喉の重要性について、『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社刊)の著者でもある、西山耳鼻咽喉科医院の西山耕一郎理事長が言う。
 「人間は喉から衰えると私は思っています。食べ物が入ってきた時に、筋肉を瞬時に動かしてちゃんとゴックンと飲み込むことができるかどうか。私たちがどれだけ長生きできるかは、この“ゴックン機能”をどれだけ長くキープできるかにかかっていると言っても過言ではないと思います」

 人間は40代、50代から飲み込む力が少しずつ衰えるそうだ。中には、30代からの誤嚥もあるという。
 「喉を動かす力が衰え、反射神経が鈍り、ゴックンと飲み込むタイミングが次第に微妙なズレを生じてくるんです。こうしたズレによって、むせや咳き込みが引き起こされるのです。食事中、あらぬタイミングで食べ物や飲み物が気管道に入ってしまいそうになり、瞬間的に危険を察知した体が反射的に咳き込んで、入りかけた内容物を戻そうとしているわけです」

 喉は喉頭蓋という“フタ”を分岐点として、食道と気管への道に分かれている。食べ物や飲み物は食道へ、空気は気管へ入っていく。
 「喉の機能が落ちてくると、本来、食道に入るべき飲食物が誤って気管へ入ってしまう。しかし、そうなったとしても入り口近くの声帯より上に留まっている場合は“喉頭流入”と呼ばれます。その段階では、勢いよくむせたり咳き込んだりすれば、内容物が戻ることがほとんどで、大きなトラブルにはなりません。しかし、頻繁に喉頭流入でむせているなら、喉の機能が老化している証拠なのです」

 つまり、いつ誤嚥しても不思議ではない危険な状態ということだ。
 高齢だったり、体力が弱っていたり、病気やケガ、手術後で免疫力が落ちていると、誤嚥物が流入しやすくなる。その結果、気管や肺で細菌が繁殖して炎症が生じ、誤嚥性肺炎が引き起こされるのだ。

 飲み込む力が落ちてくると、喉仏の位置が下がってくる。喉仏を吊り下げている筋肉や腱が衰えてくるからだ。
 「喉頭挙上筋群と呼ばれる筋肉が、喉仏を引っ張り上げたり下ろしたりしているのです。しかし、加齢によって喉仏の筋肉は少しずつ衰えてくる。喉頭の位置も下がり、喉の“フタ”が閉まりにくくなって、誤嚥が起きやすくなるのです」

 西山医師は、これまで飲み込む力が衰えた患者を1万人以上診てきたという。
 「その経験から言うと、早い段階で飲み込む力をつけていけば、10年は寿命を伸ばすことができるかもしれません」

 そこで、飲み込む力をアップさせる主な「ゴックントレーニング」を紹介しよう。
 まずは喉の筋トレだ。
 メーンとなるのは、「嚥下おでこ体操」と、「あご持ち上げ体操」だ。

●嚥下おでこ体操…おでこに手根部を当て、おでこと手で押し合いっこをするストレッチ。頭は下方向へ強く力を込め、手根部はおでこを押し戻す。その状態を5秒間キープ。これを5〜10回繰り返す。これにより、喉仏の筋肉が鍛えられていく。

●あご持ち上げ体操…あご先に両手の親指を当てて、あごを持ち上げ、頭の方は下方向へ力を込めていく。これも5秒間キープを5〜10回行う。

 この二つを基本に、以下のトレーニングを加えれば、さらに効果が期待できる。

●喉E体操…奥歯に力を入れ、アルファベットのE(イー)を発声しながら口を横に伸ばす。これも5秒間を5〜10回行う。

●カラ嚥下…つまり、つばを飲み込む動作。ゴックントレーニングを行ったことによって「飲みこむ力が鍛えられた」という意識を持ちつつ、2〜3回、ゆっくり飲みこむようにする。

 これらを行った後は、深呼吸をする。口から長くゆっくり息を吐いていき、吐き切ったら鼻から息を吸う。これも2〜3回繰り返す。