厚生労働省が、薬剤薬剤耐性(AMR)対策の啓発に『機動戦士ガンダム』を起用して、ポスター・リーフレットの作成と、SNSなどを通じた情報発信を実施しています。
『AMR』とアムロをかけてというキャンペーンですが、そもそも薬剤耐性ってなに?そしてそんなに怖いものなの?という疑問がありませんか?

【さらに詳しい元の記事はこちら】

実は筆者、保健所で結核患者の服薬管理を担当していた経験があります。AMRとは少し離れてしまいますが、結核予防の観点から少しお話させてください。
結核の服薬管理のことを『DOTS』と呼びます。これはDirectly Observed Treatment Short course(直接監視下服薬短期療法:WHOが推奨する治療法)の略で5つの要素からなる総合的な結核対策戦略の事です。患者が薬を医療従事者(退院後は保健所が管理)の目の前で飲んでもらい正しく服薬できた事を確認する服薬支援方法です。
(出典:独立行政法人国際協力機構)

登録されている患者の服薬状況を各担当者が記入したものを確認することが私の仕事でした。結核の場合服薬期間が長く、服薬を途中でやめてしまうと再発をする可能性があります。再発時出てくる症状の一つに『多剤耐性結核』というものがあります。結核の治療は単一の薬剤で行うのではなく2〜4剤を組み合わせて約6か月間の服薬治療を行うのが標準的な治療法です。

しかし、服薬が確実に行えておらず飲んだり飲まなかったりという事をしてしまうと結核の菌が薬に耐性を持つようになります。この状態が『多剤耐性結核』と呼ばれるもので標準的な治療ができない、難治性の結核となります。標準的な服薬での治療ができなくなってしまうため入院生活は長引きます。通常お薬を飲み終われば2年経過を観察すれば終わりの病院や保健所とのお付き合いも、多剤耐性結核となってしまうと一生の付き合いとなってしまいます。

「なんだ、お薬がきかなかったら、入院して、通院を続ければいいんだよね。」と思うかもしれませんが、実はそれだけではありません。
結核は感染者の近くにいるだけで感染してしまう『空気感染』を起こします。空気感染は結核の症状を発症していない、菌の保持者(キャリア)でも結核菌を排出していれば周囲への感染源となり得る現象です。そしてこの感染は結核菌が多剤耐性菌であってもそうでなくても同じ程度の感染力を保持しています。不適切な服薬により体内で多剤耐性菌が出現してしまい、多剤耐性結核を発症してしまった人が近くにいると仮定します。感染型の結核の場合、発症したと思われる時期から8時間以上接触のある人が移っていないか検査の対象になります。そしてこの多剤耐性の人から移る結核の場合、感染した人は多剤耐性結核に感染してしまっているケースがあります。もちろん感染者には薬剤耐性検査を行い多剤耐性か確認しますがこれには時間がかかり、治療の開始が遅くなるケースもあります。例えば会社の人、家族などがそういうことになると困りますよね。そういう意味で結核の場合服薬管理は重要です。

日本は2016年に結核の低まん延国目指すと予防指針に取り組んでいますが、現在日本の結核罹患率は2010年に人口10万人あたり18.2人で、10人以下となっている欧米先進国に比べまだまだ結核は多く先進国の中では高い発症率です。9月末まで結核予防週間だったこともあり、少しだけ結核の話をさせてもらいました。

では本題に戻って『薬剤薬剤耐性(AMR)対策』についてです。風邪の時に抗微生物薬(抗生物質)が処方されることがあります。この抗生物質、風邪の時によく処方されています(実際は風邪の原因の殆どがウイスであるため抗生物質はこじらせて細菌感染に発展しないと効果はない)。でも、1980年代以降、不適切な使用等を背景として、病院内を中心に新たな薬剤耐性菌が増加しています。ニュースなどで、院内感染などという形で報道されるので耳にしたこともあるかもしれません。日本に比べて先進国ではこの多剤耐性の他、超多剤耐性結核、耐性マラリア等が世界的に拡大していている一方で、新しい抗微生物薬の開発は減少しているのです。
国内でも2015年から検討会議などを設置し、AMRについて対策をしてきました。(出典:薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(概要)pdf)

今回は普及啓発活動のひとつとして、アムロに登場してもらったということですね。
じゃあ、お薬は怖いから飲むのはやめるべきかと言えばそうではありません。きちんと処方されたものをきちんと飲み切ることが大事です。軽快したところで飲むのを勝手にやめてしまって別の機会に受診せず飲んでしまったり、家族に余りを飲ませてしまったりすることがNGなのです。
お薬の服用は正しく、そして用法を守ってくださいね。

<その他参考、出典>
結核について(公益財団法人 結核予防会)
厚生労働省(報道資料)
薬剤耐性(AMR)対策について(厚生労働省)

表記クレジット:機動戦士ガンダム (C)創通・サンライズ

(天汐香弓 / 監修・梓川みいな)