菅田将暉×萩原利久、“先輩と後輩”対談!「出会った頃は、僕の膝に乗ってた」(菅田)

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 寺山修司による同名小説を原作に、岸善幸監督がボクシングを通して、孤独と向き合う若者の魂の叫びを描いた青春映画『あゝ、荒野』。本作では、菅田将暉、ヤン・イクチュンをW主演としたボクシングのドラマを軸に、原作の寺山修司の世界観を投影した“自殺研究会”の活動が描かれる。リアルサウンド映画部では、沢村新次を演じる主演の菅田将暉と七尾マコト役の萩原利久にインタビューを行った。人間の普遍的な営みを描く主演2人を軸とした表のテーマに対し、より社会的なメッセージを反映させたパートについてや、“兄弟”のような印象を抱かせる二人の関係性について、じっくりと語ってもらった。【写真ページの最後には、チェキプレゼント企画あり】

(参考:菅田将暉、萩原利久 写真

■菅田将暉「強烈なメッセージだなと」

ーー原作や台本を読んだ時の感想は?

萩原利久(以下、萩原):初めて原作と台本を読んだ時は、分からないことだらけでした。マコトという役に、あまりにも自分の中にはない要素がたくさんありすぎて、原作を意識したり、どの部分を取り入れようかという作業に入る以前に、イメージを描くのが難しかったです。

ーー萩原さんが演じたマコトは、友人の突然の「死」について深く考えていく役でした。

萩原:普段、実際に周りでは「死ぬ」という言葉が軽く使われてる気がしていて。劇中でマコトは、紛れも無く一つの命がなくなることを目の前で体験するけれど、“生きること”すら真面目に考えたことがない僕は、“死ぬ”ということに対してはもっと考えたことがなかった。幼い頃に祖父が亡くなっていますが、自分の身近であった死であっても、当時は分かってるようで分かってなかった。“死”から何かを考えたりすることが本当になかったので、その部分は取り入れるのが難しかったです。唯一、マコトが若くて純粋で何にも染まってないという部分や、僕が分からないことはマコトも分からないことだったので、その部分はありのまま受け入れようと心がけました。原作、台本に従うというより、現場で感じることができる“死”、“生きてる”という感覚をストレート表現しようと意識していました。

菅田将暉(以下、菅田):特に自殺研究会が開催する「フェスティバル」の部分はあまり台本は関係なかったよね。完成した映画を観て、大規模な野外ステージを組んでのフェスティバルのシーンに驚いた。全世界中にすぐに発信できる状況だからこそ実現した公開自殺のパフォーマンスは、ある種テロなんだけど、実際に今、国会でもできるわけだから。そう考えると、目の前で死んで見せるというのはなかなか恐ろしくて、強烈なメッセージだなと感じました。

■萩原利久「今まで見てきた菅田さんの中で一番怖かった」

ーー本作での共演シーンは少なかったと思いますが、これまでも『帝一の國』などほかの作品でも2人は共演しています。改めて、お互いにどんな印象を持っていますか。

菅田:目の前で言うのも照れますね(笑)。

萩原:『あゝ、荒野』を撮った時期は『帝一の國』より前だったんですけど、『あゝ、荒野』の現場の時の菅田さんは怖かったです。現場にも何回か見学に行かせていただいたりして、今まで見てきた菅田さんの中で一番怖かったですね。たぶんそれは、カメラが回っている、回っていないに限らず、撮影の合間でも菅田さんがちょっと近づきがたい新次を演じていたからだと思います。

ーー 菅田さんのそういう姿は、自身の演技にも影響しましたか。

萩原:僕は、撮影には途中から参加しているのですが、登場する前段階のシーンを見学したり、新次とバリカンのボクシングシーンのあと、僕が登場するパートの撮影に入ったので、菅田さんをはじめ現場の皆さんから溢れ出るMAXのエネルギーを感じてから、撮影に入ることができました。色んな人の演技をしっかり見てから撮影に臨めたのは良かったなと思います。

ーー菅田さんは萩原さんの成長を感じたりしますか。

菅田:身長がどんどん大きくなるんですよ。ちょうど『あゝ、荒野』の撮影の時期に背が抜かれたんじゃないかな。『運命の人』(TBS系)で出会った頃は、利久が僕の弟役だったんですけど、膝に乗ってたんですよ。でもその時から利久は、しっかりしていましたね。僕は20歳前くらいだったけど、中学校1年生の男の子から、「菅田さんの事務所って良いですか」って言われて。

