仙台戦は10人での戦いを強いられたが、しぶとく勝利。8年ぶりの決勝進出を決めた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[ルヴァン杯準決勝 第2戦]川崎 3-1 仙台/10月8日/等々力
 
 ルヴァンカップ準決勝の第2戦、第1戦を2-3で落としていた川崎は、三好康児の2ゴールで49分までに逆転に成功した。しかし、その3分後、CBの奈良竜樹が2度目の警告を受けて退場となった。
 
 リードを得ながら10人での戦いを強いられる。この展開に多くの人の脳裏には約1か月前の苦い記憶が蘇ったはずだ。ACL準々決勝の第2戦。浦和と対戦した川崎は痛恨の逆転負けを喫した。先制に成功しながら前半のうちに車屋紳太郎が退場すると、守備を固めて逃げ切りを図るも、第1戦で得ていた2点のリードも守れずに涙を飲んだ。
 
 あの二の舞になるのではないか。スタジアムに不穏な空気が漂うなか、案の定、奈良の退場から7分後には仙台に1点を返されてしまう。その後も仙台の攻勢を浴びたが、ただしこの日の川崎は浦和戦の経験を活かしてしぶとく戦った。
 
 あと1点を返されるとトータルスコアで逆転される状況で、すでに奈良の穴を埋めるためにCBとして板倉滉を投入していた鬼木達監督は、66分には長谷川竜也、83分にはハイネルと攻撃のカードを切った。
 
 浦和戦では退場者を出したあとに中村憲剛をベンチに下げ、疑問符を投げかけられた指揮官はこの日の采配の意図をこう語る。
 
「守ってという形ではなく、どこかで攻める形を取らなくてはいけなかった。その可能性があったので、そういう(展開に対応できる)選手をベンチにも置きましたし、色々な状況を想定して戦いました。プラス、あの時点で延長というのは僕の中では考えられなかったですし、延長に入ったら厳しいなとも思っていたので、とにかく90分でケリをつけるための投入でした」
 
 鬼木監督は浦和戦を「学ぶべきことが多かった」と振り返る。そして教訓から導き出した交代策はズバリ当たった。仙台の攻撃に耐えて迎えた90分、ゴール前でボールを受けた長谷川が左足を一閃。トドメの3点目を突き刺したのだ。
 
【PHOTO】川崎 3-1 仙台|三好が鮮やかな2発! 逆転で8年ぶりの決勝へ
 
 中村憲剛も「相手が違うのもありましたし、スタジアムも等々力だった」と前置きをしつつ、浦和戦の経験を活かせたと胸を張る。
 
「引いたらやられるというのはみんな感じていたはず。ブロックは作って守りますが、どこかで相手の数的優位を消していく作業をしなくてはいけなかった。うちは攻めてなんぼ。11人の時より攻める回数は減りますが、どれだけ迫力を出せるのか。あの時(浦和戦)よりは遥かに出せた。一概には言えませんが、浦和戦の経験は間違いなくタメになりました」
 
“浦和戦のように引いて守るだけではダメ”。これはあの屈辱的な一戦からチーム全体の共通認識として根付いていた。
 
 キャプテンの小林悠は1点を返された際にピッチ上でチームメイトを集め、「しっかりとブロックを作りながら、3点目も取りにいこうと話した」と述懐する。「ここで引いてしまったら、ACLの浦和の時と同じ展開になってしまうと思った。しっかりとブロックを作るけど、もう1点取りに行く時は取りに行く」ということを徹底させたという。
 
 奈良退場後に緊急出場した20歳の板倉もこう語る。
「グラウンドに入った瞬間からみんなが良い言葉を掛け合っていた。1失点しましたが、自分も落ち着いて入れました。僕はあの試合(浦和戦)に出られなかったですが、チームとしてあの経験を活かせたと思います」
 
 ACLの敗戦は決して小さくない傷となったが、チームという幹を逞しくした。
 
「こういう経験値があるのは大きい。引き出しがひとつ増えた。今年のチームはこれまでのチームと違うなと感じる。タイトルに近づいていると実感を持って試合を重ねられているし、隙のない渋いチームになっている。(C大阪との)決勝は先だけど、良い準備をして、今できるパフォーマンスを思い切って出すだけ」
 
 中村憲剛の言葉にも力がこもる。風間八宏体制で4年半を過ごし、鬼木監督の下でブラッシュアップしてきたチームは例年以上の期待感を抱かせる。シルバーコレクターと揶揄された負の歴史に終止符を打つ時が、いよいよ来たのかもしれない。そんな想いを強くできるほど仙台戦のパフォーマンスは手応えの得られるものだった。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)