家長昭博にかつがれ、先輩たちから祝福を受ける三好康児。この喜びは格別だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[ルヴァン杯準決勝 第2戦]川崎 3-1 仙台/10月8日/等々力

 まさに千両役者と呼ぶに相応しい活躍ぶりだ。
 
 第1戦の結果は2‐3。アウェーゴールを2つ奪ったとは言え、決勝進出への条件は勝利が必須というシチュエーションで第2戦を迎えた。つまり、ピッチに立つ選手には強烈な圧が掛かる。その中でチームに歓喜をもたらしたのは、川崎の若き至宝・三好康児だった。
 
 29分、森谷賢太郎の縦パスを経由し、中村憲剛がヒールパスでラストパスを送る。このパスに反応し、走り込んだ三好は慌てることなく、冷静にボールをゴールへと流し込んだ。

 そして、迎えた後半開始早々の49分。この一撃がチームの勝利に欠かせないものとなった。エウシーニョが放ったシュートのこぼれ球に反応し、値千金の2点目を奪取。得点直後の52分に奈良竜樹が2枚目のイエローカードで退場し、59分には仙台に1点を返されたが、三好の2点目が試合の行方を左右したと言っても過言ではないだろう。
 
 試合後、三好は「賢太郎君に昨日、『明日、おまえ点取るよ』って言われて、僕も『あざっす』と返して、今日は点を取る感じがしていました(笑)」とおどけながらも、充実した表情で誰よりも喜びを噛み締めた。それもそのはずだ。今季は幾多の困難があり、簡単ではないシーズンを送っていたからである。

 昨季は手応えを掴み、意気揚々と迎えたプロ3年目。10節まですべての試合でベンチ入りを果たし、5月下旬からはU-20日本代表の一員としてワールドカップに参戦するなど充実したシーズンを送っていた。

 しかし、代表から戻ってくると、怪我などもあってピッチに立てない日々が続いた。気が付くと、自分の居場所がなくなり、サブに入るのもままならない大スランプへと追い込まれた。

「ワールドカップの期間はチームを抜けないといけない。その間に点を取って活躍する選手も出てくるので、帰って来て自分がすぐに試合に出られるかというとそうではない。なかなか気持ちの部分で難しいところがあって…」

 三好が当時の心境をこう明かすほど、大きな壁にぶつかっていた。
 そこで支えになったのがチームの先輩たちだ。

「自分がそう思っているというのは周りの先輩たちも感じ取ってくれていたみたいで、ご飯に連れて行ってくれたりして声を掛けてくれた。そこで、自分に何が足りなくて、何を持っているのか。そういうところをかなり言ってくれたので、自分にとってすごく大きくて、そこから変わって来たなと思う」(三好)

 自信を失いかけた時に支えてくれた先輩たち。家長昭博からは「お前には点を取ってほしい」と発破を掛けられるなど、多くの人に支えられてこの大一番を迎えた。
 
 そして、仙台戦での2ゴール。得点を決めた後には中村から「やっとだな、待っていたぞ」と言われ、苦しい時期に積み上げて来たものがようやく結実した瞬間だった。

 ただ、これで終わりではない。決勝戦が残っている。過去に川崎が決勝に進んだ07年と09年は、下部組織に所属していたこともあってスタンドで過去の先人たちが悔し涙を流している姿を見た。
「アカデミーの時に悔しい想いはしているし、今度はプロの立場で決勝を経験できるのは、あの頃から考えれば大きなこと」

 幼少の頃に味わった悔しさは三好の脳裏に焼き付いている。その想いを胸に、さらなる恩返しを決勝の舞台で誓う。

取材・文 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)