持ち家派でも賃貸派でもない、第3派、それが、「現役時代は賃貸に住み、定年後に持ち家を一括購入」派です(撮影:freeangle / PIXTA)

世の中には、2種類の人がいます。持ち家派と、賃貸派です。持ち家派は住宅ローンを組んでマイホームを取得することを積極的に考えて実行する人たちで、賃貸派は住宅ローンをリスクと考え、賃貸生活を続けている人たちです。

ファイナンシャルプランナー(FP)としてよく聞かれるのは、「持ち家派と賃貸派、どちらのほうが賢いのか」という質問です。一般論を言えば、持ち家派と賃貸派にはそれぞれメリットとデメリットがあり、各家庭の価値観にも大きく左右されます。さらに、地域性や相続の有無にも影響されます。したがって、どちらがよいかを一概に決めつけることはできません。

ただ、最近では、身軽な賃貸派に傾く人も多いようです。土地や家の資産価値が上がることに対して悲観的な見方が多く、さらに『LIFE SHIFT』などでも予見されているような、「人生100年時代」を考えたとき、家の管理・維持が今よりも難しくなるであろうことも十分に考えらるからです。

「定年時に一括でマイホームを購入」という道

なお、FPとしての筆者の個人的スタンスは、と聞かれると、持ち家派と賃貸派、どちらとも言えません。相対的に賃貸派に寄ってはいますが、「生涯賃貸派」のつもりはありません。すなわち、現役時代は賃貸で暮らし、リタイア時に一括でマイホームを購入するのがよいという立場です。

一見、現実離れしたプランのように聞こえるかもしれませんが、今回は、この「第3派」のメリットについて説明をしていきたいと思います。

まず、生涯賃貸暮らしを選択するリスクについてご説明します。一般的に、賃貸には持ち家と比べて以下のような利点があると言われます。

・住民や地域のトラブルに際して住み替えの自由がある
・子が増えたり成長したとき、部屋を広く住み替えられる(子が社会人になったら狭い部屋への住み替えもできる)
・年収の増減に応じて住居コストを変動させる余地がある
・固定資産税を払わずにすむ
・高額の借金を負わなくていい

一方で、賃貸で暮らすとは「死ぬまで家賃を支払い続ける」ことに他なりません。現役時代であれば、収入に対して適切な家賃の物件を選べば、これはあまり問題になりません。ただ、問題は老後にあります。一生賃貸派の最後にして最大のリスクは、老後にやってくるのです。

基本的に、老後暮らす分の家賃は現役時代に確保し、定年を迎えることが求められます。公的年金に、家賃手当は含まれていないからです。ただ、問題は自分の老後が何年続くかを誰も予想することはできない点にあります。

65歳まで働いたとして、残りの人生は10年かもしれないし、25年かもしれないし、35年かもしれません。統計的には、65歳の男性が約19年、女性が約24年の老後があるとされます(厚生労働省「平成28年簡易生命表」)。しかし、言い換えれば、半数はそれより老後が長いということになります。今後、さらに平均寿命が伸びることも予想されます。したがって、統計も当てにして「ぴったり」予算確保することには不安が残ります。

すなわち、実際の老後がスタートする前に、老後の家賃を全確保しようにも、老後が何年続くかによって確保すべき金額が異なってくることが、「生涯賃貸派」の問題なのです。

「生涯賃貸」に必要な資金はわからない

仮に、「月8万円の部屋に住む(年約100万円の住居費)」ケースで考えてみましょう。この場合、老後が20年だとしたら合計約2000万円が必要です。ただ、これでは女性の老後の平均にも足りていませんから、やや長くみて30年老後があるとすれば、約3000万円必要になります。老後を何年と設定するかによって、必要額は大きく異なるわけです(敷金礼金、更新料等の諸経費、家賃の値上げなどは考慮していないので実際にはもっと必要)。

普通に老後を過ごすための余裕資金として資産形成を行うことすら、一般的には簡単ではありません。そこに「2000万円か3000万円かよくわからないけど、追加で家賃分も貯めてね」と追い打ちをかけるのが、生涯賃貸派を目指すためのマネープランなのです。

現役時代に住宅ローンは組みたくない。でも、老後に不確定要素が多い賃貸派も避けたい――。そうなると、第3の道として浮上するのが「定年時点で一括で家を買う」というプランです。

先ほどの例でいえば、3000万円の家賃予算確保は無理だが、なんとか1500万円は貯めてこれで老後に住むだけの家を一括で買う(実際には諸経費も生じるが)、という選択を行えれば、老後の家賃予算が不確定という不安からは解消されることになります。

