ニュージーランドとの親善試合での日本代表を分析した宮澤ミシェル氏

写真拡大

サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第16回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど、日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、W杯へ向けて強化試合の続く日本代表のニュージーランド戦を振り返る。若手はもちろん、ベテランも含めた新戦力の起用や戦術の成熟など課題は山積だ。

******

ニュージーランド戦での日本代表は、キックオフ直後の立ち上がりからよく走ったし、ポゼッションもできていた。また、判断も早く、すごくいいテンポでニュージーランドゴールへガンガン攻め込んでいった。内容は間違いなくよかったけれど、フィニッシュのところを決めきれなかった。

最後のシュート精度をいかに高めていくかが重要なところだけれど、速いリズム一辺倒で攻め込んでいたら、ゴール前では余裕がなくなってしまうのも当然のこと。もちろん、速いリズムの攻撃がすべてダメなわけではない。ただ、攻撃のリズムが一本調子になってしまったことで、相手が日本代表の攻めのリズムに慣れてしまい、次第にチャンスを作り出すことができなくなっていった。

テンポが速いサッカーは、相手からすると対応が難しい反面、自分たちもプレーに一切のミスが許されないので余裕がなくなってしまう。そのため、ゴール前でシュートミスに繋がりやすいといえる。

ニュージーランド戦で試合開始直後から日本代表の攻撃陣が圧力を高めて相手ゴールに迫ることができていながら、力んで点を決めきれなかった要因は、ハリルホジッチ監督が選手たちを煽(あお)りすぎたからではないかと私は思っている。

日本人選手は真面目だから、監督に言われなくても、W杯出場のためにいいプレーを見せなくてはならないことがわかっている。そこへ、監督に加えてメディアからも「W杯に向けてのサバイバル」と煽られて、選手は否応なく精神的に入れ込んだ状態で試合に臨んでしまった部分があったはず。「ハリルホジッチ監督はもっと日本人の気質をわかってもらいたい」というのが率直な感想だ。

例えば、もしこれが会社だったら、社長が「サバイバルだ!」と社員を煽っていることと同じようなもので、それではマネジメントがうまくいかないことは理解してもらえるのではないだろうか。

今回のニュージーランド戦は、攻撃で緩急をつけることができなかったし、試合開始直後から縦に速い攻撃を単調に繰り返した。W杯最終予選初戦の埼玉スタジアムでUAEに負けた時と同じ戦い方をしている印象を受けた。

「縦に速い攻撃」をより効果的なものにするには「遅い攻撃」も織り交ぜないといけない。ゆっくりパスを回して相手を引き出して裏を取る攻撃もすることで、相手は速いリズムに対応できなくなるからだ。

現在の日本代表にそうしたリズムの変化をつけることができる選手がいないわけではない。後半から出場した乾貴士が左サイドで相手守備を混乱させるドリブルやプレーを見せたように、武藤嘉紀や久保裕也らもそうしたプレーが十分できるはずだ。実際、武藤嘉紀は1トップの大迫勇也との連係からボールを前線で受けて何度となくチャンスを作り出した。確かにシュートはなかなか決まらなかったけど、崩す形は間違いなくよかった。

香川真司も久しぶりにキレのある動きを見せてくれた。代表で生き残るという危機感が強すぎたのか、最初から飛ばしたせいもあってシュートの場面では香川らしい余裕がなかったのは残念だったが、やはり存在感があったね。

その香川に代わって途中出場した小林祐希はピッチを左右に動きながらボールを散らして、ピッチを広く使いながら攻撃にアクセントをつけてゲームを作っていった。香川とはまた特徴の違うプレースタイルは次に期待したくなるものだった。

スタメンの選手たちは序盤から飛ばした影響か、後半に入ったら運動量が落ちていたが、小林祐希や乾貴士ら交代出場の選手たちが、試合開始からだとどういったプレーをするのかも見たかったね。

今回のように、力の劣る相手に苦戦すると叩くメディアもあるようだけれど、新たな選手をテストする試合では勝敗に寛容になってもいい。もちろん代表はどんな相手であれ勝たないといけないが、来年のW杯に向けて成長するための意図や狙いがしっかり見えていれば、結果よりも選手の見極めや戦術のチェックなどを重視すべきだ。

現在の大迫がどれほど1トップとして素晴らしいかはわかっているし、長友佑都のプレーも十分すぎるほど知っている。だからこそ、新しい選手を日本代表に招集したのならば、積極的にスタメンで使ってもらいたい。

1トップの杉本健勇や左サイドバックの車屋紳太郎、センターバックでは吉田麻也が出られない時を想定した布陣などを試してほしかったね。その上で高いレベルでレギュラー争いをしながら、日本代表チームが成熟していくのが理想的だ。そこを考えつつハリルホジッチ監督が次のハイチ戦、そして11月のブラジル戦、ベルギー戦で強化を進めてくれることに期待したい。

(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)

■宮澤ミシェル

1963年 7月14日生まれ 千葉県出身 身長177cm フランス人の父を持つハーフ。86年にフジタ工業サッカー部に加入し、1992年に移籍したジェフ市原で4年間プレー。93年に日本国籍を取得し、翌年には日本代表に選出。現役引退後は、サッカー解説を始め、情報番組やラジオ番組などで幅広く活躍。出演番組はWOWOW『リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』NHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』など。