独身者でも疎まれずに有休を取るコツ、ありますか?(写真:tomos / PIXTA)

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【ご相談】
私の職場は、昨今の世の中の流れを受けて、以前に比べて残業は減ったのですが、有休が取りにくい雰囲気があります。いろいろ調べると、法律的には、有休の理由は会社に言う必要がないみたいですが、1カ月くらい先の有休を申請しようとすると、「何があるの?」と休みの理由や予定を必ず聞かれます。職場にワーキングマザーがいて、彼女は子どもの行事や体調を理由に、しばしば有休を取りますが、子どもが理由だと「頑張ってるね」という雰囲気でそのままさらっと取得。私の場合は、旅行だとか、すいている平日にテーマパークに行きたいだとか、「遊びなんでしょ?」と思われているようで、とても言いにくいです。独身だって、休みを取りやすくしてほしいと心から思います。職場から疎まれずに有休を取るコツ、ありますか? アドバイスいただきたいです。

言いにくいだけではなく却下されそう…


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有休って、働く人の権利なのに取りにくいですよね。前もってわかっている「人間ドック」「検査」や、「法事」「結婚式」などのイベント、それから、あなたが言うように「子ども関連」は、比較的、申請しやすいかもしれないですが、疲れがたまっていて休みたい、旅行や買い物に行きたい、なんていう理由だと、言いにくいだけではなく却下されそうで躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。確かに、家族がらみの予定のほうが「仕方ない」と受理されやすければ、独身者が「なぜ私たちはダメなの?」「理由を言いたくない!」と思うのもわかる気がします。

有休は入社した半年後から毎年付与されて、繰り越せるのは2年まで。それ以降は消滅してしまいます。法律的には、買い取りは違法とか、退職時の消化のさせ方とか、いろいろあるみたいですが、そもそも、働く人の権利であり、理由を問わずに取得できるはずの有休が使えない、それも独身者のリフレッシュ目的だと申請しにくい、というのは、法律というより社風の問題のほうが大きいのかもしれません。

昨今の「働き方改革」の流れの中では、長時間労働の問題だけでなく、この年次有給休暇の取得率についても、企業が取り組むべきテーマとして注目されていますが、まだまだ成果は出ていないようです。

働くからにはモーレツでなければ!という時代だった

私自身が会社員だった頃は、まだモーレツ社員が美徳な時代でもあったので、リフレッシュ目的で有休を申請する、という発想そのものがあまりありませんでした。実際、旅行はいちばん高い時期にしか行けないし、実家に帰るのもモロに帰省ラッシュオンタイムだし、比較的自由に長期休暇が取れる企業に勤める友人がうらやましいと思ったことは、もちろん何度もあります。

それでも、それほど「おかしい!」と思わなかったのは、働くからにはモーレツでなければ!と思い込んでいたからでしょうね。そんな私が管理職になり、メンバーからの申請を受けるサイドになった当初は、メンバー時代のメンタリティからまったく脱することができませんでした。特に忙しい時期に1週間連続で休みたいとか、月末や決算期などの最終日の有休申請だとかは、理由をせんさくした揚げ句に、却下したり別の日にしてもらったりと、ダメ上司の典型でした。今なら会社から厳しい指導が入るところで、未熟だったと心から思います。

ただ、振り返ると、そういった判断をしていたいちばんの理由は、メンバーにモーレツ社員像を押し付けたいと思ったからではなく、誰かだけが休んで誰かは働く、というバランスを欠いた状態が困ると思っていたからでした。今でも、かつての私と同じような対応をしてしまう管理職がいるとすれば、その人も「あなただけを特別にできない」と思っている可能性が高いと思います。

もっと言うと、普段の仕事ぶりが緩くて周囲に迷惑をかけがちだったり、量も質も今ひとつなレベルのメンバーだったりすると、「休んでいる場合なの?」などと思ってしまっているかもしれません。つまり、有休を取りたいという人の仕事ぶりと、全体とのバランスで、管理職の判断が変わってきてしまうことがある、ということです。

社風というと大きいけれど、要は申請を受ける管理職がどのような判断をする人かによって、有休の取りやすさが変わるわけです。だとすれば、自分がどのように評価されているかということと、自分だけでなく、ほかの人たち、職場はどういう状態か、ということをちゃんと見極めながら、振る舞いを考えたほうがおトクです。管理職の立場になって考えてみると、波風の立たない申請の仕方が見えてくるかもしれませんよ。

私は、30代後半になってから、「ちゃんと休んでちゃんと働く」という時代になってきたことが、メンバーだけでなく管理職である私にとってもいいことだなと強く思うようになりました。管理職である私自身が、家族の都合や子どもの行事などで休みを取りたいと思うことが増えた反面、自分だけ休むわけにはいかないというジレンマを抱え始めたこともあります。

