急性腎障害について医師が解説

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 日本以外にも世界的に急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)の発生数が上がっている。日本では今まで明確な診断基準がなかったが、昨年12月に日本腎臓学会、日本透析医学会、日本集中治療医学会など5つの学会が合同で急性腎障害の診療ガイドラインを策定した。

 診断基準については、アメリカの腎臓学会が作成した分類に準じた診断基準は3つのステージに分類され、従来の急性腎不全といわれていた病態はステージ2と3の重症例を指す。また発症リスクや早期診断法、予防や治療、長期のフォローアップについても言及している。

 ガイドライン作成委員長を務めた高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科学の寺田典生教授に話を聞いた。

「AKIは何らかの理由によって急速に腎機能が低下する症候群を指します。高知大学病院の過去約10万人の患者さんのデータを分析したところ、検査や手術を含む入院患者の11.3%がAKIを発症しています。他に年齢別では、60歳以上で14%が発症していました。AKIが急増している背景には高齢化と糖尿病や慢性腎臓病の増加、検査や治療法の進歩が関係していると考えられます」

 急性腎障害は、その発症原因により腎前性と腎後性、腎性の3つに分けられる。腎前性というのは脱水や発熱、手術での出血などが原因で腎臓に入る血流が減少し、腎臓に血液が十分補給されないことで障害が起こるものだ。脱水であれば補水を、出血では輸血などで血流量を増やしながら治療を行なう。

 腎後性の原因は尿路閉塞や骨盤内の腫瘍など、腎臓から出ている尿管や膀胱での障害で起こるもので、閉塞の解除が治療法となる。そして、腎臓の慢性炎症や膠原病、血管炎、急性糸球体腎炎、間質性腎炎など内科的な病態が原因で起こるのが腎性の急性腎障害だ。治療は原因となっている病気に応じて治療を行なう。炎症が起こっている場合はステロイドなど免疫抑制薬を使用する。

「AKIで注意が必要なのが、高齢者です。例えば熱中症による脱水やインフルエンザの発熱などがきっかけでAKIを発症することがあります。また高血圧や糖尿病治療薬、膝、腰痛に対する鎮痛薬の長期服用なども発症リスクです。AKIは長期的な予後が悪いことがわかってきており、治っても発症後3か月、1年、3年と長期的な経過観察が大切です」(寺田教授)

 予後が不良な原因を解明すべく多くの研究がなされたが、腎臓の線維化と慢性的な虚血が指摘されている。尿細管は毛細血管に囲まれ、そこから酸素を受けていて、要はAKIで尿管細胞がダメージを受けると次第に線維化が進み、毛細血管からの酸素供給が低下し、慢性的低酸素と炎症が起こり、慢性腎臓病になる。

 AKIは慢性腎臓病の原因であり、長期的な慢性腎不全から透析へと辿る例もある。AKIは早期発見と治療を怠らないことが肝心だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2017年10月13・20日号