「せどらー」として活動する大原与幸氏(左)と大原晴美氏(右)

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働きながら「副業」で稼ぐにはどうすればいいのか。いろいろなところに埋まっている「ビジネスチャンス」について、当事者に話を聞いた。なかには「もうサラリーマンには戻れない」と語る人も。ネットを使った副業で稼ぐ「コツ」とは――。

■趣味が高じて「せどり」が本業に

もともとフリーマーケット好きで、ヤフーオークションで掘り出し物を探すのも好きだった大原晴美さん(33歳)。趣味が高じて本業となったのが、仕入れた商品をインターネットで転売する「ネットせどり」だ。

せどりは古本業界の用語で、店頭で相場より安く売られている本を買い付け、しかるべき値段で転売することを意味する。

晴美さんは主にアマゾンを活用し、試行錯誤の末におもちゃや雑貨などの人気商材を掘り当てた。

「せどり=古本というイメージがありますが、私は得意ではないので本は扱いません。おもちゃは2人の子供(現在は8歳と5歳)という“消費者”が目の前にいて手がけやすかったのです」

2011年の東日本大震災後、地元・横浜での子育てに不安を抱いた晴美さんは「私がネットで稼ぐから」とサラリーマンだった夫の与幸さんを説得。翌年沖縄に移住してメルマガのアフィリエイト(商品を紹介し、購入につながった場合に報酬を得るビジネス)を始めた。

なかなかアフィリエイトの収入は伸びなかったが、同年11月から「アマゾンせどり」に挑戦したところ、最初から大きな売り上げを記録したのだ。

「クリスマス商戦期だったのも幸いし、11月は49万円、12月は160万円と売り上げが拡大。以後コンスタントに売り上げるようになりました」

■鉄則は「時差で稼ぐ」

沖縄時代は、夫婦でショッピングモールや家電量販店、大型玩具店の売り場をひたすら回り、商材を探した。

「家電量販店でも、ワゴンコーナーに値下げしたおもちゃが大量に出ている日があります。そんな品が意外な高値で売れることもあるんです」と夫の与幸さん。

ネットせどりを手がけて気づいた鉄則の一つに「時差で稼ぐ」がある。

「『妖怪ウォッチ』が大ブームだったときは、関連玩具が軒並みプレミア価格となっていました。でも沖縄はまだテレビ放送前で人気がなく、商品は定価で販売されていた。そこで定価3000円ぐらいでまとめ買いして、5000円の値付けにしたら飛ぶように売れていったのです」と晴美さん。

横浜に戻った現在では、地域の季節差を活かすこともある。

「たとえば扇風機は9月に入ると需要が一段落するので、横浜の家電量販店では値下げをします。でも沖縄のような南国はまだ暑いため、値下げ前の価格でも売れるのです」(同)

■ネットせどりで稼ぐ三カ条

晴美さんに、ネットせどりで稼ぐ三カ条を教えてもらった。

(1)先入観を横に置く
「こんなものが売れるの? と思った商品が売れることも多い。自分の先入観を横に置き、見えない消費者と向き合う意識が大切です」

(2)足で稼ぐ姿勢を忘れずに
「自分なりのコツをつかむまでは足で稼ぐ必要があります。私たち夫婦もこまめに実店舗を回ることで、ノウハウが身に付いていったのです」

(3)時間が足りない場合は工夫する
「店員さんと仲良くなって、時には情報を教えてもらうこともあります。他の店に在庫があれば取り寄せてもらうようにすれば、系列店をはしごする時間が節約できます」

現在は月平均100万〜150万円を売り上げ、利益率が20〜25%だという大原家。最近では8歳の長女も仕入れに興味を持ちつつあるという。

(経済ジャーナリスト 高井 尚之 撮影=大杉和広)