また、実際問題、年齢を重ねて責任も重くなってくると、集中力の持続する時間が短くなり、オフやインプットの時間が必要だと思うことが増えてきていました。そして、評価軸が、絶対量から生産性に移行していく必然性も、実感していました。つまり、社会や時代の流れというだけでなく、管理職自身が、自身のマネジメントや実務において、メンバーの心身を守り、多様な力を発揮させることが必要だと実感している、ということなのだと思うのです。

あなた自身が、これらの状況を踏まえつつ、さらに仕事の質を上げるためにもきちんと休みたいと思うのだとしたら、とても真っ当だし、否定する要素は1つもありません。家族を持つ人より申請しにくい、と考える必要もまったくありません。管理職も含めた職場全体が「ちゃんと休んでちゃんと働く」という雰囲気になることのほうが大事なのです。実際には、そういう職場を作るのは難しいと思うかもしれないけれど、きっとほとんどの管理職は危機感を感じているはずです。ぜひ対話してみてください。

管理職とのコミュニケーションの取り方も大事

その際は、「自分だけ休みにくい」「取得理由を聞くのは法律違反だ」などと、対立構造を感じさせるようなコミュニケーションを取るのは、決して得策ではありません。あくまで職場全体のことを考えて、そして仕事をきちんとすること、生産性を上げることを前提に、一緒に考えていきたいと伝えてみましょう。あなた自身の株も上がり、管理職も本音を漏らしてくれて実現可能性の高いプランが考えられるかもしれません。

私がマネジメントしていた職場では、全員に1カ月ごとの有休取得予定日を設定してもらっていました。それをカレンダーで職場に共有しておくと、こちらも計画的に仕事を振ることができます。定例の会議などが毎日あると休みにくいので、もっと効率的に実施できないか考えることもできて一石二鳥でした。ギリギリの人数でやっていて、休んでいる場合ではない、と思われがちな職場でも、全員バランスよく休めれば、結構助け合えるものです。

さらに、予定があってもなくても「定期的に休みを取るルール」としていれば、取得理由のせんさくも減ってくるでしょう。ちなみに、私は個人的には、「今月の有休は何する予定?」と何げなく聞いたときに、「秘密です」と言われるより、「ぼーっとします」「彼氏と温泉です」と答えてもらえるほうが、「楽しんでね!」と心から思うことができました。このあたり、あくまで昭和です(笑)。

でも、たとえば、事前に「親が還暦なので旅行に連れていってあげたいのですが、いつくらいなら3日くらい休めそうでしょうか」と相談されると、「このあたりならいいと思うよ」と親身になって答えてしまう。要は、極端な話、直前になって「権利ですから、いついつに、3日休ませていただきます。理由によって判断が変わるのは違法です」と言われたら、管理職だって人間ですから、気持ちよく休ませてあげられない気分にもなる、ということ。

当面の有休申請は、なるだけ早めから、報告ではなく相談モードで。差し障りのない範囲で理由も伝えておくと「相談され感」は増すでしょう。かつ、当面のことと自分だけのことにせず、なるだけ職場全体を巻き込んだアクションにしていくことで、それ以降も休みが取りやすくなるはず。

ちゃんと休んだらちゃんと働く

そして、忘れてはならないのが、ちゃんと休んだらちゃんと働くこと、休んでいる間の周囲に配慮すること、でしょうか。くれぐれも、誰かのことを引き合いに出して「私だけ休めない」「あの人だけずるい」といった小さな話にして、あなた自身の評判を下げてしまわないように。

ここまで、「管理職にも危機感があるはず」という前提で話をしてしまっていますが、いろいろな会社の話を聞いていると、まだモーレツモードのままで、「若いうちは休みなしで働くものだ」といった発想から抜け出せない管理職も生息しているようです。

もし、会社全体は有休取得率にも注目し始めているのに、有休申請を却下し続けたり、申請すると叱責したりする上司なのだとしたら、その上司は人事やコンプラ部門などから目をつけられている可能性があります。ハラスメントのリスク分子ですから。内部告発とまでいかなくても、上司の上司や、人事部門などにアドバイスを求めてもいいと思います。管理職自身に「ハラスメント加害者」になるリスクを実感させれば、さすがに態度を変えるはずです。

さらに、会社全体の管理職、経営陣がこのタイプの場合は、簡単には変化は望めません。全員キレイにいなくなるタイミングを数えて、「後〇年」と我慢するか、いっそ転職してしまうか。まぁ、どうせ「今時の……」と思われているでしょうから、「いついつ、休みまーす」と明るく、規定どおりにたっぷり休んでしまって、「今時」をわからせてやるのも一手かも。

あなたのご相談は、多くの働く人がもやもや抱えている気持ちかもしれません。でも、何も行動しない人も多いのではないでしょうか。「どうせ変わらない」と思わずに、周囲を巻き込んでアクションしてみるといいと思いますよ。みんなも管理職でさえ、同じようにもやもやしたまま動けていないのだとすれば、変化のキッカケになるかもしれません。ぜひ、オフも充実させて、ますますオンも頑張ってみてください!