リンパ節がインクで真っ黒に(画像は論文掲載誌の一部より)

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脇の下にあるリンパ節の腫れを訴え病院を受診した女性を詳しく検査したところ、タトゥーのインクが流れ込み炎症を起こしたリンパ節が膨らんでいた――。

2017年10月3日、米国内科学会誌「Annals of Internal Medicine」に豪ロイヤル・プリンス・アルフレッド病院の医師らが報告した奇妙な症例報告が掲載された。皮膚の表面に描かれたタトゥーのインクがリンパ節まで流れ込むことがあり得るのだろうか。

リンパ節がインクで真っ黒

報告によると、今回の症例は豪州在住の30代女性に起きたものだ。女性は受診する2週間ほど前から両脇の下に奇妙なふくらみがあることに気がつき、違和感を覚えた女性は病院を訪れた。

診察をした医師は女性に発熱などの感染症の症状はなく、感染による炎症の可能性は低いと推測。血液がんの一種でリンパ節に腫瘍ができる「リンパ腫」ではないかと疑い、CTスキャンを実施した。

すると、肺の近くにあるリンパ節まで膨らんでいることが確認され、すぐに組織サンプルを採取して病理検査を行ったという。

しかし、血液がんの専門医クリスチャン・ブライアント医師が組織を顕微鏡でチェックしたところ、衝撃の事実が判明する。リンパ節に腫瘍はなく、代わりにインクで黒く染まった細胞組織が確認されたのだ。

女性の体を確認したところ、背中には15年前に入れたという大きめのタトゥーが、左肩には2年前に入れたタトゥーがあり、背中のタトゥーはやや薄くなっていた。ブライアント医師らは手術で女性の脇にあったリンパ節を切除。改めて確認すると、インクで真っ黒になったリンパ節が出てきたという。

念のためリンパ節の炎症度合を詳しく分析したが、リンパ腫などのがんによる炎症とは異なるパターンで、インクの成分を分析すると背中のタトゥーのものと一致。やはり、タトゥーのインクが流れ込んでいたのだ。

タトゥーのインクが皮膚上で凝集してしまい、「ほくろのがん」とも言われる皮膚がん「メラノーマ」と誤認された例はあるが、リンパ節にインクが蓄積したという症例は初めてだという。

ブライアント医師は「皮膚のインクが時間をかけて体内に浸透。インクを異物と判断した免疫細胞が色素を取り込み、リンパ節に蓄積してしまったのではないか」と推測しているが、別の医師からは「インクの色素は免疫細胞が取り込むには大きすぎる」と異論も出ており、詳細な理由は不明だ。

それほど心配する必要ないか

今回の症例報告についてブライアント医師は「一般的な症例なのかはわからない」としつつ、

「大半のタトゥーを入れている人には、それほど心配する必要がない症例だと思われる。今回の女性も、今後大きな問題が生じるとは考えにくく、その他のリスクを気にすべきだろう」

と指摘している。

タトゥーには不衛生な環境で施術された場合の感染症リスクのほかに皮膚の炎症、赤色のインクを使用した場合アレルギーを発症する例などがある。しかし、タトゥーは視界から隠れる位置に入れてあることが多く、本人も含めて異変に気がつかないことも少なくない。

タトゥーを入れているという人は、施術部位周辺の皮膚などに異変がないか確認してみる必要があるかもしれない。