中野が59分に追撃のゴールを決める。流れは俄然仙台に傾いたが……。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[ルヴァン杯準決勝 第2戦]川崎 3-1 仙台/10月8日/等々力 

 リーグ戦好調の川崎を最後の最後まで追い詰め善戦したが、あと一歩でタイトルに届かなかった仙台。この日気を吐いたのは、川崎からレンタル移籍中のMF中野嘉大だった。
 
「起用した狙いと言っても、なかなか選手が揃わずシャドーをやれる選手がヨシ(中野)しかいませんでした」

【PHOTO】川崎 3-1 仙台|悲願の初タイトルへ川崎が8年ぶりの決勝進出
 
 仙台・渡邉晋監督も試合後の会見で話した通り、FW石原直樹が第1戦で退場となり出場停止、MF梁勇基は負傷欠場、MF野津田岳人は清水でルヴァンカップに出場したため、規定により出場できず。シャドーをできる人材が限られていたこともあり、中野は本来の左ウイングバックではなく、1トップ・クリスランのすぐ後方に位置した。
 
「気持ちは入っていました」
 初めて等々力陸上競技場にアウェーチームの一員としてやってきた中野は、並々ならぬ気持ちで試合に入る。だが前半に関しては「前半はもっと自分が簡単にプレーしていれば、うまく仕掛けられたと思います。やってやろうと思い過ぎて自分のミスで囲まれてしまう場面が多かったです」と振り返った通り、ドリブル突破を図ろうとするも、中野の特長を熟知したMF森谷賢太郎、エドゥアルド・ネットといった選手に潰される場面が多く、気持ちが空回りしてあまり多くの決定機は作り出せなかった。
 
 29分の失点直後には、右サイドからのクロスに合わせてゴールを決めたかに見えたが、クリスランが相手GKを妨害したと見なされ、ゴールが取り消される不運もあった。
 
 しかし後半、落ち着きを取り戻した中野は59分コーナーキックで三田啓貴とショートコーナーを仕掛ける。ワンツーでボールを受けると、持ち味の巧みなドリブルでゴール前に進入し、右足を振り抜いてゴールを決めた。
 
「ボールを獲られないようにドリブルして、シュートまで行こうという気持ちがそのままゴールにつながりました」
 古巣相手に結果を出したいという強い気持ちが素晴らしいゴールを呼び込んだ。
 
 川崎DFの奈良竜樹が退場したこともあり、仙台が決定機を作る時間が続いたが、反省していたのはラスト15分の戦い方だ。
「2-2にすれば自分たちが決勝に行けたので、焦らず行こうとチームの中でも言っていて、自分も途中交代の選手の良さを生かせれば良かったのですが、相手が10人なのにカウンターを喰らって失点しました。本当は押し込めるはずなのにラスト15分全然攻撃できなかったところはチームとして反省すべきです」
 
 なんとか同点に追いつこうと、仙台は次々とFWの枚数を増やしたが、あまりにも多くの選手がゴール前に張りすぎて、かえってバランスを崩してボールを失い、カウンター攻撃を何度も許す展開となった。結果的にチームは、3失点目を喫してしまった。一人ひとりが良いポジションを取り続け、相手の優位に立つサッカーというチームコンセプトが崩れてしまったのだ。
 
「我々がひとり多い中で攻撃を仕掛ける際、想像以上にバランスを崩して秩序が無くなってしまいました。それを引き起こしたのは私の采配で、追いつけなかったのはすべて私の責任です」と渡邉監督も珍しく自身の采配を後悔していたが、タイトルまであと少しという大舞台での経験の無さが出た場面だった。
 
 それは監督や中野のみならず、多くの選手から反省の弁として聞かれた。
「等々力という舞台、相手、決勝進出がかかっている、シャドーができるという状況が重なってゴールは奪えましたが、絶対勝ちたかったので個人として悔しかったです」
 思い入れの強かった試合だっただけに、試合後は悔しさを露わにしていた。
 
「勝たないと何も得るものはありません。またこの舞台にたどり着けるよう頑張っていきたいです」と厳しい表情を崩さなかった中野。幸いなのは、この悔しさを晴らす機会が6日後のリーグ29節の川崎戦でやってくることだ。しかも舞台は、再び等々力だ。
 
「また川崎と等々力でゲームができるので、しっかりと借りを返したいです」と力強く語った。レンタル元の中野の選手としての成長を考え、川崎戦不出場オプションを付けずにレンタル移籍したからこそ生まれた古巣対決。この2試合で、中野は気迫溢れるプレーを見せ、この1年での成長を古巣サポーターに見せた。6日後のリーグ戦では今日の悔しさを糧に、今度こそ勝利につながる貢献を見せたい。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)