過酷な現代の「スクールカースト」……その社会的背景は

写真拡大

街中や電車内で制服姿の中高生を見ると、その子たちの持つもの、雰囲気、態度によって、この子は1軍、この子はきっと4軍だな、と何となく想像できてしまい暗澹たる気持ちになる。ヒンドゥー教の身分制度になぞらえ、教室内の序列を表した「スクールカースト(学校カースト)」。1軍、2軍、3軍……と、野球選手でもないのに身分を振り分けられ、そこから脱することは決して許されない。「教えて!goo」には、「上位に行く方法を教えてください」という質問から、「気を使って生きることに疲れてしまいました」という悲痛な悩みまで、「スクールカースト」に関する質問が多くの中高生から寄せられている。どれほど文明が発達しようとも変わることなく存在する序列……教室内から見えてくるのは、現代に根付いたカースト制度であった。

遺伝性の障がいで幼い頃から車椅子生活を送る安積宇宙(あさか・うみ)さんは、学校外でも障がい者はカーストの最下層もしくは序列外に置かれていると感じ、17歳の頃から多岐にわたるイベントや講演活動を通して、障がい者差別など様々な問題を提起してきた。つい数年前まで現役女子高生であった彼女に、現代の中高生のリアルなスクールカーストについて教えてもらった。

■体育会系優位、SNSで下克上?

まず大前提として、「スポーツ系の部活の子たちが最上階に置かれ、文科系の部活の子たちがその序列の下へ置かれる」と安積さんは言う。今も昔もこの力関係に変化は見られないようだ。

ただ、と安積さんはSNSの影響を指摘する。「現代の中高生は家にいる時もいつでも四六時中、友達に縛られているという状況」とし、「その中の関係性が、現実の関係性へも影響を与えている」のだという。

スマートフォンの普及率は著しく、ネットの扱いに長けた者が下克上のように上位へのし上がっていけるなど、SNSを使いこなせるか否かで、新たなカーストは形成されるのだろうか。

「保証はできないけれど」と安積さんは前置きをした上で、「インスタ(instagram)上での『人気者』が現実社会の人気者になったり、グループチャットの中で上下関係が形成されたりするケースもある」とみている。

■いまの中高生は「逃げ場がない」

「昔は学校という環境から物理的に離れれば、その人間関係から休息がとれ、自分のスペースを得られていた」と安積さんも言うように、かつては学校以外の「場所」も多く、ある意味で逃げ場があったのではないだろうか。教室内が全てではない、学校外には別の「世界」が存在していることを子どもたちは物理的に体感できたはずだ。今の中高生には、「逃げ場がない」(安積さん)のである。

そんなスクールカーストは中高生特有のものなのか。ニュージーランドから留学に来ていた安積さんの友人は「スクールカーストみたいなものはまずない」と話していたそうだ。さらに「グループの中でいじめられる子がいたとしても、クラス全体からハブられるようなことはない」と述べ、「他のグループの子たちのところに行けばいい」と事も無げな様子だったという。一方、「誰か一人がイジメられ始めると、違うカーストの別グループも一丸となってその子をターゲットにする」(安積さん)のがスクールカーストだ。日本特有とされる「ムラ社会」文化の現れと見ることもできるかもしれない。

■子供だけじゃない、現代の過酷なカースト制度

人が集まれば、その集団の中で、自然と役割分担が生まれ、そこからいくつかのグループへ分かれてゆくことが多い。そのグループがや階級につながることも。

○○カースト……それは子供のうちの、教室内だけの問題ではない。「恋愛カースト」に「キャリアカースト」、はたまた本コラムの記事でも紹介したタワマンカーストなるものも現出している。

その社会構造を顕著に表しているのが障がい者への扱いだと、安積さんは自身の体験から感じている。そして中学生の頃、スクールカーストに戸惑いを覚えながらも気づいた。「初めから『普通』の序列の中にいると認められない」のだと。

私たちは大人になってもなお、何らかのカーストに組み込まれて生きている。無意識に他人との差別化を図り、自分の位置を上へ上へと押し上げることに躍起になっている。そうして生まれる偏見や差別意識は、社会から多様性を排除し、寛容さを失わせるのではないだろうか。

日本のムラ社会文化や教育現場の中で自然発生したように捉えられがちなカースト制度だが、実際は私たち自身が作り上げ継承し続けているのだということも、決して忘れてはならない。

そこは本当に必要な場所なの? グループから離れたっていいじゃない。スクールカーストに悩む相談者たちに、そう言葉をかけるのは簡単なことだろう。格付けを単なる差異と受け止める−−頭では分かっていても簡単な話ではない。大人社会までも続くこの息苦しさを少しでも緩和させるために、子どもも大人も意識をして考えていかねばならない問題なのではないだろうか。

●専門家プロフィール:安積宇宙
1996年東京生まれ。障がい者の自立生活運動の先人として知られる安積遊歩さんを母に持つ。彼女から遺伝性の骨の障がいを受け継ぎ、車椅子で生活する。17歳の頃から全国で「障害を持って生きる」をテーマにした講演や、母親との対談などを始める。東京都国立市のシェアハウス「なないろハウス」にて、映画の上映会や講演会の企画プロデュースも。現在は、ニュージーランドの大学で社会福祉士を目指しながら活動中。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)