「鉄は国家なり」と言われた時代があった。これは、鉄の生産量が国力そのものであることをシンボリックに表現した言葉で、生産量世界1を経験した国は、イギリス、ドイツ、米国、日本、中国と時代の流れの中で変遷しているが、今でも世界経済の中では毅然たる存在感を示す国ばかりである。

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 現在は産業構造や市場の求めるものが変化したため、必ずしも鉄のみに国力のバロメーターを求める時代ではない。特に近年は環境規制の強化や製品の軽量化を求めてアルミ製の部材に対する需要が急増している。電気自動車(EV)へのシフトが加速している自動車や、航空機、世界に広がる鉄道網の新設や新幹線化などは車体(機体)の軽量化が、省エネや航続距離の拡大に不可欠な条件であり、鉄に並ぶ中核素材の一つとして軽いアルミ部材への注目度が高まっている。

 そんなさなかに、アルミ圧延品の国内シェアが約18%で第2位(首位は約34%のUACJ)を占める神戸製鋼所でアルミ製部材の性能データの改竄問題が発覚した。同社は三菱重工業など航空機関連メーカーやトヨタ自動車など、約200社に対し、顧客が求める強度や寸法などの品質基準を満たさないまま、品質データを改竄して取引条件に適(かな)ったものとして出荷していたという。

 しかも、昨年9月から今年8月末まで長府製造所(山口県下関市)や真岡製造所(栃木県真岡市)、大安工場(三重県いなべ市)など同社グループの4事業所全てで同様の不正が行われており、中には10年前から継続されていた事例もあり、まさに会社ぐるみの組織的な不正行為と言わざるを得ない状況である。

 同社は2017年3月期まで2期連続の最終赤字を計上中で、今期(18年3月期)はアルミ・銅部門を戦略事業と位置づけて、日本と韓国のアルミ事業に550億円を集中投資して黒字転換を目指すと発表をしていた。不正の影響如何では、自動車や航空機部材の受注で激しく争うアルミ圧延国内最大手のUACJとの競合に後れを取り、成長戦略が見通せなくなる可能性すら出てきた。

 なによりも発注者の求める品質基準を満たしていない製品は、明らかな契約違反であり現時点で影響の拡大規模を予想することは困難である。そんな状況を嫌気して、今日の東京証券取引所の前場では圧倒的な売り気配で値が付いていない。今後の行方が注目されている。