失踪した大学生らの家族が作成したポスター(ネット写真)

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 住む場所も違い、互いに何の接点もない30人以上もの大学生が、武漢で相次いで失踪。中国でこんな不可解な事件が起きていたことが明らかになった。だが中国当局はこれを否定し、警察当局は捜索願すら受理しない。失踪した若者たちにはある共通点があった。「闇の臓器売買ビジネスの被害者になったのではないか」との憶測が浮上した。

 9月27日、「考えると恐ろしくなる!30人以上の大学生が武漢で謎の失踪」という文章が中国のインターネットに掲載された。そこには2011年から武漢市で32人の大学生が立て続けに失踪しているとあり、行方不明者の氏名、年齢、身長、失踪した日、当時の状況、そして家族の連絡先などが詳細に記されていた。失踪者の家族は子どもの手がかりをつかむため、これらの情報を公開したとしている。

 だが早くも翌日に、転載されたものも含めてこの文章は当局から削除され、国営メディア新華網の記事は「全くのデマ」と事件を全面否定した。同時に、記事を作成した同市在住の人物は拘束された。

 その後、江西省九江市在住の葉さんは「武漢の大学生はなぜ蒸発したのか」との記事をインターネットに投稿したが、警察当局「(評論文を)世間に大きく広め、非常に悪い影響を与えた」と記事の削除を迫られた。

 多くの失踪者家族が「取材を受けるな」と当局に警告され、口を噤んでいるが、500日以上自力で息子を探し続けてきた林少卿さんは、取材に応じてくれた数少ない一人である。

 林少卿さんは大紀元の取材に対し、ネットに掲載された内容はすべて真実だと証言している。この事件は捏造でもなくデマでもないと証明できると語っている。

 「国営メディアはでっちあげの話だと報じましたが、理解しがたい話です。(失踪した息子らを)探しもせず、私たちの邪魔をするのですから。常識的に考えてもおかしい」

 同じく息子が行方不明になったという周さんも大紀元の取材に応じ、失踪者名簿に書かれていたことは全て事実で、行方不明者の家族とも頻繁に連絡を取り合っている。周さんの息子の曹興さん(24)は2014年2月14日に武漢大学の近くで行方が分からなくなった。

謎だらけの息子の失踪

 林少卿さんによると、息子の林飛陽さん(当時20歳)は15年8月末からロシアのモスクワ大学に留学していた。同年11月24日、飛陽さんは少卿さんに電話をかけたがつながらず、母親にかけると「お父さんは大丈夫?連行されたりしていない?」と父親の安否を強く気にかける言葉を口にしたという。そして「世間には悪人がたくさんいるから、お父さんもお母さんも安全にはくれぐれも注意してほしい」と言ったのを最後に連絡が取れなくなった。

 息子と連絡が取れないことが分かると、林少卿さんはすぐに河南省洛陽市からモスクワに飛んだ。大学に問い合わせると、半月以上も前から飛陽さんの姿が見えなくなっているという。現地の警察に捜査を依頼したところ、飛陽さんは11月26日に武漢行きの飛行機に乗ったことが分かった。少卿さんが急いで武漢の天河国際空港に駆け付け、空港監視カメラにリュックサックを背負った飛陽さんが空港ロビーを歩いて行く姿が映っていた。

 それから少卿さんは四方八方息子を探し回った。飛陽さんが乗ったタクシーの運転手を探し出すと、飛陽さんは武漢市委党校(党校:中国共産党の高級幹部養成機関)に向かったことが分かった。少卿さんが党校近くの監視カメラを確認したところ、飛陽さんが黒い服に着替えて党校から出てきたのが映っていた。

 政府当局が武漢には100万の監視カメラを設置しいるが、監視映像の録画を閲覧するには、警察からの事件として立案した証明書が必要。

 少卿さんは、「警察に言っても、事件として扱えないという。しかも、調査する必要さえないと言い切られた」という。

 少卿さんの息子探しの長い道のりが、この時から始まった。

 少卿さんは自家用車を宣伝カーに改造して、息子探しの音声を流しながら中国各地を尋ね回った。その距離約4万キロ。情報提供者から電話を受けるとすぐに現地にかけつけた。懸賞金も10万元(約170万円)から50万元(約850万円)に増やした。息子を取り戻すため、深圳での仕事もやめて預金を切り崩しながら「必ず探し出す」と心に誓ってがむしゃらに走り続けてきた。

