高橋一生さんはこれまでも実力派俳優としてドラマフリークの支持を集めていましたが、今年1月から「カルテット」(TBS系)、「おんな城主 直虎」(NHK)に出演したことで、その人気は全国区へ。テレビ誌や女性誌などで高橋さんを扱った特集が何度となく組まれたほか、オリコン発表の「上半期ブレイク俳優ランキング(男優)」1位に輝きました。しかも10〜50代の各年代で1位を獲得したそうですから、いかに評価を集めているかがわかります。

 しかし「カルテット」は3月に終了し、「おんな城主 直虎」も8月20日の放送で、高橋さん演じる小野政次が死にました。以来ネット上で「政次ロス」を嘆く声が飛び交うなど、高橋さんを求める声が上がり続けています。ただし、そうした声も間もなく喜びの声に変わるでしょう。政次の死から1カ月あまり、高橋さんが今秋スタートの連ドラ3作に出演するからです。

朝ドラで「五代さま現象」再燃必至

 1本目は、2日にスタートした朝ドラ「わろてんか」(NHK、月〜土曜午前8時)。高橋さんはヒロイン・藤岡てん(葵わかな)と、後に夫となる北村藤吉(松坂桃李)との三角関係になる青年実業家・伊能栞を演じます。

 京都や大阪のコテコテな男性ばかりの中、伊能は「生まれも育ちも東京」という王子様キャラ。「てんの結婚相手になるはずだったが、てんが藤吉を好きだと知って後押しする」という器の大きさを見せるほか、仕事の面でも手助けをしていくようです。そのイメージは、まさに「あさが来た」(NHK)の五代友厚(ディーン・フジオカ)。同作は「五代が白岡あさを優しく見守り、手を差し伸べる」シーンで女性たちの心をつかみましたが、今作でも似た現象が起きそうです。

 注目ポイントは、現在36歳の高橋さんと19歳の葵さんが、どう恋のムードを作り出すか。17歳もの年齢差を埋めるために、高橋さんが、これまであまり見せなかった甘いムードを醸し出すのでは……と期待されています。

 2本目は、23日スタートの「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?」(フジテレビ系、月曜午後9時)。高橋さんは、市議を目指すヒロイン・佐藤智子(篠原涼子)と選挙戦で議席を争うライバル・藤堂誠を演じます。藤堂は代々続く政治家一家の次男として育ち、将来は総理大臣も夢ではない市政のプリンス。しかし、政治家一家に生まれたことの葛藤を胸に抱き、「誰も知らない裏の顔も持つ」という、ひとクセある設定が気になります。

 今から約2年前、高橋さんは同じ政治を扱った「民王」(テレビ朝日系)で、総理大臣秘書・貝原茂平を演じていました。貝原はクールで感情の起伏が少ないキャラでしたが、今作の藤堂はエリートゆえの清廉さと危うさを併せ持つキャラだけに、心の機微をどう表現するのか、ワンランク上の演技力が求められます。また「選挙のために庶民的な振る舞いをしようとするが、どうしてもエリート風になってしまう」などの細かい演技も期待できるでしょう。

 もう一つ忘れてはいけないのは、藤堂が「ヒロインの相手役」というポジションでもあること。ヒロインの智子は夫と幼児がいるのでいきなり恋に落ちることはないでしょうが、どのように接しながら絆を育んでいくのか。「好き」「信じてる」などのセリフに頼らない繊細な演技を見せてくれそうです。

「良い意味で代表作がない」のが強み

 3本目は、1日から放送されている海外ドラマ「THIS IS US 36歳、これから」(NHK、日曜午後11時)。高橋さんは主人公の一人、ケヴィンの日本語吹き替え声優を担当しています。

 同作は誕生日が同じ36歳の男女3人が、人生の壁を乗り越えようともがく姿を描いた物語。高橋さんが演じるケヴィンは「自分が演じる役に嫌気がさしている」イケメン俳優。自身も同じ36歳の俳優だけに「彼の葛藤はとてもよく理解できる」とコメントするなど、役柄にシンクロしているようです。

 さらに高橋さんは「人間の機微がぜんぶ入っているドラマ」と同作を絶賛。海外ドラマの声優初挑戦にも関わらず、高揚、落胆、哀愁などのさまざまな感情を声色の変化だけで演じ分けています。高橋さんが声優を務めた作品と言えば、15歳の時に出演した1995年のアニメ映画「耳をすませば」(スタジオジブリ)。高橋さんはヒロインの相手役・天沢聖司を演じましたが、当時から約21年の時が過ぎて、表現力と色気が増していることに気づかされます。

 自然体のたたずまい、はにかんだ笑顔、低音で落ち着きのある声、含みを感じさせる演技……高橋さんの魅力はたくさんありますが、すべてのベースになっているのは「本人のキャラクターを消し、役柄に入り込む」というスタンス。だから出演作が増えても飽きられにくいし、極めて良い意味で「代表作がない」と言えるのです。

 3作それぞれの相乗効果も期待できるだけに、上半期以上の話題になるかもしれません。少なくとも「2017年は高橋一生の年だった」という評価が盤石のものになるのは間違いないでしょう。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

【別カット】「民衆の敵」では“市政のプリンス”を演じる

「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?」より