毎年、冬が近づくとインフルエンザ注意が呼びかけられます。ワクチン接種のお知らせもありますね。インフルエンザはウイルス感染によって引き起こされます。A型、B型などがあり、同じ型でも毎年少しずつ性質が違うので、ワクチンも毎年打つように言われますよね。

「いつもと違う」症状に注意

毎年、冬が近づくとインフルエンザ注意が呼びかけられます。ワクチン接種のお知らせもありますね。インフルエンザはウイルス感染によって引き起こされます。A型、B型などがあり、同じ型でも毎年少しずつ性質が違うので、ワクチンも毎年打つように言われますよね。

でも、これほどインフルエンザを特別視しているのは日本だけじゃないかなと思います。海外ではインフルエンザは「かぜの一種」という認識に近い。もちろん、かぜよりも症状は重いし、体力のない人にとっては脅威になります。インフルエンザが特別視されるのは、お年寄りなど免疫力の弱い人にとっては死に至る危険もある病気だからです。ふつうに体力のある人であれば、しばらく安静にしていれば治ります。かぜですから。

インフルエンザに罹患したことのある人ならおわかりだと思いますが、かぜとインフルエンザでは、初めから自覚症状が違います。はじめは「かぜかな?」と思っても、「いつもとは明らかに違う」症状があります。いつもより熱の上がり方が急激であるとか、体中が痛いとか。このような “劇症”が出たら、インフルエンザを疑いましょう。

早めの「かぜ薬」はNGです

かぜの引き始めは「早めのかぜ薬」が功をそうしている人もいると思いますが、インフルエンザかな?と思ったら「早めのかぜ薬」は危険です。

インフルエンザのこわいところは、インフルエンザ脳症という重篤な症状が起きることです。主に幼児に多いのですが、2009年〜2015年の6年間で748例も報告されています。脳症のリスクを高めると考えられるのが、間違った解熱剤の服用です。

インフルエンザで病院から処方される解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。それ以外は認められていません。市販のかぜ薬にはイブプロフェン、エテンザミド、アスピリンなどの解熱剤が含まれたものが多いです。また鎮痛剤として知られるロキソプロフェン、ジクロフェナクもNGです。

病院まで行くのもつらいほど症状が重いときは、市販薬で済ませたいと思うかもしれません。しかし、市販のかぜ薬にはインフルエンザ脳症を引き起こす危険性のある解熱剤が使われているかもしれないので、安易に飲んではいけません。インフルエンザかな?と思ったら、まず病院で診察を受けましょう。

タミフルは「特効薬」ではない

インフルエンザの薬といえば「タミフル」「リレンザ」が知られています。一時期、服用後の異常行動が続いて報道されたことでも知られていますね。

「タミフル」「リレンザ」は、インフルエンザウイルスをやっつける“特効薬”ではありません。ウイルスが体内で「それ以上は増えない」ようにする薬です。インフルエンザウイルスを殺す薬は世の中にないのです。ちなみに「抗生剤」が効くのは細菌であってウイルスではありません。かぜやインフルエンザには効きませんよ。

インフルエンザウイルスの数は感染48時間後にピークになるといわれています。ですから発症後24時間以内に「タミフル」を飲めば、ウイルスの増殖を抑えられます。5日分、処方されるので、きちんと飲んで安静にしていましょう。熱が下がっても体内にウイルスが残っているため、5日間飲まないといけません。

しかし発症後48時間経過したら「タミフル」は効果がありません。その時点で診察を受けても「タミフル」は処方されず、解熱剤(アセトアミノフェン)を処方されます。これは熱が高くて苦しければ服用すればいいし、寝ていれば何とかなると思えば、飲まなくてもいいのです。かぜと同様、発熱することで免疫力を上げ、ウイルスをやっつけている状態ですので、熱が高い方がウイルスを速くやっつけられます。

インフルエンザはただのかぜと違って、激しい症状が出ることがほとんどです。「いつものかぜと様子が違う」と思ったら、「とりあえず、かぜ薬」は禁物です。

次回はインフルエンザ・ワクチンについてご説明します。

いつもより急激に高熱が出たら要注意。インフルエンザにかぜ薬はNG。



■賢人のまとめ
インフルエンザの症状は高熱が出る、急激に発症する、体中が痛いなど、かぜよりも劇症です。こうした症状が出たら、安易にかぜ薬を飲んではいけません。インフルエンザのとき、飲んでも危険のない解熱剤はアセトアミノフェンだけですが、市販のかぜ薬には他の解熱剤も入っているものが多いからです。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)など。