アーティストのトーク。聴衆は風呂いすに腰掛けて

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 あなたは最近、銭湯に行ったことがあるだろうか? このところの東京都内の“銭湯事情”はというと、昭和43年をピークに毎年約30店の廃業が続き、代替わりする銭湯の経営者も多いようだ。ただ、店舗数が減る一方で1日あたりの客数については2016年度は東京都全体で前年度比2%増加。文京区に限ると14%増をマークしたという。

 そんな中、文京浴場組合主催「6人の作家展」を記念したアートトークイベント『なぜ私は銭湯でアートをするか』が10月9日、東京都文京区の大黒湯で行われた。

 今回のトークイベントは、東京都文京区の6銭湯を舞台に6人のアーティストが個展を開く、文京浴場組合主催の「文京の湯 銭湯MUSEUM6人の作家展」を記念して行われたもの。東京都内の銭湯の中でも、なぜ文京区の1日あたり客数の前年度比の伸びは大きいのか?という問いに、「理由はわからない」と、文京浴場組合・支部長を務める大黒湯の岡嶋氏。ただ、銭湯によっては、老朽化した銭湯の建て替えに伴い「デザイン銭湯」化させたり、スーパー銭湯並みの施設充実化を図っているほか、今回の文京浴場組合による「銭湯ミュージアム」など、各種のイベント開催を行っているという。各銭湯や組合によるソフト・ハード両面における努力は、一定の功を奏しているということもいえそうだ。

 イベントが始まると、個展を行う6人のアーティストのうち5人(写真家・橘田龍馬氏、美術作家・安齋洋氏、銭湯ペンキ絵師・中みずき氏、笑文字作家・齋藤史生氏、銭湯ハンコ作家・廣瀬十四三氏)が湯を抜いた浴槽部分にパネリストとして登壇。40人ほどの聴衆は、普段は洗い場となっているスペースに並べられた風呂用いすに座り、アーティストたちの作品に込めた想いや制作秘話をはじめとした、『なぜ銭湯でアートを』というテーマのトーク、ディスカッションに参加した。アーティストからは各々の“銭湯ヒストリー”のほか、銭湯ならではの“ここにしかない郷愁”の魅力が思い思いに語られた。また、日常生活の延長上にありながらも、「裸で過ごす」場である銭湯で個展を開くといった、今回の「銭湯ミュージアム」に関する意外性や感動にも触れ、聴衆に向けて「ぜひ、訪れてほしい」との熱いメッセージを送った。

 自宅に風呂がなかった時代には、地域民にとっての生活の場であり、社交場としての役割も果たしていた銭湯。自宅での入浴がメインの時代となっても、参加者の中には「週に5,6日は」という筋金入りの銭湯好きも。訪日外国人からも熱い注目を集め、現在は自宅以外での自分の居場所、いわば「サードプレイス」としての在り方を模索しつつあるという銭湯。その形態、目的は、時代に合わせ少しずつ変化つつも、人々をホッとさせ温めてくれる場所であり続けることに変わりはなさそうだ。

 「銭湯ミュージアム」の料金は入浴料金のみ。開催場所は、文京区内にある豊川浴泉、大黒湯、歌舞伎湯、白山浴場、富士見湯、ふくの湯の6浴場。期間は12月3日までの開催予定。この秋は、裸でアートに親しもう。

「文京の湯 銭湯MUSEUM6人の作家展」 主催:文京浴場組合