子どもの歯の守り方は?(depositphotos.com)

写真拡大

 赤ちゃんの口には「虫歯菌」がいないことを知っているだろうか? 小さい子どもが虫歯にかかるのは、実は母親や周囲の人間から「感染」するせい。スプーンやコップを共有する、口にキスをするといったことで菌は感染する。

 ......と、ここで赤ちゃんの可愛さに負けてチューした記憶を持つ人は罪悪感にかられるかもしれない。だが、虫歯菌と戦う術はある。安心してほしい。

虫歯をつくるのは「ミュータンス菌」

 口の中に存在する細菌の働きにより歯が柔らかくなり、ついには崩壊してしまうのが「う蝕」、つまり「虫歯」だ。

 虫歯の原因となる細菌が「ミュータンス菌」だ。ミュータンス菌は唾液を介して感染し、歯に残った糖分を餌に、酸を作りだすことで虫歯をつくる。一度口の中へ入ってしまえば生涯常駐するミュータンス菌だが、その餌をなくしてしまえば菌は数を増やすことができず、結果、歯を溶かす力も弱まる。

 この細菌をコントロールすることで虫歯を予防することが可能となる。

 虫歯菌と戦うのに最も有効なのは「歯磨き」や「歯間掃除」の物理攻撃だ。虫歯菌が酸を作る場所は「プラーク」や「バイオフィルム」と呼ばれる歯の表面にできるネバネバ。これを丁寧にブラッシングで取り除き、菌の住む場所をなくしてやれば、虫歯にならないというわけだ。

歯磨きや歯間掃除は睡眠前に効果がある

 歯磨きは、乳歯の生え始める6カ月頃から始められる。このときは歯ブラシではなく、お湯や水で濡らしたガーゼや綿棒を使い、歯の汚れを拭き取るだけでいい。

 口の中を触られることに慣れさせることで、いずれ開始する歯磨きの練習になる。歯ブラシを使ったケアを始める目安は、上下の前歯4本ずつが揃う頃。最初は赤ちゃん用の歯ブラシで軽く触れる程度でかまわない。

 乳歯が生えそろう2歳後半から3歳前半、スプーンなどを持てるようになった頃合いで、歯ブラシを自分で持たせる。最初はまだ上手に磨けないので、親が仕上げをする必要がある。

 歯と歯の間をきれいにするには、歯間ブラシ(デンタルフロス)を使う。使い始める頃合いは、歯磨きと同じ2歳後半頃から。

 乳歯は将来の永久歯のために、いわゆる「すきっ歯」状態になっており、食べカスが入り込みやすくなっている。子どもの虫歯は、奥歯のほか、歯間にできることも多いので、仕上げ磨きの後に行う。

 歯磨きや歯間掃除は毎食がベストだが、虫歯ができやすいのは夜眠っている間なので、寝る前にしっかり手入れをすれば効果がある。

 虫歯予防に最適な歯磨きと歯間掃除だが、磨き残しなど、不安が残る向きもあるだろう。そのときには、物理攻撃をサポートする「補助攻撃」を選択しよう。

活用したい「フッ素」と「キシリトール」

 毎日の歯磨きにプラスして行う戦術のキーワードは、「フッ素」と「キシリトール」の2つ。これらには大人にも通用する虫歯予防効果がある。

 フッ素は元素のことであり、虫歯予防に使われるのは「フッ化ナトリウム」。化合物として、「フッ化物」と呼ばれている。歯科的に見るとフッ化物には次の3つの効果がある。

〇世罵呂韻討靴泙辰浸の表面を修復する(再石灰化)
∋世剖い歯を作る
C郢菌が酸を作るのを抑える

 これらの効果を得るためには、歯磨きをしてきれいになった歯に、フッ化物を吸着させることが必要だ。子ども向けの歯磨き粉(ジェルやペースト)のほとんどは「フッ素配合」と明示され、フッ化物が入っている。

 これを年齢に合わせた適量を歯ブラシにつけて仕上げ磨きをすればいい。歯磨きを嫌がる子どもには、スプレー式の製品も使える。

 4歳〜5歳でうがいが上手にできるようになれば「フッ化物洗口」ができる。洗口液を口に含んで1分間のぶくぶくうがいをする方法だ。保育園や学校などの集団で行うところもある。これらの市販されているフッ化物配合は「低濃度」のもので、毎日のケア向けの商品だ。

 これに対して、中期的な効果を得る「高濃度」のケアは、歯科で行う「フッ素塗布」がある。フッ素塗布は、1歳児から行える予防法だ。溶液タイプの高濃度のフッ化物を綿棒などで直接歯に塗っていく。フッ素による効果は一度では得られないので、年2回以上の定期的な塗布が必要だ。
 
 この他、奥歯の溝をプラスチックやセメントで物理的に「蓋」をする「シーラント」という予防法を行う際にフッ化物を応用し、再石灰化を促進することもある。

 一方、「キシリトール」は天然の代用甘味料。いちごやカリフラワーにも含まれる成分で、市販の商品に使われているのは、白樺や樫の木、トウモロコシの芯を加工して作られているもの。キシリトールの効果は、以下の3点。

〇に歯垢がつきにくくなる
▲潺紂璽織鵐攻櫃瞭きを弱める
B単佞諒泌を促すことで酸を中和し、歯を強くする

 これらは、毎日、長期間摂取してはじめて効果を発揮するので、歯磨きをして食べ物のカスを取り除いた後に、キシリトールを摂るという習慣づけをしたい。

 気をつけねばならないのは、市販のガムやタブレットにはキシリトール成分が低いものや、キシリトール以外の甘味料が使用されているものがあること。低量のキシリトールでは効果は薄くなり、また他の甘味料が使われていればそれが虫歯の原因になることも。

 歯科で販売しているキシリトール100%のガムを購入するか、市販のガムなどでシュガーレスか糖類0gでキシリトール濃度の高いものを選ぶのがいい。摂取の際も、なるべく口の中にとどめ、キシリトールが溶けた唾液を口腔全体にいきわたらせるようにするのがポイントだ。

「フッ化物」「キシリトール」にもデメリット

  実は「フッ化物」も「キシリトール」も、良い効果だけがあるわけではない。

 キシリトールは大量に摂取すると下痢を引き起こすことがある。フッ化物に関しても、高濃度のものを大量に摂ったり、低濃度のものを恒常的に摂ることで中毒症状を起こしたケースがある。

 歯科医師の間でも、使用の是非について議論が続いているのが現状だ。なにを使って子どもの歯を守っていくかは、最終的には、親が判断していくしかない。

 文部科学省が発表している「学校保健統計調査」によれば、子どもたちの虫歯の数は年々減少している。一方、兵庫県内の小中高校、特別支援学校が行った歯科検診で、"虫歯が10本以上ある"<口腔崩壊>を起こしている生徒が346人もいるという報道もあった。

 現実的に考えて、ミュータンス菌の感染を防ぐことは不可能だが、手入れを怠らなければ虫歯が進行することはない。我が子へのチューだけでなく、毎日の歯磨きも愛情表現となるはずだ。
(文=編集部)