この時の、あまりにも愛くるしい姿をモチーフに出来上がったデザイン。作品自体は急きょ制作に取り掛かったもので、出来上がったのは個展間近、まさにギリギリだったそうだ。そのため、このデザインを取り入れた作品は現在数個しか存在していない。

可夜さんが、自身で生み出した切子シリーズはまだまだある。「星の羅針盤(アストロラーベ)」 は古代の天体観測器具がモチーフになっている。伝統柄においても、難度が高いとされる「菊繋ぎ」による「アストロラーベ/菊繋ぎ紋」。太い菊の部分と細い線の部分に分けることで、重なったところがより強調され、まるで星のように見える。可夜さん自身が考案した模様だ。

「逢魔猫/可夜硝切子」は、デザインはもちろん、宙吹き、彫刻、切子まで、全てが可夜さん自身の手で生み出された逢魔猫作品。光にかざすと、中がまるで星屑のように青く輝いてとても美しい。ここまで紹介したものは、可夜作品のほんの一部に過ぎない。初めての個展でありながら、その作品のバリエーションには驚かされる。

可夜さんによると、今までは実際の写真をモチーフにしたリアルなシルエットをデザインに活かしていたが、今後はさらに幻想の世界観を取り入れていきたいとのこと。例えば、という前置きはつくが、妖をテーマにした作品を色々作ってみたいとコメントしてくれた。グラール製法を活かして、かの「九尾の狐」が硝子に封印されたような「殺生石」といった作品イメージがすでに可夜さんの中にあるという。

今回の「逢魔猫」でもすでに猫又が登場しているように、今後の可夜作品には、多くの妖怪変化が登場するかもしれない。切子ファンや猫ファンのみならず、妖怪ファンにとっても、今後の可夜さんの活動は注目に値するだろう。切子の新しい可能性を広げる可夜さんのガラス作品。手に取って、その存在感を実感してみて欲しい。

(取材/イベニア)

IceCrack+/可夜 個展「逢魔ヶ刻、猫は跨ぐ。世を」

展示期間:2017年10月7日(土)〜10月15日(日) 
休日:11日(水)、12日(木)時間:13:00〜19:00 
※初日は14時より開場、最終日は17時に閉場
会場:いろどりやギャラリー(東京都渋谷区円山町14-11)
作家在廊:初日と最終日、他
アクセス方法:JR渋谷駅より徒歩8分 神泉駅より徒歩3分