この場合、購入物件の予算については低く抑える方法を考えたいところです。まず、新築は避け、中古住宅を探すほうが予算は下げられます。かといって、築30年の中古物件に35年住むことは難しく、手入れのよい築浅物件を選ぶことが求められます。

購入時期は、定年後、さらに「子の独立後」が好ましいタイミングです。こうすることで、部屋の必要面積が少なくてすみ、予算を大きく下げられます。100平米で5部屋が必須であるか、60平米の広めの1LDKがあれば十分とするかで、予算は大きく変わってくるでしょう。

退職後は通勤の必要がないので、予算に応じて居住エリアを柔軟に変えられるのも大きなメリットです。東京23区内を希望としていたが、思ったより値下がりしていなかったので、さいたま市とする、あるいは川越まで行こうか、などと計画を修正していくことで「予算に合った終(つい)の住処(すみか)」と出合うことができるかもしれません。

今後、人口減少社会に突入し、空き家が増加して「住宅デフレ時代」となることは十分にありえます。ここで大きな値崩れが生じれば、購入予算はさらに抑えることができるでしょう。

購入資金の確保が現役時代の課題

ただ、その購入資金をどう確保するかは、現役時代の課題となります。購入時期を定年時まで遅らせるということは、その分ローンが設定できない(返済する期間を設定できない)ことを意味します。基本的には、ほぼ全額を一括払いする必要があります。

購入予算確保の最大のカギは、現役時代の賃貸暮らしの家賃水準の設定にあります。賃貸予算を、出してもいい予算の上限より低くすることで、毎月の貯蓄余力を確保しておくしか、貯蓄原資をひねり出す方法はありません。

年収が増えれば高い家賃の広い部屋に住み替えたくなるのが一般的ですが、それをぐっとこらえて、年収が上がったら、上昇分を定年時の一括購入資金の上積みに回すくらいのマネープランを意識しておきたいところです。できることならば、引っ越しを行うときには予算アップではなく、据え置きないし引き下げを目指してみましょう。子どもが社会人になったら、一部屋減らして家賃を下げるような引っ越しは効果的だし、居住エリアを変えるチャレンジもときには必要です。

中には、退職金を使えばいい、という人もいます。しかし、これはNGです。退職金を住宅購入費用に回せば、その分老後の余裕資金が消滅してしまうからです。

生涯コストを比較!どれがいちばんお得?

「現役時代賃貸派→定年時に家を買う」というモデルはまだリアリティがないのか、以上のような説明をしてもマジメには取り合えってもらえないのが現実です。そこで、\験胸ち家、賃貸→定年後持ち家、生涯賃貸のそれぞれの生涯コストを、比較シュミレーションをしてみましょう。

正直なところ、シミュレーションは条件設定をいじればどのようにでも結果を変化させられるので、あまり好まない手法なのですが、「結果はいかにでも変わる」という意味を込めてお示しします。

【共通設定】
 ・現役時代30年、老後は35年と仮定
 ・不動産取得時の諸費用は含まず
【\験胸ち家派】
 ・新築物件4000万円
 ・固定金利30年ローン 年1.2%固定
 ・固定資産税年10万円
 ・定年時点でリフォーム 予算700万円
  →生涯コスト 6150万円
【定年時に家を買う賃貸派】
 ・,離蹇璽麒嶌儚曚茲螳造な件を賃貸(月10万円)
 ・6年に一度住み替えるとして、都度家賃4カ月分
 ・住み替えない場合は2年に一度更新料1カ月分
 ・定年時点で2000万円の物件を一括購入
 ・老後は固定資産税年7万円
  →生涯コスト 6145万円
【生涯賃貸派】
 ・,離蹇璽麒嶌儚曚箸曚榮嘘曚諒件に賃貸(13万円)
 ・6年に一度住み替えるとして、都度家賃4カ月分
 ・住み替えない場合は2年に一度更新料1カ月分
  →生涯コスト 1億699万円

以上を見てみると、持ち家派と定年時に家を買う賃貸派の生涯コストは、ほぼ大差の無い結果となりました。どちらがお得かは、物件価格やローン金利水準に左右されるので何ともいえません。一方、生涯賃貸派の場合は両者を4500万円以上回る結果に。これをカバーするには、定年後に激安物件への引っ越しが必要となります。

一見非現実的に見える、定年時のマイホーム購入ですが、こうして比較してみると、選択肢の1つとして十分に検討に値するのではないでしょうか。