「自分への投資が大切」と考えて、資格を取ったり、自己啓発セミナーに通うよりも、ずっと大切なことがある。それは何か?(写真:kou/PIXTA)

若い頃は遊んでいないで「自分への投資」をしっかりやりなさい、ということがよく言われます。その1つとしていろいろな資格を取ったり、高いおカネを出して「自己啓発セミナー」に出掛けたり、あるいはそのたぐいの本を読んでいる人は多いだろうと思います。

でも、本当にそういうことが役に立つのでしょうか。私は長年サラリーマンをやってきて、定年後に独立して自営業になりましたが、どうもこの「自分への投資」に違和感を強く感じます。

資格よりも顧客がはるかに大事

私は資格を取ることが無意味だとは思いません。現に資格がなければその業務を行えない仕事はありますから、資格を取るのは必須条件という場合もあります。しかしながら、資格を取っただけではあまり意味がありません。商売のために大切なのは「資格」よりも「顧客」です。いくら資格を持っていても顧客がいなければ、仕事にはならないからです。

また、自分で起業するところまでいかなくても何かの資格を取っていれば転職に有利と考える人もいるでしょう。でも、これは非常に甘い考えです。

なぜなら、サラリーマンで前述のようなFP(ファイナンシャルプランナー)やいろいろな診断士の資格を持っている人は世の中にたくさんいます。採用する側からしても資格が欲しいわけではなく、技能と知見が欲しいのです。

実際に実務経験のない資格保有者というのはおそらくあまり役に立たないでしょう。仮に現在の仕事に直接役に立つような資格であれば、取得後も実務で技能を高めていくことはできます。

しかし、よくいるような何でも資格ばかり取っている資格マニアみたいな人は、趣味としては面白いかもしれませんが、ほとんどビジネスで役に立つことはないと思ったほうがいいでしょう。

資格と同じように、自己啓発に努めている人も世の中にはたくさんいます。その証拠に自己啓発本というジャンルは実によく売れています。さらにもっとすごいと思うのは自己啓発セミナーです。

だいたい、そういうセミナーというのは高額のものが少なくありません。半年間で50万円とか100万円払ったり、1回のセミナーでも10万円を取ったりするのを見掛けることもあります。私はよく資産運用やライフプランのセミナーを自分で主催しますが、参加費はせいぜい2000〜5000円程度ですから、世の「自己啓発セミナー」のたぐいがいかに高額のものかということに驚かされます。

自己啓発とダイエットは同じ構造、実行こそが難しい

私は前から素朴に疑問に思っていることがあるのですが、なぜ次から次へと新しい自己啓発本や自己啓発セミナーが出てくるのでしょうか。本当に役に立つものであれば決定版みたいな本やセミナーを読んだり受講したりすれば足りるわけで、次から次へと新手のものが出てくるというのが不思議でなりません。

でも考えてみると、これはダイエット法やダイエット本と同じ構造なんですね。これが決定版みたいなものがあれば、それだけが売れるはずですが、相変わらずさまざまなダイエット法の本が続々と発売されています。

ダイエットなんていうものは単純です。要はカロリーを計算してバランスよく栄養を取り、食べ過ぎないようにする。同時に運動を行って基礎代謝を上げるということを地道にやれば必ず成功します。ビジネスで成功する秘訣もシンプルです。自分自身で考え工夫したことを地道に血のにじむような努力を毎日続け、失敗したことを反省し修正しながら繰り返していけば、やがてうまくいくはずです。ところが、いずれも言うのは簡単ですが実行するのは難しいことばかりです。

要するにダイエットもビジネスも難しいことはやりたくなくて、楽をして達成したいと思うからお手軽にできそうな簡単ダイエットの本や自己啓発セミナーが大流行なのではないかという気がしてなりません。私はサラリーマン生活を38年間やってきましたが、「ビジネスは理屈ではない」と思います。そんなセミナーに出たぐらいでうまくいくほど甘いものではありません。ビジネスは自分で悩み、苦しみながら身に付けていく以外に成功する方法なんてものはないということを知るべきです。

「自分への投資をしましょう」というのはこういった資格ビジネスや自己啓発ビジネスをやっている人たちの決め手になるセールストークといえるでしょう。私は自分への投資よりも大切なのは「人への投資」だと思います。

人脈を作って信用を積み重ねていくことが何よりも大切なことです。自分に物を買ったり自分におカネを使ったりすることは控えても、人に使うおカネを惜しんではいけないと思います。

「人の役に立つこと」で「信用」が着実に積み上がる


ただ、ここで言う「人に使うおカネ」というのは必ずしもおごってあげたりおカネをあげたりするということの意味だけではありません。何かその人にとって役に立つことをやってあげるということです。それによって、信頼でつながった人間関係ができます。これは何よりの財産です。

先ほど、資格をいくら取っても顧客がいなけりゃ話にならないということを言いましたが、まさに人とのつながりを通じて顧客というのはできていくものです。

なぜなら何よりも大切なことは「信用」だからです。「人に投資する」、人のために自分の労力とおカネを使うことによって「信用」は着実に積み上がっていきます。

そしてその「信用」はいずれ何らかの形で必ずリターンを生み出すと考えていいでしょう。誤解のないように再度言っておきますが、私は「自分への投資」がまったく意味のないものとは言っていません。要はバランスの問題だということです。

自分への投資と同じかそれ以上に人に何かをしてあげるということが、最終的にはよい結果をもたらすということではないでしょうか。