萩原:(笑)

菅田:「事務所探してるんですよ」って。この前までランドセル背負ってた子が「事務所」」って言葉を使ったぞ! と結構驚きました。その時は真摯に答えなきゃと思って、自分が思う事を利久に話しましたね。そしたら、数年後にトップコートにやってきて、その行動力たるや、すごいなと思って。僕は、別に自分の事務所を自分で選んだわけじゃないから。利久から聞かれた時も、この子はどこに行ってもちゃんと自分で考えてやっていくんだろうなと、どこか遠い目で見ていたら、いつの間にかいろんな事を経験していて大人になっていた。今まで自分が一番年下だったのが、いつの間にか年下が増えてきているんですけど、利久って僕にとって初めての後輩なんです。今も事あるごとに僕の現場を見に来やがる(笑)。

萩原:『あゝ、荒野』でも、よく菅田さんの現場を見に行ったりとか、先輩の舞台も結構見に行っていますね。見学に行かせてもらってるところが故・蜷川(幸雄)さんの稽古場だったり、大作の舞台も多かったので、ステージ上で役者さんたちが全エネルギーをぶち込んでる姿を見るのは刺激になりました。

菅田:そうだとしてもね、人が頑張ってるところ見たってつまらなくない? でもマネージャーさん経由で利久の動向を聞いてると、けっこう楽しんでるっぽいぞって。都内からわざわざ彩の国さいたま芸術劇場に毎日来てるぐらいだから、相当暇か相当好きかのどっちかだと思ってたけど。

萩原:どっちもですね。夏休みだから本当に暇で時間はあるし、僕は全エネルギーを注いでいる人たちを見るのがけっこう好きなので楽しんで行っていますよ。

菅田:変態だね。人の丸裸が見たいってことでしょ? グラビア見るのなんかよりど変態なのかも(笑)。

萩原:舞台にしても映画にしても、完成形より、人と人がぶつかり合う過程を見ている方が楽しいんです。だから、舞台も本番を見るよりは圧倒的に稽古場を見ている方が楽しくて。

■菅田将暉「俺は迷わずキスをしに行く」

ーー本作では、生きるために戦っているふたりの主人公が描かれていますが、実際にふたりにとって生きがいになっていることはなんですか。

菅田:なんでやってるかってことですよね? 人によってはお金だったり、好きな人、食だったりするんだろうけど、モチベーションの話で言うと、僕はゼロからものを作ることが好きなんです。自分で作れないものを見ると、イラっとするというか、何でも自分で作りたくなる。その衝動、好奇心が、いろんなことをやってる要因でもあるんですけど。これだけアニメーションも進化してるし、俳優がもしかしていらないような時代が来そうな世の中、でもそれは違うと思っていて……。音楽も打ち込みで全部できるけど、人の声にしかない感動とか温かさがあって、そこを信じたい。それと好きだからやりたいっていうのが一番の要因だと思います。

萩原:まだ分からないですけど、僕は割と三日坊主なところがあって。やってみたいことがなかった中で唯一、一歩踏み出してからこのまま続けてみたいと思えたのが役者の仕事なんです。今はその真っ最中なので、やりきるところまではやってみたい。あと、何かに全力になる人を見るのが好きで、自分もそうありたいなと思います。

菅田:質問していい? 本当に大好きな子がいて、その子とキスできる日があります。けど、この日を逃したらキスは一生できない。それと同時に自分がやりたかった作品のクライマックスシーンの撮影日が被りました。どっちを選ぶ? 

萩原:(考え中…)

菅田:俺は迷わずキスをしに行く。

萩原:正直、本当にリアルタイムでその局面が現れたら仕事を取るかもしれないですね。『世界陸上』を観るのも大好きなんですけれど、それはコンマ1秒の記録にすべてを掛けている人が集まっているのが、見ていて楽しいんですよね。一生懸命にすべてを注ぎたくても、できないことってたくさんあるじゃないですか。だから、そのチャンスがあるなら、僕もすべてをぶち込んでみたいと思って生きています。

菅田:すごいね。優秀な後輩ができたな。もう利久は大人だよ。

(大和田茉椰)