サッカーを始めたばかりの子どもたちだと、みんながボールに群がってしまう、いわゆる“団子サッカー”になりがちだ【写真:Getty Images】

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【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」--“団子サッカー”にさせないための環境整備

 今季から小学1年生の次男はFユーゲント(U-8)。ドイツでは生まれ年でチーム分けが行われるので、小学1年生と2年生が一緒になる。最初の練習時にコーチが子どもたちにこんなことを言っていた。

「今日からみんなはFユーゲントだ。これまでのサッカーからちょっと成長して、次のステージに進めるように頑張ろう」

 サッカーはポジショニングスポーツとも言える。それぞれがバラバラな動きをするのではなく、フィールド上にある約束事を少しずつ身につけていくことが大切だ。

 ミニゲームが始まるとコーチは「そんなにごちゃごちゃしてたら、ボールもらえないよ。広がってごらんよ」としきりに声をかけるが、子どもたちはまだピンとこない。子ども的には広がってと言われたから広がってみた。でも外から見た、その動きは1メートル後ろに下がったくらい。コーチが頭を抱える。

 でもそれが当たり前なのだ。「広がる」という言葉が自分がすべき動きとリンクしていないし、リンクしたところで、広がることで自分がサッカーに関われている、サッカーが上手くなっているという実感がまだ乏しい。「何のために?」が納得できないと、勢い良くサッカーはできない。

子供が答える「楽しい」の言葉、心の底から感じたかどうかは考えるべき

 サッカーを始めたばかりの子どもたちだと、みんながボールに群がってしまう、いわゆる“団子サッカー”になりがちだが、そもそも団子サッカーそのものが悪いわけではない。子どもの意識がボールに向かうのが普通なのだから。我慢強く、少しずつ取り組んでいけばいい。

 でも、そのなかでサッカーというスポーツへの入り口として、団子サッカーになりにくい、なっても自分たちで攻略しやすい環境を整えることが、教える側にとってはとても重要なのだと思う。GK込みで5対5、フィールドの大きさも20×15メートルから30×20メートルくらいのサイズと規模が、ドイツで幼稚園から小学校低学年までの主流となっているのにはそうしたわけがあるからだ。

「今までのやり方でも別に問題ないよ。子どもたちに『楽しかった?』と聞くと、『楽しかった』と答えている」

 そういう声もある。いろんなジャンル、いろんなカテゴリーで聞く。そういえば僕もこの前、同じミスをしてしまった。でも本当に子どもたちが、心の底から「楽しい」を感じたものかどうかは考えるべきだ。実はそうではないことも多いというのを知らなければならない。彼らがそう答えるのは、そう答える以外に選択肢がないこともある。あるいはもっと楽しむことができることを知らないからだ。

多くのことを示唆するドイツ指導者の声「間違った理解での伝統を続けるべきではない」

 本当に「楽しい!」と思った子どもはこちらが何も聞かなくても向こうから、いかにそれが楽しかったかを何度も何度も止めどなくずっと話してくる。

「子どもたちにとって何が大事で、どうするのが正しいのかを知る。間違った理解での伝統を続けるべきではないのだ」

 ミッテルライン州サッカー協会専任指導者マルクス・シェンクさんの言葉は、多くのことを示唆している。僕らはその意図を、正しく受け止めていきたい。

◇中野吉之伴(なかの・きちのすけ)

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。