星野リゾートが「大塚駅北口」に進出する真意

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JR大塚駅前に建築中のホテル星野リゾートの新ブランドが入居することになった(記者撮影)

JR大塚駅から徒歩数分、かつて駐車場だった場所に今、高さ50メートルのビルが建設中だ。

掲げられた建設計画の看板によれば、建築物の名称は「(仮称)山口不動産大塚北口A地区計画」。地下1階、地上13階の建物でホテルや店舗が入居する予定だ。

星野リゾートは10月5日、この場所に「OMO5 大塚」(おもふぁいぶ)という新ブランドのホテルを2018年5月9日に開業すると発表した。

地方の名門ホテルをどう立て直すか


北海道の旭川グランドホテル(写真:星野リゾート)

星野リゾートはここ数年、メディアを対象にした定例会見を年2回実施している。テーマは主に新規施設の概要や既存施設のマーケティングプランの説明といった内容が多い。

10月5日に開かれた定例会見では、前日に公表された北海道旭川市にある旭川グランドホテルのリブランドに注目が集まっていた。

星野リゾートは2016年3月に旭川グランドホテルを買収し、2017年4月から運営を行っている。

旭川グランドホテルは前身の宿泊施設を含めれば100年近い歴史を誇る、地元の名門ホテルのひとつ。赤字ではなかったが、宴会部門はブライダル専門業者、レストランでは個人経営の専門店、宿泊ではビジネスホテルなど、それぞれ新たな業者の台頭で収益を圧迫されていた。

こうした問題は、地方都市の一等立地にあり、宿泊施設に加えて、大型の宴会場や高級レストランを備えた名門ホテルが共通して抱える悩みでもある。星野リゾート代表の星野佳路氏はこれまでリゾートホテルや旅館の再建に手腕を発揮してきたこともあり、地方の名門ホテルをどう立て直すのかに、関心が集まっていた。

今回、星野氏は旭川のスタッフに「旅のテンションを上げる都市観光ホテル」をテーマにコンセプトの再構築を依頼。結果出てきたのは「ホテルを中心に半径500歩内の店と共同し、ホテルを1つのリゾートのように運営する」(同氏)というプランだ。


会見する星野佳路氏。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントで、宿泊事業を収益性は低くても、成長余地がある事業と位置づけた(記者撮影)

いわゆるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの分析手法を使って、成長は見込めなくても儲かっている(カネのなる木の)法人宴会や婚礼で稼いだ資金を、収益性は低くても成長が見込める(問題児の)宿泊に回し、街場の飲食店に顧客を奪われているレストラン(負け犬)を縮小するという結論だった。

新ブランドは「OMO」に決定

リゾートホテルの「リゾナーレ」、温泉旅館「界」(かい)、そして高級宿泊施設「星のや」に続く、第4のブランドとして、都市観光の拠点となるホテルを「OMO」(おも)と命名した。

名称の由来について星野氏は「スタッフに聞いても、候補が多すぎて覚えてない。海外の方にも覚えやすく、商標権を取れる名称だった」と笑い飛ばす。広報担当者によると「面白い」や「趣がある」といったニュアンスを込めているようだ。

旭川グランドホテルは、2018年4月28日に「星野リゾート OMO7 旭川」(おもせぶん)とブランドを変える予定。今後、営業を続けながら1階のロビーや客室を改装する。一方、地元ならではの観光スポットやレストランの情報を国内外の観光客に発信するなど、戦略を大胆に転換させる方針だ。

2018年5月には冒頭の東京・大塚に「OMO5」(おもふぁいぶ)を開業する。こちらは旭川とは違い、新築で運営を受託する。詳細は明らかになっていないが、200室規模のホテルになりそうだ。開発計画中の大阪・新今宮の大型ホテルも「OMO」ブランドにする方針だ。

星野リゾートが都市に立地するホテルの運営に乗り出す意味合いは大きい。同社が得意としてきた地方のリゾートや旅館の運営では、マーケティングや情報発信を駆使して、観光客に来てもらう理由を作る必要があった。


地方のグランドホテルで好パフォーマンスをあげれば、さらなる運営受託の機会が増える。星野佳路氏は会見で「チャンスが増える」と意気込んだ(記者撮影)

それに対して都市部には、もともと膨大な観光需要がある。旭川グランドホテルの運営に成功すれば、星野リゾートが受託する「案件は劇的に増えるだろう」(星野氏)。

実際、水面下で星野リゾートは着々と都市進出の準備を進めている。2016年7月には千代田区大手町に「星のや東京」を開業。来年5月に控える「OMO5 大塚」以外にも、今年6月に、ホテル「ザ・ビー 東京 赤坂」建物の信託受益権を取得している。

帝国ホテルの背中も見えてきた

星野リゾートREIT投資法人の有価証券報告書によれば、星野リゾートグループの2016年11月期の決算は、売上高に当たる営業収益が511億円(前期比62%増)、経常利益は31億円(同25%増)に達した。

会社側は営業収益の大幅な伸びについて「所有者の変更により、施設の入れ替わりがあった。弊社が運営していない施設も入っており、一時的な要因で売上高が膨らんでいる」と説明する。

星野リゾートが運営している施設全体の取扱高は459億円(前期比4%増)、直近で運営施設は37軒に達した。規模ではすでにパレスホテル(売上高304億円)や大阪のリーガロイヤルホテルの運営会社(同411億円)を抜き、帝国ホテル(同560億円)の背中も見えてきた。

このまま成長路線を維持するには、旭川を始め、都市観光ホテルを軌道に乗せる必要がある。果たして目論見通りに結果を出せるのか。