欧州組は、日本で試合をすること自体にリスクを負っている。香川の発言もうなずけるところだ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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「ワールドカップという意味では、正直、何の意味がある試合なのか。評価しづらいゲームになった」
 
 2-1で勝利したキリンチャレンジカップ、ニュージーランド戦後の香川真司の言葉は、大きくメディアに報じられた。たしかに、ワールドカップ本番を想定した試合とは言いがたい。何も意味がないとは思わないが、大きな意味があったとも思えない。香川本人にそのつもりがあるかどうかはともかく、選手からの発言はインパクトが強く、議論の呼び水になる。この提起を歓迎したい。
 
 大前提として、欧州組は、日本で試合をすること自体にリスクを負っている。長距離移動と時差によってコンディションを落とし、Aマッチ直後のリーグ戦でポジションを失うケースが少なくないからだ。今シーズンも吉田麻也が9月のAマッチ直後、サウサンプトンの試合でベンチに座り、レギュラーを奪われる可能性に肝を冷やした。
 
 選手にとっては死活問題。ワールドカップ予選ならともかく、親善試合のために、このようなリスクを負うのは、果たして正しいことなのか。まして、今の香川はドルトムントで当落線上に立たされている。前節のアウクスブルク戦でスーパーゴールを挙げ、レギュラー確保に向けて軌道に乗りたいタイミングだけに、この親善試合に疑問を抱くのは当然だろう。
 
 逆に、このようなリスクを負って招集されるのなら、それなりの成果と課題を得たいが、格下チームとの試合では戦術も変わってくる。ワールドカップ本番につながるイメージを持てない。「クラブでポジションを取れ!」とハリルホジッチに厳命されるなか、代表活動に足を引っ張られるダブルスタンダードに、香川はもどかしさを抱えていたのではないか。その本音がひと言、漏れたように思える。
 
 ただし、今回のニュージーランドとハイチというマッチメークは物足りないが、仕方がない面もあった。この10月は世界中でワールドカップ予選が開催されるため、欧州や南米の強豪とマッチメークするのは不可能。つまり、最初から対戦相手の選択肢が少なかった。
 しかし、日本の選択がベストとも言えない。たとえば、日本よりも後にワールドカップ出場を決めた韓国は、同じ10月にワールドカップ開催国のロシア、アフリカの強豪モロッコと親善試合を組んでいる。
 
 開催国の環境で戦い、アウェーの雰囲気を味わう。その後はスイスに移り、中立国でモロッコと試合をする。対戦相手、試合環境ともに、ワールドカップを見据えたマッチメークだ。また、UEFA圏内のロシアとスイスで試合を行なうため、Aマッチ期間の2試合を同一大陸内で行なわなければならないと定めた、FIFAの規定にも抵触しない。
 
 ただし、疑問があるのはモロッコのほう。アフリカのワールドカップ予選は、10月に1試合しか組まれていないため、もう1試合の日程を、韓国との親善試合にあてたのだが、モロッコはホームでガボン代表と予選を戦った後、スイスに移動して韓国と戦うため、こちらは同一大陸の規定に反する。
 
 とはいえ、モロッコからスイスは飛行機で3時間程度。このマッチメークが選手の負担になるとは考えられないので、FIFAと交渉して認められたのかもしれない。韓国は元々チュニジアと親善試合を行なう予定で、先月になってキャンセルされた経緯があるが、最初からロシア+北アフリカの2チームで絞っていたのだろう。
 
 それはともかく。今回の日本のマッチメークは、悪くはないが、ベストとも言い切れない。やれること、考えられることは、まだある。「仕方がない」はその先でいい。

 たとえば今後、ワールドカップ出場決定後の1年に限り、すべての親善試合を欧州開催にしてはどうか。必ずしも欧州の国と戦う必要はない。中立地開催として、相手は南米でもアフリカでも北中米でもいい。