10月に入り、朝晩は肌寒さすら感じるようになってきましたが、だんだんと秋が深まっていくのも、また楽しみですね。秋らしい風景といえば、やはり紅葉です。木々が色づき、地面が落ち葉で埋め尽くされる景色は、まさに秋といった感じですが、そんな秋の風景の中では、木々の下に落ちているどんぐりもよく見かけます。どんぐりのその形や、りすのエサとなることから、とてもかわいらしい存在でもありますが、そんなどんぐりが主役の童謡といえば「どんぐりころころ」ですね。でも、この有名な童謡の歌詞には、いったいどんな意味が込められているのでしょうか?

秋を感じさせてくれる、かわいらしい形の「どんぐり」


勘違いしやすい歌詞の意味

「どんぐりころころ」は大正時代につくられた童謡で、古くから子どもたちに歌われてきた日本を代表する名歌といってもよいでしょう。歌詞を知らない人はいないと思いますが、おさらいしてみましょう。
「どんぐりころころ」の歌詩
1番
どんぐりころころ どんぶりこ お池にはまって さあ大変
どじょうが出て来て 今日は ぼっちゃん一緒に 遊びましょう
2番
どんぐりころころ よろこんで しばらく一緒に 遊んだが
やっぱりお山が 恋しいと泣いてはどじょうを 困らせた
みなさんは、正しく歌えましたか? 実は勘違いしやすいのが1番の歌詞なんです。
「どんぐりころころ どんぶりこ」を「どんぐりころころ どんぐりこ」と覚えている人、結構多いのではないでしょうか? 「どんぶりこ」とは、音を立てて水に落ちるという意味。その後の「お池にはまって」という歌詞を見ると、意味がつながりますね。


かわいそうなどんぐり。その結末は……?

子どものころから口ずさんでいる曲だと、あらためて意味を考えることも少ないかもしれませんが、「どんぐりころころ」の歌詞には、どんな意味が込められているのでしょうか?
「どんぐりころころ」の歌詞の意味
1番/どんぐりが池にはまってしまいます。そこへ登場するのが、どじょうです。「坊ちゃん」と呼びかけているわけですが、坊ちゃんとは、もちろんどんぐりのことですね。どじょうがどんぐりに一緒に遊ぼうと呼びかけます。
2番/どんぐりはどじょうと喜んで遊び始めます。ところが、山から来たどんぐりは山に帰りたくなってしまいます。ホームシック状態でしょうか? そんな様子を見たどじょうは困り果てる……なんとも悲しい終わり方ですね。
童謡だけあって、ストーリーも童話のような設定です。ただ、童話であればハッピーエンドで終わることが多いのですが、1番と2番のつながりを見ると、「えっ、これで終わり?」という悲しい結末を迎えているのです。

どんぐりの遊び相手だったどじょうですが……


子どもたちの希望を託した「幻の3番」の歌詞が、実はあった?

原曲は2番で終わってしまっている「どんぐりころころ」。しかし、悲しい結末の2番までで終わってしまってよいのか……という声も上がります。
一説によると「どんぐりころころ」の作詞家である青木存義さんによると「あえて3番をつくらなかった」ともいわれています。その理由は「子どもたちに自分でつくってほしいという希望があったから」なのだそう。子どもたちの豊かな発想力に「どんぐりころころ」の未来を託したのですね。
実は、「幻の3番」として世の中に広まっていった歌詞があります。
「どんぐりころころ」の「幻の3番」
どんぐりころころ 泣いてたら 仲良しこりすが とんできて
落ち葉にくるんで おんぶして 急いでお山に 連れてった
山に帰りたいと泣き出したどんぐりのもとに、仲よしのりすがやってきます。落ち葉は温かな毛布のような存在でしょうか。どんぐりはふんわりとした落ち葉にくるまれて、無事に山へ帰っていきます。
この「幻の3番」は1986年、作曲家・岩河三郎氏によってつくられました。童謡らしく親の愛情が込められた歌詞に……という想いが込められているそうです。
――もし、これからお子さんに「どんぐりころころ」を教えようとする親御さんがいらっしゃったら、お母さん、お父さんとお子さんが一緒になって、ホームシックにかかって悲しくなってしまったどんぐりはどうしたいのか……そんなオリジナルの歌詩を考えてみるのもよいかもしれませんね。

幻の3番に登場する救世主は「りす」