ニュージーランド戦では途中出場で攻撃にリズムをもたらした小林。相手に傾きつつあった流れを引き戻した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部

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[キリンチャレンジカップ2017]日本 2-1 ニュージーランド/10月6日/豊田スタジアム

 小林祐希が香川真司と交代出場したのは、ニュージーランドの同点ゴールが生まれた直後だった。
 
―― 先制する → それを機に相手が直線的にゴールに迫って来る → 流れを堰き止められずに逆転を許す――。
 

 様々なカテゴリーで、何度も見て来た日本代表の負けパターンである。最も象徴的なのが、2006年ドイツ・ワールドカップのオーストラリア戦だ。最近のオーストラリアは、どんな状況や時間帯でも丁寧に繋ぎ続けた。グラウンダーの攻撃で時間をかけてくれたから、自慢のデュエルも活きた。だが同じオセアニアでもニュージーランドは、当然違った。そして案の定、日本は混乱に陥る。長身のクリス・ウッドに同点弾を許した後も、シンプルに高さを意識した攻撃に対して不安定な守備を晒し、むしろ流れはニュージーランドに傾きつつあった。
 
 こういう状況で縦に速いカウンターを目指すばかりでは、劣勢か、ギャンブルのようにオープンな仕掛け合いにしかならない。そこでゲームを落ち着かせ、再び日本の攻撃にリズムを与えたのが小林だった。
 
 入って早々には、酒井宏樹のアバウトな縦へのフィードをしっかりと収めると、密集した右サイドで敢えて仕掛けて敵を釣り、タッチラインに開く久保裕也に余裕を与えてパス。今度は後方に下がり新しいパスコースを作ると、オープンなスペースが広がる左へとサイドを変えた。
 
 その後も約30分間、小林は集中を切らさずにパス&ムーブを繰り返し、シンプルに攻撃のスウィッチを入れ続けた。状況を見極め、フリーになり、ゲームを動かしていく。小林のワンタッチが入ることで、日本代表の攻撃が機能性を取り戻し、相手のバイタルエリアでボールが回り始める。さらにここで保持出来ているから、高い位置での奪取も可能になり、2次攻撃へとつなげることができるようになった。自ら試みた2本のシュートチャンスも、流麗な展開の中で必然的に巡って来ている。
 また小林自身も、日本代表でのやり易さを満喫したはずだ。数年前の小林は「オフ・ザ・ボールの動きでフリーになる」ことを課題としていた。一方でヘーレンフェーンでは、自分で仕掛けることを最優先するタイプばかりなので、フリーでサポートをしても滅多に見てもらえない。本来自分で表現したいハイテンポでボールを動かす崩しは望むべきもないが、この日はノンストップで流した汗がほとんど無駄にならず、そのままチームの活力になった。
 
 昨夏にオランダに渡り、アンカー的な役割を託された。フィジカルが弱いと見られがちな日本人選手には珍しいケースだが、おそらくゲームを読みバランスを取る頭脳を買われたはずだ。少なくともその点で、所属チーム内に代えの効く選手はいない。ただしハリルホジッチ監督は、小林を攻撃的MFとして招集し、ボランチ起用は想定していない。このハンディは決して小さくないが、ニュージーランド戦では難局を切り拓く賢明さと意思を示し、指揮官に重要なヒントを与えた可能性がある。
 
 本大会での日本の立ち位置を考えれば、ハリルホジッチ監督がキックオフ時の4-2-3-1(※あるいは4-2-1-3)を採用するとは考え難い。ただし反面、リアクションの時間が長引けば、跳ね返し切れなくなる相手が大半だ。やはりピッチ上には、日本の時間を創り出すためのリーダーが要る。もちろん長谷部誠や柴崎岳も有力な候補だが、小林のように勝つために決然と小さな反乱も起こせるタイプの方が適任かもしれない。
 
文:加部 究(スポーツライター)

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