データベース分野の巨人、オラクル。サンフランシスコで年に1度のビジネス・技術系イベントが開かれた(記者撮影)

米オラクルの会長兼CTO(最高技術責任者)を務めるラリー・エリソン氏は、サンフランシスコで年に1度開催しているビジネス・技術系イベント「オラクル・オープンワールド」で、現地時間の10月1日、3日と2度の基調講演に登壇した。

会場となったのは、アップルなどシリコンバレーの多くのIT企業が使用する「聖地」モスコーニセンター内のイベントホール。約1万人を収容する会場にほぼ満席となった観衆を前に、73歳という年齢を感じさせない意気軒昂な姿を見せた。

「サイバーセキュリティ強化を急げ」


ラリー・エリソン会長。2014年にCEO職を後継に譲り、会長兼CTOを務めている(記者撮影)

エリソン会長は、1977年のオラクル創業以来、長きに渡って経営トップとして成長を主導してきたIT業界の大物。個人でヨットレース「アメリカズカップ」の米国チームのスポンサーになっていたり、京都をはじめ世界各地に豪邸を保有するなど華やかな私生活でも知られる。

2度の講演でともに強調したのは、これまで以上にサイバーセキュリティの重要性が増しているということ。3日の講演では、米信用調査会社エクイファックス社や米連邦政府の人事管理局がサイバー攻撃で個人情報などを盗まれた例を挙げ、「洗練されたサイバー世界の犯罪人たちがデータを盗んでいる」と、データベースへのセキュリティ強化が急務であることを示した。

そして、今回のオラクル・オープンワールドの目玉となったのは、1日の講演で示した、「世界初となる自律型データベース」の発売だ。

自律型データベースは、機械学習技術の導入により、稼働しながら自動的にアップグレードやソフトウエアのバグ修正などを実施する。セキュリティのアップデートも自動で行うため、サイバー攻撃への対策にもなるという。そして稼働を止めることなく、計算機能やストレージの拡張・縮小を行い、コストを抑制する。いわば、自動車の世界で革新が訪れている「自動運転」技術のデータベース版だ。

もっとも重要な技術革新の一つ

「人手がかからなくなるため、人為的なミスの発生やコストの抑制にもつながる。従来のデータベースの管理者は、より重要な業務に時間を割ける」(エリソン会長)というのも、自律型データベースのメリット。エリソン会長は、「我々がやってきた技術革新の中で、もっとも重要なものの一つ」とまで言い切った。


オラクルもクラウド分野に力を入れている(記者撮影)

そして、講演の中では近年エリソン会長がライバル視している米アマゾンのAmazon Web Services(AWS)について繰り返し言及した。

AWSは、クラウド分野でトップシェアを誇る。特にIaaS(Infrastructure as a Service、仮想サーバーなどコンピュータを稼働させる基盤をネットワーク経由で提供するサービス)に強みを持つが、クラウド型のデータベースにも力を入れてきている。


巨人オラクルにも絶え間のない技術革新が求められている(記者撮影)

言うまでもなく、データベースはオラクルにとって市場で圧倒的なシェアを誇る「ドル箱」事業。その牙城にまで迫るAWSを、新製品である自律型データベースの投入で牽制したいという意図も見え隠れする。

「エリソン節」で会場を沸かせる

講演では何度もアマゾン製品に対する優位性を言葉で訴え、「アマゾンはオラクル(のデータベース)に昨年6000万ドル(約67億円)費やした最大の顧客の一つ」とのスライドも示したエリソン会長。

「アマゾンの(データベースの)半分以下のコストを保証する。契約書の中にそう書いてもいい」との冗談めかした発言も飛び出し、最後には自ら「オラクルのデータベースVSアマゾンのデータベース」の処理能力を比較するデモを行った。処理速度とコストの両方でアマゾンに上回ることを「実演」し、ガッツポーズまで披露。事前に多くの人が予想した「エリソン節」とはいえ、その姿に観衆は大きな盛り上がりを見せた。

ただ、「アマゾンも対抗策を取るのではないか」、「アマゾンとの比較のデモは詳細な前提条件がよくわからない」との冷静な見方ができるのも事実。はたして観衆を沸かせたエリソン節の通り、顧客企業にメリットをもたらすのか。それを証明するのは、2017年12月に発売が予定される自律型データベースの実力しかない。