【コラム】湘南で輝く山田直輝、サッカー観を変えた調篤弔箸旅運な出会い

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 18歳で日本代表デビューを果たした。度重なる大ケガに行く手を阻まれた。たどり着いた湘南の地。彼は心地よさそうに走っていた。「ここでサッカーをしていれば、後退も停滞もない。絶対に成長できる」。確かな実感に日々が満たされる。山田直輝、いつのまにか27歳になっている。

 168センチの小柄な体も、動いてつなぐ湘南ベルマーレなら1トップが堂に入る。7日の明治安田生命J2リーグ、水戸ホーリーホック戦。2部に置いておくには惜しすぎる繊細な技術で前線にアクセントを刻んだ。2列目に下がった後半、自身もチームも尻上がりに運動量を上げる。GKの前に詰めてつぶれ役を演じて野田隆之介の先制点に貢献。右でくさびになって高橋諒の2点目が生まれた。3点目はドリブルで突っかけてラストパス。オウンゴールを導いた。

 タイミングや角度を窮め、ひたすら走る。ボールは汗をかかないと言うけれど、人が走らなければボールは動かない。そんな信念で6季目の指揮を執る諜裁監督に、移籍3季目を迎えた山田は新たな役割を与えられている。「以前(古巣の浦和レッズ時代)なら組み立てに重きを置いていたのが、ここではゴール近くで最後の仕事にこだわるようになった」「1−0のまま安全に勝つより、2−0、3−0と攻めたい。その方が、選手にとっても、見る人にとってもおもしろいと思うから」

 結果だけではない。中身でも観客に喜びを。調篤弔暴于颪辰堂蠕犬┐心蠅い澄「僕らが成長する姿を見たいのが弔気鵝今日の試合前も『あと7試合しか、お前らが成長できる時間はない。このメンバーでサッカーできるのは今季しかないんだぞ』と。頑張ってJ1にいくぞ、とかではなくて。そんな風に指導されて考え方が変わった」

 試合前のミーティングでは、イタリア・セリエAのアタランタ対ユヴェントスの映像が流された。2点差を追いついたアタランタに自分たちをかぶせ、語りかけられた。「この2チームは予算規模が違う。アタランタはいつもリーグ中位から下位で、選手を育てて移籍させて、を繰り返すんだけど、ユーヴェより走るんだ。お前たちはアタランタのようにプレーしなきゃいけないよ」

 山田はこう受け取った。「方向性ですよね。例えるならバルセロナをめざすか、ドルトムントやアトレチコ・マドリードをめざすか。弔気鵑聾綣圓鯀ぶ。感動を与えられるのは後者だと僕も思う。どちらが正しいか、ではなくて。僕も昔は前者の方が楽しいと思っていたけど、気づきました。後者はね、勝った時のやりきった気持ちがすごい」

 2−0、3−0をめざした方がおもしろいという前述の言葉とそれは矛盾しない。上手下手じゃない。前へ前へ。ひたむきさこそが観客の胸を打つ。J1だろうとJ2だろうと関係なく、色あせぬ存在価値を放つ湘南、調篤弔箸旅運な出会い。早熟で悲運な才能が至った境地。家族のサポートや練習前後のきめ細かい体調管理も相まって、充実のシーズンを送る。今季の出場33試合、浦和にいた19歳の頃の20試合を大きく上回る自己最多だ。この数字もまた山田の悲運を物語ってしまうのだけれど。

「いや、まあ、気は抜けないんで。弔気鵑盡世辰討い泙靴燭韻鼻◆慷曚呂い陳世爐わからないから』って。気は抜けないです」

 とうの昔に底は打った。陽は昇り続ける。

文=中川文如