橋本健元神戸市議(右、写真:アフロ)

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「身から出た錆」はいささか多過ぎた――。

 今井絵理子参院議員(自民)との不倫騒動を発端に、政策パンフの架空印刷代請求による政務活動費詐取の疑いが出てしまった、“ハシケン”こと橋本健元神戸市議(37)。メディアに追い回され「説明責任を果たす」と啖呵を切ったが、8月29日に北川道夫市議会議長にたった2行の辞表を郵送しただけで雲隠れした。

 名門、県立長田高校(神戸市長田区)から大阪大学歯学部を卒業、神戸市中央区の一等地に歯科クリニックを開業している同氏はこの一件で自民党も離党したが、実は自民党兵庫県連期待のホープで「次期衆院選の有力候補」と目されていた。華麗な経歴に加え二枚目、歯科医師会などの支援で当選も有力視されたが、市民団体のみならず市議会からも刑事告発されすべてが吹っ飛んだ。

 騒動の直前、神戸市議会では自民のベテラン市議3人が政活費詐取の詐欺罪で神戸地検に起訴されて辞職した。不正額は3人合計で約2300万円。橋本氏はこれを上回りそうだ。橋本氏も不起訴になる可能性は低く、有罪なら歯科業も業務停止となる可能性もある。

 タレント出身の今井議員や、高校の同級生だった妻を慮ったのか、橋本氏は「一線を越えた」ことは認めていないものの、診療報酬の不正まで報じられている。ある地元記者は語る。

「妻子ある橋本氏は、家庭は崩壊しているような主旨の発言をし、妻と別れて今井議員と結婚したがっている。自民党本部では彼女への悪影響を心配している」

 橋本氏を兵庫県警に刑事告発した市民オンブズマン兵庫の森池豊武代表は「今回の不正は自民党市議団ぐるみでやっていたはず」とにらむが、政務活動費の不正問題で記憶に新しいのは、なんといっても号泣会見で話題を呼んだ元兵庫県議の野々村竜太郎氏だ。カラ出張オンパレードで約900万円を詐取。神戸地検に起訴され有罪判決を受けた。

 この事件で政務活動費へのチェックは厳しくなり、神戸市議会では領収証のインターネット公開が義務付けられるようになったという。しかし、同市では領収証に「自民党市議団」などの会派名を書くだけで、個人名を書かなくてもよい。これでは誰が支出したのかわからない。インチキ領収証やカラ出張などが判明しても、人をすり替えることもできる。個人が特定できないケースも出てくるし、それでは詐欺罪などの刑事訴追ができなくなるだろう。

●政務活動費の規制は「ザル」

 市民の血税が投じられる政務活動費をめぐる規制は、まだ「ザル」だ。大阪府のある市議会議員は3年間で450冊の本を政務活動費で買ったという。議員活動として、果たして年に150冊も必要なのか。かつて筆者が寄稿していた週刊誌では取材費請求の際、事件現場で地図を買う際にはレジで書籍タイトルを領収証に書いてもらった上、表紙をコピーして添付する必要があった。だが、議員が税金で購入した多数の本を、議会事務局がいちいちチェックするわけではない。自分の趣味の本を買おうが、妻や子供のための本を買ったとしても、わからない。

 事務手続きを担っている議会事務局は、政務活動費の不正請求を把握することはできないのか。たとえば、あれだけ頻繁にカラ出張を繰り返した野々村氏など、出張しているはずの日に京阪神界隈をうろついている姿が目撃されていただろうし、そうした情報が事務局に入っていないはずがない。つまり政務活動費の不正支出は、議会事務局も「共犯」なのだ。

 神戸市では10月22日に久元喜造市長が2選を目指す市長選挙があるが、相次ぐ辞職により市議の補欠選挙が加わっていた。そこへ衆議院の総選挙が重なる。市選挙管理委員会は「トリプル選挙」に備え、通常250人の職員を400人にする。彼らの残業手当も巨額に上る。「甘々チェック」がもたらす議員たちの不正で、さらなる税金の投入が行われてしまう。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)