練習中の久保建英からは気持ちの余裕が感じられた。リラックスしてホンジュラスを迎えられているようだ【写真:Getty Images】

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気候は日本有利。懸念されるのはピッチの状態

 U-17日本代表は8日、インドでU-17W杯のグループステージ初戦に臨む。対戦相手を意識したトレーニングで綿密な準備を進めてきた森山佳郎監督率いる日本は、どんなプランでホンジュラスから勝ち点3を奪おうとしているのだろうか。(取材・文:舩木渉【グワハティ】)

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 いよいよ日本にとってのU-17W杯開幕の日がやってきた。森山佳郎監督率いるU-17日本代表は8日、インド北東部のグワハティでU-17ホンジュラス代表と激突する。

 現地当日の天気予報では、夕方に雷雨が降るという。ここ数日、毎日のように夕方になると雷が鳴り、短時間ながらそれなりの量の雨が降っていた。日本の試合はフランスvsニューカレドニアの後に行われるため、劣悪なピッチで戦わねばならないかもしれない。

 とはいえ気候は日本にとってアドバンテージになりうる。四季があるデリーなどど違い、グワハティはバングラデシュやミャンマーに近い地域にあり、東南アジアのような雰囲気を漂わす。現在はちょうど雨季を抜けたばかりで、急な夕立ちもあるが、日中は立っているだけで汗が吹き出てくるほど蒸し暑い。しかし、同じような厳しい夏を知る日本代表は問題なく当地の気候に順応し、選手たちも特段問題に感じていないようだ。

 森山監督は、グワハティ入りしてからの3日間にわたる練習でほぼ同じメンバーを組んで戦術の確認と浸透を図ってきた。ホンジュラス戦は機能性が高まった4-4-2の布陣で臨むことが濃厚だ。

 GKには不動の守護神・谷晃生(G大阪ユース)、ディフェンスは右から喜田陽(C大阪U-18)、菅原由勢(名古屋U-18)、小林友希(神戸U-18)、鈴木冬一(C大阪U-18)、ダブルボランチにキャプテンの福岡慎平(京都U-18)とチームの心臓・平川怜(FC東京U-18)、右サイドに中村敬斗(三菱養和SCユース)、左サイドに上月壮一郎(京都U-18)、そして久保建英(FC東京U-18)と宮代大聖(川崎F U-18)という11人の先発が予想される。

 完全復帰のめどが立っていながら、5日の練習中に転倒して完治間際だった鎖骨を再骨折してしまった斉藤光毅(横浜FCユース)が離脱し、7日から追加招集された棚橋尭士(横浜FMユース)がチームに合流したものの、初日は別メニュー調整だったためホンジュラス戦での起用は見送られる見込みだ。

ビルドアップの工夫。警戒すべきは…

 対戦相手のホンジュラスには慎重180cm超えの選手が揃っており、スカウティング映像を確認した日本の選手たちも、「ボランチの2人が本当に守備能力が高い」(福岡)、「前線にうまい選手がいっぱいいる」(上月)、「高さがあって、集中力がある」(中村)と、それぞれ思い思いの印象を語った。

 そういった警戒すべき要素を含め、インドに入ってから日本が取り組んできたのはビルドアップ時の工夫と、攻撃でのコンビネーション、攻撃から守備への切り替え時のプレスといった点だった。

 ビルドアップの局面ではボランチが積極的に最終ラインからのボールを引き出しつつ、守備力の高い相手ボランチのマークを食いつかせ、その背後にできたスペースを狙う形を繰り返し確認していた。FWの位置から久保が下りてきてボールを受けて前を向いたところからチャンスを作れるかが、ホンジュラス戦の一つの見どころとなる。

