マドリーに正式入団してまだ2年目のアセンシオだが、早くもスター街道を駆け上がる。(C)Getty Images

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 フットボーラーの「スター街道」の歩み方には、一定の法則が存在する。大半は早くに頭角を現わす早熟タイプ。その中で特急列車のように一直線で頂点に到達する選手、準急列車のように何度かの停車を経ながら進化を遂げていく選手という主に2つのパターンに分かれる。
 
 もちろん、全員がスターになれるわけではない。何度かの停車を繰り返している間に、普通列車に格下げになってしまい、そのまま大したスポットライトを浴びることなくひっそりとスパイクを脱ぐ選手も少なくない。
 
 現在、スペインでそうしたいずれのパターンの法則にも当てはまらずに、スター街道を突き進んでいる選手がいる。マルコ・アセンシオだ。21歳の天才レフティーが現在、レアル・マドリーで示しているのは間違いなくスターの片鱗だ。
 
 しかしながら、徐々に出場機会を与えながら才能を開花させるという若手への確固たる育成方針を持つジネディーヌ・ジダン監督の采配、そしてBBCトリオ(ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウド)という指揮官が今も不動のレギュラーと位置付ける強力ライバルの存在が、アセンシオの定位置確保を阻んでいる。
 
 もっとも、マドリーがアセンシオに与えている待遇は次期スター候補のそれだ。2014年12月にマジョルカから獲得し、同14-15シーズンはレンタルの形でそのまま残留。翌シーズンのエスパニョールでの武者修行を経てマドリーに正式入団したのは2016年夏。わずか1年ちょっと前のことだが、クラブはこの短期間の間に3度も契約更新を行なった。9月29日にも新契約を締結。これに伴い2023年6月まで期間が延長され、違約金は驚愕の5億ユーロ(約640億円)にまで跳ね上がった。
 
 まだ不動のレギュラーの座を得るには至っていないが、昨夏はプレシーズンキャンプが始まる前にトップチームで背番号を与えられるかどうかの確約すらされていなかった若手は、40数試合の出場を経てBBCトリオに脅威を与える存在へと大幅にステイタスを上昇させているのだ。
 
 そのプレーはスペイン代表のジュレン・ロペテギ監督の目にも留まり、ここにきて継続的に招集を受けている。ラ・ロハ(スペイン代表の愛称)でもその活躍ぶりは目覚ましく、マドリーよりも早く定位置を奪取しそうな勢いだ。
 
 アセンシオで特筆に値するのは、ゴールの美しさと希少価値の高さだ。UEFAスーパーカップ、リーガ・エスパニョーラ、チャンピオンズ・リーグ(CL)、コパ・デル・レイ、U-21欧州選手権、スペイン・スーパーカップの6つのコンペティションでデビュー戦ゴールを決めるという史上初の快挙を飾り、そのいくつかは力強いドリブルから得意の左足で豪快に蹴り込んだミドルシュートだった。まさにスターの器である。
 
 そんなアセンシオに特大の才能を感じ取っている一人が、マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長だ。もはや今夏にパリSGに奪われたキリアン・エムバペは眼中になく、パーソナリティー的にも実力的にも世界ナンバー1になれる器だと確信している。
 
 もちろん、チーム内にもアセンシオを評価する選手は多い。C・ロナウドがリオネル・メッシと自らの後継者に指名する一方で、イスコは「世界でもっとも大きな可能性をもった若手選手」とその将来性に太鼓判を押す。
 
 言うなれば法則破りのスター街道を歩んでいるアセンシオだが、興味深いのは、10数年前のメッシといくつかの共通点が存在する点だ。
 
 2004年にバルセロナで鮮烈なデビューを遂げた当時17歳のメッシだが、翌シーズンにフランク・ライカールト監督はこのクラッキの出場機会を制限した。そしてそれが、2006-07シーズンの大ブレイクへと繋がる。3シーズンでまさにホップ・ステップ・ジャンプを果たしたアルゼンチン出身の天才は、「ディエゴ・マラドーナの後継者」、「世界最高の選手」という称号を手にするスター街道を駆け上がっていったのである。