ける恩恵に差が出るのは、制度として矛盾するのではないか」と思いました。ただ、自公政権になって所得制限が設けられ、都道府県に授業料を徴収する部門が復活してしまい、逆にコストがかかる事態になりました。

 経済政策については、この施策を反映させて全世代・全世帯が恩恵を受けるような社会制度に変革したいと考えています。

 福祉・介護は成長産業ですが、一方では人手不足です。その理由は、労力に比べて賃金が安いから。これは、保育も同じです。現行の介護保険制度では、給付額を増やすと利用者の負担が増えます。そのため、介護保険と切り離した別の仕組みで働く人の賃金向上策を考える必要があります。

 処遇改善の交付金は、税金で補填していたものを報酬に変えるということで介護報酬に加算していましたが、報酬と切り離した賃金向上につながる制度を保育制度とともに考案することで、働く人が定着し、所得がアップし、消費もアップする。それによって経済の好循環につながるという点が、一番訴えたいところです。

――選挙区である東京16区は激戦区です。自民党や公明党の基礎票が圧倒的に強いです。ズバリ、勝算のほどは?

初鹿 自民党だけでなく「日本で一番、公明党が強い地区」ともいわれており、野党の票も分散しているため、厳しい選挙であると受け止めています。しかし、この選挙は我々が勝たなければならないという決意でいます。

 憲法を無視し、民主主義のルールを逸脱することがまかりとおってはいけないと思います。そして、森友・加計学園に代表される問題を「政治の私物化」といわずになんというのか。安倍晋三首相とお友達であれば安く国有地が入手できたり、15年近く下りなかった認可が突然下りたりする。これは、誰が考えてもおかしなことです。

 これは、私1人の戦いというよりも、国民が民主主義を奪い返す戦いであり、たまたま、私がその先頭に立っているということです。

――ありがとうございました
(構成=長井雄一朗/ライター)