 キャプテンを務めダブルボランチの一角での先発が濃厚な福岡は「僕たち(ボランチ)にボールがくるのを狙っているシーンとか、バックパスを狙っているシーンとかが多く見られて、僕たちのボールを狙っているという情報が入っている。そこはセンターバックから僕たちに出すボールとかも考えてもらって、僕自身はそこで簡単にボールを奪われないとか、あえてスペースを空けてFWが落ちてそこで受けて、展開を作るというのを、明日の試合はどんどん増やしていきたい」と、自身のプレーを具体的にイメージしていた。

 森山監督からは練習中も「ボールを受けるときに角度をつけよう」「パスの出し手はもう一度受けにいく体勢を作ろう」「ボールを動かしながら常にスペースを見つけよう」と、盛んに指示が飛んでいた。ボランチを経由したビルドアップで後ろからモロに相手の激しいマークを受けてボールを奪われ、ショートカウンターを食らうことを強く警戒している様子もうかがえる。

久保建英が攻撃のスイッチ役。フィニッシュ演出できるか

 相手ボランチの背後のスペースで久保がボールを受けて、前を向くと、そこからチャンスが生まれるイメージもチーム内で共有されているようだ。練習中もそういった形がうまくはまったときにはFWの宮代、両サイドの中村や上月といったシュート力に長けたアタッカーたちが一気にゴール前へ走ってチャンスを狙っていた。

「(久保)建英とかにボールが入ればどんどん攻撃のチャンスができてくると思うので、そういうのは明日の試合も増やしていきたい」と福岡は語る。本職はストライカーながら右サイドで起用されるであろう中村も「サイドに張ってセンターバックが持ったらタイミング良く中に入って、そこから連係してFWに当てての3人目(の動き)だったり、ワンタッチを意識してプレーしたい」と、周りの選手と連動しての崩しのイメージを持っていた。

 反対サイドの上月は「守備の面で切り替えのところだったり、裏も空いたりしている」とホンジュラスの課題を指摘。そして「1対1で絶対に負けないということは意識しています」「裏とかどんどん狙っていければいい」と、武器である果敢な仕掛けからのシュートを狙っていくつもりだ。

 練習ではセットプレーの確認も入念に行った。特に体格で劣る守備では、森山監督から「相手の6番はいいボールを蹴ってくるぞ」と、選手たちに警戒を促していた。ホンジュラスの6番は、ルイス・パルマ。国内クラブの下部組織に在籍する選手だが、U-17南米選手権では30m級の右足フリーキックを蹴り、右サイドからゴール左上角に直接沈める離れ技を披露した。強烈かつ精度抜群の右足は日本の脅威になるだろう。

「一端のチームに勝るとも劣らない団結力がある」(久保)

 攻撃時のセットプレーでは「フリーキック時にタイミングよくラインを上げるのが苦手」という、ホンジュラスの弱点をつかんでいる。その上で、GKとDFの間を狙った低くて速いボールを入れ、GKが飛び出せないようにゴール前へ飛び込んでいく練習を重ねていた。幸い日本には左利きの久保、右利きの中村ら4、5人のキッカーが控える。それぞれ違った弾道のボールを蹴ることができ、今後セットプレーは日本の武器になっていくかもしれない。

 久保は「ここまで2年くらいやってきて、当然一端のチームほどまではいかないですけど、それに勝るとも劣らない団結力があると思っていますし、それに勝るとも劣らない連係もあると思いますし、試合の中でも臨機応変にコミュニケーションできると思っている」と自信を口にした。

 ホンジュラスとの初戦は、勝つか負けるか、あるいは引き分けるかで今後のプランが左右される非常に重要なゲームとなる。特にインドでは長距離移動のリスクも考慮しなければならないため、出来るだけ有利な状況でグループステージを進めていきたい。

 今大会は森山体制の集大成。才能あふれるタレントたちの個人能力と、抜群の一体感、2年かけて培ってきた連動性を掛け合わせて、総力戦でホンジュラスから勝ち点3を奪いにいく。試合は現地時間20時(日本時間23時30分)開始予定だ。

(取材・文:舩木渉【グワハティ】)

text by 舩木渉