名作を保存するサンタ・マリア・デッラニマ教会 Santa Maria dell′Anima in Roma

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《ドイツ人、オランダ人、フラマン人たちの巡礼者を迎える慈善機関として1350年に建設された教会》

サンタ・マリア・デッラニマ教会(Santa Maria dell'Anima)は、イタリア・ローマのナボナ広場近くに建つサンタ・マリア・デッラ・パーチェの教会に組み込まれた同名の広場入口を共有し、パーチェ教会として位置づけされてもいます。教会としては独立したもので、1350年にドイツ人、オランダ人、フラマン人たちの巡礼者を迎える慈善機関として、また、宿泊施設として建立したその建物を1522年、サンタ・マリア・デッラニマ教会として、当時活躍していたアンドレア・サンソビーノやジュリアーノ・ダ・サンガロにより改修され、現在に至ります。

このサンタ・マリア・デッラニマ教会は、隣接して建つパーチェ教会と共有する形となったこの中庭はじめ、中世のままに趣きある情景を今に残す貴重な教会として知られますが、この庭に面して飾られている3つの大理石彫刻像はアンドレア・サンソビーノの数少ない作品のひとつであること、また、色付きのマヨルカ焼きで覆われた円錐型尖塔を抱く鐘楼は、パーチェ教会の回廊と共にブラマンテの手により完成されたことなど、ルネサンス期活躍した芸術家たちの作品を保存する教会としても注目されます。また、一時期は神聖ローマ帝国のローマの埋葬の場所ともなり、中庭にはローマ石棺などが保存され、多くの要人たちを迎えた格式ある教会としての名残りを見せます。

改修後、1542年11月25日に献堂されましたが、それにしても教会らしくない雰囲気です。また存在感が薄く地味で人の訪れの少ない、そして、パーチェ教会同様に観光客に知られていない寂しい教会でもあるのですが、でも、ここは重要な中世の遺跡として残され、ローマの人々が誇る穴場的な教会でもあるのです。

それはパーチェ教会の「ラファエロの壁画」とこの教会の聖堂内陣に描かれているジュリオ・ロマーノの1522年の作品「聖家族と諸聖人」(Sacra famiglia e santi)を自慢とし、この写真に写るアンドレア・サンソビーノの彫刻群や1611年のカルロ・マデルノの作品「主祭壇」などなど多くの美術品が保存されているからです。

この堂内に保存されているジュリオ・ロマーノはラファエロの弟子であり、ミケランジェロのマニエリスムの影響をかなり強く受けた画家です。そのデフォルメ手法には独特のものがあり、この教会はじめ、ローマの多くの建築物に大きな影響を与えた芸術家で知られます。ことに彼の第二の故郷マントヴァにおける活躍には目を見張るものがあり、ローマにあってもジュリオ・ロマーノのマニエリスムの作品は大きな反響を呼んだとされています。

ローマにはジュリオ・ロマーノの作品ばかりではなく、このような隠れた素晴らしいポイントが多々あります。また、3000年も以前の古代にカエサルが言った“永遠の都ローマ”は今もこうしてローマの各所に現存。それも古代から色褪せることのない素晴らしい遺跡群に交じって、華やかに咲き誇ったルネサンス芸術の粋まで揃えたローマです。

コルトーナの夢見た“舞台”は、ローマという街のそこかしこに在ります。画家以外にも建築家、舞台装飾家としても活躍した彼は、もしかしたら街全体を大舞台と想定し、そこに自身が創作した舞台装置を設け、ローマの街を装飾するのが夢だったのかもしれません。

《註:文中の歴史や年代などは各街の観光局サイト、取材時に入手したその他の資料、ウィキペディアなど参考にさせて頂いています》

(トラベルライター、作家 市川 昭子)