 だがその努力が実を結ぶことはなく、どのように手を尽くしても、息子のその後の足取りはつかめていない。

 少卿さんは息子を探し続けたこの2年間で、自分と同じような家族が他にもたくさんいることを知った。しかも彼らの子どもたちもすべて、武漢で足取りが途絶えており、大学生だったという点も共通している。これを知った時、少卿さんは驚きを禁じ得なかった。他の失踪大学生の情報も集め続け、他の家族と連絡を取り、情報交換し励まし合いながらここまでやってきた。

 家族らは、失踪事件の多くに何らかの糸口が見つかっているが、個人でやれることには限界がある。警察が積極的に動いてくれさえすれば見つけ出せるはずだと口をそろえる。根本的な問題は、当局が動かないことだ。

 「(中国滞在中の)日本人の自転車が失くなれば探してあげる。ドイツ人のカバンが失くなれば探してあげる。失踪した中国人の子供も探してくださいよ」と家族らが必死に訴えている。

臓器売買との関連性が濃厚

 

 

 あるネットユーザーはこの失踪事件の不可解さに疑問を呈している。「一連の大学生失踪事件は一見したところなんの関連性もないように見えるが、実は恐ろしい共通点が隠されている。ほとんどが20代前半の若い男性で、ほぼ全員が大学生、失踪前に何かを案じていたという点も共通している。一人で出奔し、なにか目的を持っており、親しい人にすら行き先を告げていないことも同じ。飛陽さんら他所の地域の人間がわざわざ武漢を訪れ、着いたその日に姿をくらます。これらすべてを偶然の一致として片づけられるだろうか」

 米国のラジオ番組「希望の声」の中で、時事評論家ジェーセン博士は、「この事件をよく考えると本当に恐ろしいことだ」とコメントした。「若くて健康な大学生の失踪をどうしても中国で最も短絡に巨額な利益が得られる人体臓器売買の裏市場と連想してしまい、この事件の裏には、巨大な勢力と厖大な経済利益が絡んでいるだろう」と指摘した。

 米国在住の時事評論家横河氏が、次のように分析した。

 中国衛生省(厚生省)の元次官で臓器移植関連の責任者を務める黄潔夫氏は、2015年8月に武漢で開かれた臓器移植関連の会議で、「湖北と武漢(の貢献)がなければ、(今日の)中国の臓器移植はない」と中国の臓器移植において湖北と武漢の重要な役割を認める発言をした。これは、武漢には移植の研究や手術用の人体臓器に対して大きな潜在需要があること意味する。

 「大学に入学時に、手続きの一環として必ず採血を含む健康診断を行うため、中国では、収監された囚人以外、大人数で生体データが採られているのは、大学生だ。」そのデータを入手できれば、臓器のために「オンデマンド殺人」が十分にありうると指摘した。

 中国の臓器移植の件数は2000年に入ってから急増している。その出処が明らかにされておらず、国家ぐるみで良心の囚人、法輪功学習者、ウイグル人などから臓器を摘出・売買しているという疑念を中国政府は今になっても払拭できていない。

 少卿さんを含め3人の家族は大紀元の記者に、子どもたちの失踪には臓器移植が絡んでいる可能性があると口にした。だが、そのことについては「考えたくないし、考えないようにもしている」と苦しい胸の内も明かしている。その可能性を踏まえて手がかりを探してみたが、警察当局からの回答は「臓器のドナーはすべて自分から望んで臓器を提供している。殺されて臓器を摘出されるといったことはない」というものだった。家族の力だけではこれ以上の調査はできず、彼らは今、八方ふさがりの状態に置かれている。

(翻訳編集・島津彰浩)